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スーシーカー砦ー5

 焼け焦げた地面を踏みしめ、ルークの馬獣に乗ったアーノルドは砦のあった場所まで進んで来た。

 頭上を飛ぶフレアに怯えてルークの馬獣以外は使い物にならなかったためだ。


 向こうからは1人の男を先頭に、数人が歩きながら近づいてくる。

 彼がジーザンだろう。ジーザンの後ろに剣や槍を携えて怒りを隠そうともしないのは砦を守っていた兵士達のようだった。



 お互いの距離が相手の間合いに入る少し手前でジーザンは足を止めた。


 ジーザンの後ろにいた女性は足を止める事なく殺意をこちらに向けたまま、さらに一歩近づいて来た。

 剣を抜くか迷った一瞬、空からルークが降って来た。


「そこで止まれ」


 上空にいるフレアの背から飛び降りて来たルークはこちらを守るように目の前の女性を牽制した。


 女性は急に現れたルークとすぐ後ろに降り立ったフレアを交互に見ると、少しムッとしたようにジーザンの横に控えた。


 アーノルドは馬獣から降りると、ジーザンに向かって頭を下げた。


「アサイ国第一王子アーノルド・ジュハンフォースです。こちらの願いを聞き入れていただきありがとうございます」


「拒否権は無かったと思うが?」


「それでも、砦を無人にしていただけたおかげで、アサイ国もヤマム国も人的被害を出さずにすみました。これで我が国はシュード国の属国から解放されます」


「こちらはいいとばっちりだがな」

 ジーザンは憮然とした口調だが怒っている訳では無さそうだった。


「こちらも、我らが国が生きるか死ぬかの瀬戸際だったので。アサイ国が独立した暁には、あなた方と良い関係を築きたい。私の願いはただ、それだけです」


「・・・・・・、今後アサイ国とどのような関係を築くかは王が決める事だ。ましてや、王でも無い者の言葉に意味は無い」


 ジーザンは強い眼差しをアーノルドに向けた。


 友好関係までは今は無理だな。それでも、ヤマム国の砦を攻め落としたにも関わらず、交渉の余地はありそうだ。王の言葉なら聞くと言ってくれた。充分過ぎる。


 アーノルドはジーザンの眼差しを受け止めていった。


「今はそれで構いません。我が国が独立した暁には、友好関係を築いていただけるようお願いに行かせて頂きます。このドラゴンがね」


 アーノルドの笑みに釣られてジーザンもふっと笑ったが、鋭い声で尋ねた。


「お前が来ないのか?」


「・・・・・・・、出来れば私が行きたいですがね。全力を尽くします」


 アーノルドの眼差しを見てジーザンは納得したようだった。


「さっさと、領土から立ち去れ。あと川の水も元に戻せよ」


 そう言うとジーザンはアーノルド達に背を向けた。


 ジーザンの言葉にドラゴンが空に飛び上がり、出来たばかりの池の前で、土の壁を壊して川に水を戻し始めた。


 慌てて戻り始めたアーノルド達を厳しい顔で見送りながらルーシーが聞いた。



「ジーザン様、よろしいんですか?」


 部下のルーシーには事前にアサイ国のドラゴンとの事は伝えてあったが、不服そうだった。


「別に対した問題では無い。元々ガタが来ていた砦だ。橋があれば、シュード国に攻め込まれる隙を作る。無くても対して困らん」


「それはそうかも知れませんが、砦はともかく跳ね橋は数百年、両国の交流の要でした。軍事的には邪魔にしかなりませんが」


「隣国はアサイ国だけでは無い。アサイ国とはここ数年はろくな取引は出来てないだろう。入って来るのは、国を捨てた流民ばかり。スーシーカの治安悪化の原因でもあったからな」


「アサイ国にとったら死活問題ですよ。ここ数年は食糧も自給出来ないでこの橋を通って入る食糧が生命線になっていたはずです」


「お前はアサイ国の者だったか?」


 ルーシーを睨んで黙らせると、川の上をぐるぐると飛んでいるドラゴンを見上げた。


 あれは人の世界の生き物では無い。なぜ、あれがアサイ国に従っているのかは分からないが、アサイ国は大きく変わるだろう。このまま滅びる運命かと思っていたが、面白い。


「そんな事は承知の上で砦を壊したんだろう。それ以上のものを得るためにな。いくぞ」


「ハッ!」


 ルーシーは少し機嫌が良い上司を不思議に思いながらも後に続いた。




 







 



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