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人間臭いドラゴンー1

 「出来ないとは・・・?」

 アーノルド王子が驚いたように私に聞いてきた。


 私は王子の顔を見ることが出来きなかった。


「無抵抗の人を理由もなく一方的に殺すのは嫌、です。シュード国というか、私達が一方的にヤマム国の砦に攻撃を仕掛けるってことでしょう?」


「無抵抗なわけないだろう?向こうは武器も持った兵達だ。戦場で戦う覚悟を持った兵士だぞ」



「人型の時は感じないし思いもしないけど、ドラゴンの姿に戻ればこう思うの。武器を持った兵も強力な魔法使いもどれだけ強い剣士でも、ぬいぐるみを持った小さな子供と同じ無抵抗の人間だと」


 私の言葉は理解されるだろうか?


 けど、ここで言わないといけない気がする。


「私はここで生活するときはなるべく人の姿でいるようにしてるの、そうしないと壊してしまいそうになるから。私はまだ一人前じゃ無いから力のコントロールは上手に出来ない。少しでも気を抜いてくしゃみでもしたらアンナさんを灰にしてしまうかも知れない。何気なしに動いたら屋敷を壊してシュウ君を瓦礫の下敷きにしてしまうかもしれない。だから私はなるべく人の生活圏では人の姿になっているの。それぐらい気をつけないと傷つけてしまう」


「まいったな、ドラゴンからすれば俺達も小さな子供と同じって事か、無抵抗の兵士を一方的に攻撃するのは気がひけるとでも?」


「あちらが攻めてきたわけでも無く、私達が奇襲を仕掛けて攻撃するんでしょう?理由もなく人を殺すのは嫌なの」


「奇襲をするかは分からないが、理由ならあるさ。砦を落とせば、シュード国の支配を逃れられる。アサイ国を救う、これじゃ理由にならないかい?」


 私の目的はアサイ国を救う事だ。ちゃんとした理由だ。わかってる、だけど、

「違う、そうじゃない。私は、殺人兵器にはなりたくない」


 フレアは力なく叫ぶと部屋を飛び出していった。


「悪いな、うちのドラゴンが、まぁまだ1歳前のガキなんで多めに見てやってくれ」


 ルークはそう言いながら席を立った。


 僕も追いかけようと席を立ちかけたけど、俺に任せろとルークの目が言っていたので、フレアを追いかける役目はルークに任せる事にした。


 そもそも、ルークじゃ無いと本気で隠れたフレアは見つけられない。

 それに、今のフレアの話を聞けるのはルークだけな気がした。

 僕は僕で出来る事をするだけだ。


「あの、お」


「俺の考えは間違っていたか?」

 僕が喋る前に王子に下を向いたまま尋ねられた。


「いいえ、間違っていません。アサイ国のために最善を尽くされています」


 僕が答える前にそばにいたアンナさんが口を開いた。


「アサイ国がシュード国の支配を逃れればどんなに民の生活が改善されるか、万が一でも可能性にかけた王子の選択は間違っていないと思います。国のためには」


「あのように考えていたとは思わなかった。殺人兵器か」


「フレアは生前の、人だった頃の記憶が残っています。見た目はドラゴンですが、心の優しい子です」


「孤児の子供達に仕事を作ったそうだな」


「えぇ、街で孤児の子供達出会って、あの子なりに何が出来るか考えたようです。もちろん目先のことだけ見ていると言われたらその通りなんですが」


「何もしないよりは良いだろう。俺は自分の力だけでは何一つなし得ていない」


 最後は自分に言い聞かせるようにアーノルド王子は呟いていた。




 屋敷の裏側を流れる川のそばまで来ると、近くの岩に向かって声をかけた。


「おい、チビ」


「チビじゃない、フレアだもん」


 岩の影から声が帰ってきたので、ため息を吐きながら声のする、すぐ近くまで近付いて地べたに座った。


 おそらく魔法で姿を消しているのだろう。


「アーノルド王子怒ってた?」


「いや」


「じゃあ、呆れて失望してるんだ。ドラゴンが何訳の分からない事言ってるんだって、私が砦を攻撃しないとアーノルド王子死んじゃうんだよね」


「お前はドラゴンでもフレアだろ。さっきの言葉はお前の本心なんだろ。誰でもいきなり人を殺せって言われれば躊躇するだろ、ましてや大勢の人ならな。普通の反応だと思うぞ」


「・・・・・・」


「俺達はお前と一緒に過ごして知っていたが、あいつは理解しきれてなかったんだろう。ドラゴンのくせに以外と人間臭いってな」


 ここかな、と思ったところに手をやると予想通り頭があったので頭をポンポンと叩いてやった。


「あんな王子でも、兄貴は信じてたんだ。この国を救う事が出来るのはあいつだと。兄貴は命を捨ててまで、あいつを王にする為にお前と言う武器を作ったんだ。兄貴は最後まであいつがこの国の王にふさわしいと信じてた。だから、俺もあいつを王にするために命をかける。あいつは信じてないが、あいつを信じていた兄貴を信じてるからな」


「・・・・・・」


「もう一度、話ぐらい聞いてやれ」



 ルークの目線の先にはアーノルド王子が立っていた。




 







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