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スーシーカー砦ー4

 スーシーカー砦が見える草原の前で、一旦アサイ軍の進軍が停止した。


 アサイ軍が目の前にせまってもスーシーカー砦に大きな動きは見られない。

 

 砦の前には大きな川が流れており、いつもなら川に重量感のある巨大な橋がかかっているが、跳ね橋は上に上げられて砦の一部となっていた。


 アサイ軍の兵士達は戦闘準備をしながらも、皆不安げな様子だった。

 川を越えるための船を用意している訳でもなく、ロープなどを使い歩いて川の向こう岸に渡るには砦から格好のマトになるだろう。


 各々指揮官の指示を待っていたが、その指揮官達も王子の元に集まって何やら話をしているようだった。


 


 「いけるか?」


 アーノルド王子や護衛の近衛兵達の後ろで青い顔をしているフレアにルークは声をかけた。


 昨日まではあたりをキョロキョロしながら馬獣の背に揺られていたが、さすがに当日になるとプレッシャーを感じ出したのか、無言になる事が増え、すぐ前で今日の作戦を話すアーノルドの声を聞いて遂に真っ青な顔になっていた。


 プレッシャーに弱いのか、初陣だからか、自分の肩にここにいる5000人の命がかかっているからか、おそらく全部だろう。


 生前の記憶があるとはいえ、まだ子供、本来なら仲間に囲まれて過ごしている時期だろう。


 それでも、俺の言葉を聞き入れてここまでついて来てくれたのだ。


 ジークの面影まで持って。


 「大丈夫だ、もしもの時は守ってやる」


 そう言うと青い顔をこちらに向けて来た。


 「守るのは私の方だよ、なんたってこの国の救世主なんでしょう?」


 「そうだ、ジークはお前が救世主だと信じてた。俺は兄貴を信じてるからな、お前が救世主だと信じてる。成功するさ、この場で一番大きくて強いからな」


 フレアは鼻から息を吐くと、頷いて誰もいない丘へ駆け出していった。


 そろそろアーノルドの説明も終わっただろう。


 アーノルドは指揮官達に激を飛ばし、持ち場に戻らせた。


 兄貴はアーノルドの事を高く評価していたが、俺、個人的にはアーノルドの事はよく分からなかった。


 だが、指揮官としては現王よりは優秀だと認めざる得ないだろう。


 どんなに劣勢で死にに行くような戦闘でも兵士達の士気を上げる事が出来るのだから。


 目の前には大きな川が流れて、向こう岸に巨大な砦がそびえ立っている。


 砦にまで伝えるかの様にアーノルドが兵士達に向かって声を張り上げた。


 「兵士達よ、今より我が国の救世主が砦を攻め落とす。ゆけ、ドラゴンよ!」


アーノルドの叫びと同時に上空に真っ赤なドラゴンが突如現れた。


 ドラゴンは恐ろしい咆哮を砦に向かってあげると、そのまま、向きを変え砦の上流に位置する川に向かって炎を吹き出した。


 大量の水蒸気が周囲に立ち込め、ドラゴンが悠々と炎を拭き終わり地面に着陸した時には、川の水はすべて蒸発して、周囲の地面をも炎で溶かされて巨大なクレーターが出来ていた。


 ドラゴンが手をあげるとクレーターの出口でが岩で覆われた。上流からの水がクレーター内に流れ込みだし、池が出来ようとしていた。


 そして池の先、砦の前には水が干上がった川が残された。




砦を守る兵士達は、起きた出来事が信じられず誰も動く事が出来なかった。


 そんな中、珍しく砦の見張り台に詰めていたジーザンは素早く指示を出した。


 「砦から今すぐ撤退だ」


 「しかし、」


 反論しようとする部下を睨んで黙らせ言った。


 「見ていなかったか、消し炭にされる前に撤退する。アサイ軍だけなら戦えるが、あれは別の存在だ。今すぐ全員残らず撤退しろ」


 ジーザンの命で砦から兵士達が撤退するのを、アサイ軍の兵士もドラゴンも動く事なく待っていた。


 アサイ軍の兵士は攻撃命令が出ないのもあるが、目の前の出来事が信じられずに目の前のドラゴンを恐れていた為、ドラゴンの方は上空に飛び上がり、空の上から砦を見ていた。


 最後にジーザンが砦から出ると、上空から見張っているドラゴンを見上げた。


 ジーザンが離れるのを確認したドラゴンは、再び炎を砦に向かって吹くと、高温の炎によってあっという間に砦は跡形もなく消えてしまった。

 

 ドラゴンが自分の作った池の前に着陸するのを見届けると、アーノルドは声を上げた。


 「スーシーカー砦は我らがドラゴンが攻め落とした。我らの勝利だ」


 アーノルドの声に兵士達は驚きつつも歓声の声を上げた。

 


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