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始まりの予兆

 ここ最近、午前中はシュウと魔法の勉強をしたり、勉強に飽きるとみんなの仕事を覗きに行くのが日課になっていたけど、その日は街の鍛冶屋から道具を受け取って、マット達の所へ持っていった。


 スターボーンの解体作業に子供の力でも使いやすい専用の道具があればもっと作業効率が良くなるんじゃないかと思い、ルークやマットの声を聞いて専用の道具を作ってもらえるよう鍛冶屋へお願いしていたのが、完成したので受け取りに行ってきたのだ。


 さっそくマット達に渡して試しに使ってもらうと予想通り今までの道具よりも効率よく作業出来そうだった。


「すげー、全然違うぞ」


「これなら1日に3頭は作業出来るようになるかもね」


 今は3人で1日に1頭のペースだが、専用の道具を使えば甲羅周りの肉をそぎ取る作業がコツさえ掴めば簡単に出来ると、マットと刈り上げ少年のシュウランが嬉しそうに言ってくれた。


「多分、解体作業の人数を減らして燻製作業に誰かを回せると思うぞ」


「じゃあ、鍛冶屋さんに同じ物をあと3台は作ってもらうよう頼んでおくね」


 鍛冶屋さんへの交渉はルークと私で初めはおこなっていたけど、同じ物を追加で頼むなら私だけでも出来るだろう。


 早く頼んだほうが良いだろうし、これからひとっ飛びで街まで行こうかな。


 そんなことを考えながら解体作業のデモンストレーションを見ながら、みんなで集まっていると後ろから声をかけられた。


「楽しそうだね、何をしているんだい?」


「あんた、誰だ?ルークさんの客か?」


 マットが代表して声をかけてきた男に尋ねた。


 魔石を買い取りにアンナのお兄さんが来る事もあるし、王都から甲羅を引き寄りに兵士が来ることもある。


 マット達は誰か訪ねてきたら、ルークかアンナに声をかけるよう言われていたので、誰のお客か尋ねたのだった。


「そうだね、ルークの客だ。呼んできてくれるかい?」


 笑顔で答えた彼にマットは冷たく言った。


「俺達もヒマじゃねぇ、ルークさんは屋敷に馬獣を返しに行ってるからこのまま道なりに進めば会えるさ。よし、作業に戻るぞ」


 遊んでいると思われたのが嫌だったのか、少しムッとしたマットの声かけで子供達がそれぞれの持ち場に戻って行った。


「嫌われちゃったかな」


 離れていくマット達を見ながらボソっと彼が呟いた。


「初対面の大人には警戒してるんだよ。私が案内するから、これ片付けるの手伝ってくれない?」


 私はたたずむアーノルド王子に声をかけた。


「そっちのおじさんも、ほらこっち来て、あの小屋まで運んでくれる?」


 アーノルド王子と護衛のおじさんに解体道具を小屋まで運んでもらうと、ちょうど、ルイガーからテレパシーが届いた。


 『侵入者です、2名、敷地内の林に潜んでます。排除しますか』


『人間?』


『はい』


 ルイガーは以前甲羅を引き取りに来た兵士を侵入者と勘違いしてる襲ってしまう事があったけど、今はちゃんとまっすぐ道を通って来る人物は侵入者では無いと理解しているので、目の前のアーノルド王子達の事では無いだろう。


「ここに来たのは二人だけ?」


 私はアーノルド王子に確認した。


「ん?そうだよ?どうしたんだい?」


 とすれば、アーノルド王子の隠れた護衛ではないのだろう。


『とりあえず様子見で、もし屋敷内の人間を襲おうとしたら遠慮なく攻撃して、連絡ありがとう』


 ルイガーとのテレパシーを終えるとマット達が作業している所へ急いで向かった。


「今日は休憩小屋で全員作業してくれる?私が音が漏れない魔法をかけておくから音は気にしなくて良いけど、小屋からは出ないで欲しいの」


 小声でマットに伝えると、すぐに察してくれて頷くと、仲間に指示を出し始めた。


「どうしたんだい?急に?」


 私の行動を不審に思ったアーノルド王子が聞いてきた。


 私はそれには返事せずに、作業小屋に音を外に漏れなくするように防音の結界を張って、万が一の為に侵入者が小屋に近づいたら私が気付く感知魔法をかけた。


 シュウ君に色々魔法を習っておいて良かった。


 小屋の見た目はボロいので、魔法使いでもなければこれでぱっと見ただけでは中に人がいるとは分からないだろう。


 侵入者がどこの誰であれ人間の場合はスターボーンの甲羅や魔石、肉を狙って来た可能性が高い。


 もしくは、この王子が目的か


 どちらにせよ、スターボーンの解体場所が見つからない様に、子供達に危険が及ばないようにしないと。


「なんでもないわ、さあ、ルークの所へ案内するよ」


 一通り魔法をはり終わるとアーノルド王子達へ返事をした。

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