シュード国ー大広間にて
シュード国の大広間には重臣達が勢ぞろいしていた。王座の右側には王の宰相から順に家臣達が、左側には第一王子、第一王女、第二王子の順に並んでいた。
そんな中、大広間の中央にぽつんと1人見慣れない顔があった。
まだ頭を上げてはいないが、突然やって来た隣国の第一王子であった。
本来なら朝議に参加させる事はありえないが、王の一声で出席が許されたのだった。
王が大広間に入室し王座へ座ると、第二王子を見た。
シュード国では隣国との外交をそれぞれ子供達に任せており、属国でもあるアサイ国は第二王子、現在戦争をしているトム共和国は第一王子、ヤマム国は第一王女が一任されていた。
侵略すればそれぞれ手柄をたてる事が出来るが、属国であるアサイ国は侵略出来ない。
アサイ国を任せていた第二王子は子供達の中でも王から期待されていない事が誰の目にも明らかであった。
現に、アサイ国の王子がこの場に来た理由を問われたが第二王子はしどろもどろになってしまった。
「いえ、その・・・・」
全く把握していない様子にその場の家臣達が呆れ返った。
「アサイ国の王子よ、なぜ重要な朝議に他国のお主がおる?余程のことなのだろうな」
怒ったような声が大広間に響いた。もちろん朝議に参加させたのは王自身だが、誰も助け船をだす者はいない。
「貴重なお時間を作っていただきありがとうございます。この度は戦果のご報告に参りました。お約束通りスーシーカー砦を落としてまいりました。お約束を覚えておいでですよね。アサイ国を属国とでは無く対等な国として扱っていただきたい」
アーノルド王子の言葉に大広間から驚きの声が広がった。
「スーシーカー砦を落としたと言うか」
王の一言で大広間に静寂が広がった。
「はい、我らアサイ国の兵士で落としました」
「だが、橋もろとも砦が消え失せたとか。跡地にはヤマム国の兵がうじゃうじゃしておったそうだが?」
やはり、知っているか、この王は独自の情報網があるからな。
アーノルド王子は笑顔で答えた。
「砦を落とせとしか言われませんでしたので。我らの力不足で橋や砦を残す事は出来ませんでしたが、お約束通りヤマム国の砦を攻め落としました。しかし、砦を落としたにも関わらず、いくら待ってもシュード国からの援軍が来ませんでしたので仕方なく引き上げてまいりました」
「なるほど、こちらの不手際だと申すか?」
王の言葉にアーノルドは返事をせずただ頭を下げた。
「アーカス、なぜ援軍を送らなかった。砦を落とすよう命じたのは知っていただろうが?」
「す、すみません。父上、まさか砦を本当に落とすとは思わず」
第二王子アーカスは正直に答えが、周囲の家臣達から失笑が聞こえた。
「なるほど、こちらの不手際のようだな。アサイ国の王子よ。砦を跡形もなく消し去った事褒めてやる」
褒め言葉とは裏腹に怒りの交じった声だった。
「では、お約束通り我らに自由を下さい」
アーノルド王子は真っ直ぐにシュード国王の目を見て訴えた。
王は第一王子に目をやり頷くのを確かめて言った。
「いいだろう、約束は違えぬ。望み通りアサイ国を対等な国として認めよう」
「っ、ありがとうございます」
アーノルドは言葉に詰まりつつも、頭を下げて心からお礼を伝えた。
「おかげで、ヤマム国への足掛かりが無くなったが、それはこちらの落ち度だと申しておるしな」
王の冷ややかな言葉に、第二王子のアーカスは顔を青くしていたが、言われた張本人のアーノルド王子はすぐに笑顔を見せた。
「徴兵された我が国の国民を返して頂きます。連れて帰ってよろしいですね」
「構わんぞ、今この時を持って我が国の兵の任を解こう。好きに連れ帰れ。ちょうど、トム共和国
のどこだったかな?」
王の言葉を引き継ぎ第一王子が答えた。
「アサイ国の者は全てトム共和国のサーバの街へ派遣しております。トム共和国の関所を落とすために囮としてサーバの街を攻めさせましたが、あれらはよく働いてくれました。囮としての役目を終え、サーバの街に籠城しております。救出のための兵をと考えておりましたが、我が国の兵では無くなったのなら必要ありませんね」
「なっ・・・、」
大広間に入ってから初めてアーノルド王子の顔に怒りが見えた。
王はそれを面白そうに見ながら言った。
「約束通り、好きに連れ帰れ。ただし我が国に兵を連れて入る事は認めん。みすみす他国の兵を入れる程バカでは無いからな。お前も今すぐ、我が国から立ち去れ」
トム共和国へはシュード国を通らねば出入りする事は不可能だった。
それはトム共和国へ兵達を救出する為にアサイ国から兵を送る事も、トム共和国にいる兵がアサイ国へ帰る事も許さないと言う王の意思だった。
王が合図すると控えていた兵がアーノルド王子を大広間からだそうと動きだした。
アーノルド王子はシュード国の王を睨みつけた。
「なぜ、ここまでするのですか?我らがあなた方に何をした。なぜ、ここまで嫌うのですか?」
兵に出口へと抑えられながらアーノルドが訴えたが、王はめんどくさそうに手を払った。
「人の命をなんだと思ってるんだ!」
扉が閉まる直前、声だけが響いた。
「時間を無駄にした。朝議を始めよ」
静まり返った大広間で王が静かに言った。
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