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始まりの予兆ー2

 「君は魔法が使えるのかい?」


 屋敷に向かって歩いていると、アーノルド王子が尋ねて来た。


 シュウ君は私に魔法を教えている事は伝えてなかったのかな。


「そうだけど?」


 不思議に思いながら答えると後ろを歩いていた護衛のおじさんが驚いたように、こんな子供が、とか呟いていた。


 私は急いでいたので気にせず、向こうから歩いて来るルークに声をかけた。


「ルーク、お客さんだよ。屋敷にみんないる?」


「ん?げぇ、アーノ・・・、なんでこんなところに」


「大歓迎だな、ルーク」


 アーノルド王子はルークが好きでたまらないと言った感じのキラキラ笑顔だったが、ルークは驚いた微妙な顔をしていた。


 「シュウは屋敷にいるぞ、アンナはまだ帰ってないぞ」


 ルークは王子様を無視して言った。


 アンナは街に残って買い物をして来ると言っていたので、まだ直ぐには帰ってこないだろう。


 ルークの手を引っ張って、私の顔の高さまでしゃがんでもらうと侵入者の事を耳打ちした。


「とりあえず、中に入るか」


 話を聞いたルークはアーノルド王子を屋敷へ案内した。


 屋敷につくと私はシュウくんを呼びに部屋へ向かった。


「シュウくん、いる?」


「フレア、ちょうどさっきルイガーから侵入者がいるって聞いたんだ。本当かい?」


「本当だよ、シュウ君、ルイガーの言葉が解るようになったの?」


 驚いて尋ねるとシュウくんは首を振った。


「違うよ、侵入者が来たら僕の前に来て3回鳴いてもらうよう約束してたんだ。彼らの方は僕達人間の言葉を理解してくれてるみたいだったからね」


「そうなんだ、それなら話は早い。怪しい二人組が林の中から隠れてこちらの様子を見てるみたいなんだ」


「子供達が心配だな。ちょっと行ってくるよ」


「あっちは作業小屋から出ないようにお願いしておいたし、音が漏れないように魔法をかけたから多分大丈夫。もし子供達が襲われそうならルイガーに対応してもらうよう伝えてあるわ」


「仕事が早いね、フレアは」


「それと、アーノルド王子がルークを訪ねて来たんだけど、シュウ君も行く?」


「なんで急に?もちろんすぐに行くよ」


 シュウ君とルーク達の所へ行くと、あのルークがおもてなしをしようとしたのか、色の薄い紅茶がアーノルド王子の前に置かれていた。


 シュウくんが王子に挨拶している隙に、何これ?と紅茶ぽい飲み物についてからかっておいた。



「急に訪ねて来て申し訳ない。なにせ時間が無かったからさ、シュード国の王都からの帰りに寄らせてもらった」


「シュード国ですか」


 ルークがアーノルド王子の視線に気が付いて私を見た。


「ん?こいつですか?フレアですよ」


「フレアとは?ジークに娘がいたとはきいていないぞ?」


 私とルークは顔を見合わせた。


 これは、ひょっとして、あれかな


 シュウくん、言ってなかったの?


 王都との連絡役でもあるシュウくんを見ると、キョトンとした顔をしていた。


 私は椅子から立ち上がるとアーノルド王子に微笑んで、その場でドラゴンの姿に戻ってみた。


 面白いぐらい、アーノルド王子も護衛のおじさんも驚いてくれた。


「そうか、魔法を教えていると聞いていたが、まさか人間の姿になっていたとは思わなかった」


 椅子に座り直しながらアーノルド王子が言った。


「お前、後でアンナに謝れよ」


 ルークがコップの破片を片付けながら言った。


 ドラゴンに戻るときにテーブルをひっくり返してしまいコップを割ってしまったのだ。


「はーい、割った事は謝るけど、ちゃんと元に戻すよ」


 私は魔法を使ってコップの破片をくっつけ始めた。

 

 これはまだ習ったばかりで時間がかかってしまう。


「人の姿になるドラゴンか、良い切札になってくれそうだ。魔法も使えるようだしな」


 人間で魔法を使えるのは限られた一部の人だけらしい。 

 魔力を持っていても、魔法の原理を理解できる者じゃないとと使えないと以前シュウくんが教えてくれた。

 ルークの兄、ジークはアサイ国1番の魔力の持ち主でずば抜けて秀才だったので、国1番の魔法使いだったそうだ。

 同じ双子の兄弟のルークも魔力は持ってるそうだが、魔法を理解する事が出来なかったようで、剣士の道を進んだそうだ。

 ルークってバカなんだ、シュウくんから教えてもらったときにそう思ったけど、シュウ君はそんな私の思いを訂正した。

 魔法を理解する事が困難なのだと、素質があっても、理解出来なくて魔法使いを諦める数の方が多いらしい。

 確かに、学校もない世界では原子がどうのこうの言われても理解出来ないかもしれない。

 魔力を持って生まれてくる人間は100人に1人ぐらいだけど、ちゃんと魔法使いになれる人間は1000人に1人いや5000人に1人ぐらいらしい。


 マットも簡単な魔法を使えるよと言ったら、シュウくんは非常に驚いて、誰に教わったのか、一緒に魔法の勉強をしないかと昼休憩の時に誘っていたみたいだけど、呆気なく断られていた。


 この世界で魔法はとても便利だけど、使える人間は貴重な存在らしい。


 だから、アーノルド王子は私が魔法を使うのを見て驚いたようだったのだ。


 私の場合は、ドラゴンの魔力の量が人間と比べるまでもないし、小学校から大学までの知識があれば魔法の勉強もそこまで難しくはない。


「けど、アーノルド王子も魔力持ってるでしょ?」


 私は何気なしに言うと、その部屋の全員が驚いた。


「なぜ、そう思うんだい?」


 アーノルド王子が鋭い声で言った。


「だって、魔力のある人間は少しだけだけど、美味しそうな匂いがするから、ほんの少しね。ルークもシュウくんもアーノルド王子もね。あ、食べないから!」


 ちょっと、シュウくんが私から離れたので慌てて付け加えた。


「さすがはドラゴンだな。正解だよ。実は俺も魔法が使えるんだ。簡単なのだけどね。この国じゃあ、俺以外1人しか知らない極秘事項だったんだが、他言無用で頼む」


「そうだったんだ。ごめんね、秘密だとは思わなくって」


「いや、ドラゴンの前で隠し事は出来ない事が分かったよ。魔力があると美味しそうな匂いがするのかい?」


「うん、だけど魔獣達の方がもっと美味しそうな匂いがするから安心して、食べないって」


 ちょっと笑顔が引きつったシュウくんにもう一度念押しした。


「けど、魔力をエサにする魔獣達に襲われる危険は普通の人間よりあると思うから、気をつけておいた方がいいかも。シュウくんはそこまで匂わないから大丈夫だって、マットとおんなじくらいかな。アーノルド王子はもう少し美味しそうな匂いがするけど、この中じゃルークが1番美味しそうな匂いかな」


 ニヤッと笑いながらルークが言った。


「返り討ちにしてやるよ」


「よくドラゴンの巣まで来る途中で他の魔獣に食べられなかったよね」


「ルークは強いからな。我が国でも1、2を争う程だと思うぞ」


「それはどうも、あんたに言われてもね。それで、なんで急に来たんだ?」


 アーノルド王子は笑顔を消して話し始めた。






 

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