ルイガー
「つまり、スターボーンばっかり食べてたから、どんどん弱ってたのか」
「まぁ、そう言うことかな。前からあんまり美味しくないと思ってたんだけど、間違いじゃなかったみたいだね、えへへ」
笑って誤魔化してみたけど、周りの3人の顔は笑ってなかった。
「とにかく、今日からは別の魔獣を狩って食べる事にする!」
「バカだな」
ルークが呆れたように言った。
「バカとはなに、バカとは!ちょっと知らなかっただけだから」
「またひとつ賢くなったね、フレア」
シュウくんに褒められて私は嬉しくなった。
「今後スターボーンはお兄ちゃん、さっきのドラゴンね、が定期的に捕まえて持ってきてくれる事になったよ」
スターボーンが増えた原因はまさかのお兄ちゃんだった。
昔若気のいたりでスターボーンボーンの天敵を一匹残らず滅ぼしてしまったそうだ。
スターボーンの増え過ぎであたりの自然が破壊されてる事を伝えると、
『我らドラゴンのする事は天災と同じだ。気にするなぁ』
とか威張って言ってたけど、スターボーンの数を減らすのを手伝ってくれる事になった。
「それはすごいね。本物のドラゴンが手伝ってくれるなんて!」
シュウ君はドラゴンという言葉に感動したように言った。
いや、目の前にも本物いるんだけど、と思いながらも話を進める事にした。
「スターボーンの肉はここで処理しきれない分は王都へ渡したらどうかな?燻製にしたら保存食になるでしょ」
「フレアが食べないと大分余るからね。ここで燻製にして王都へ流しますか?」
「そうだな、俺たちで売るよりも王都に任せた方が良いだろ。一度相談に行けると良いが」
「それなら大丈夫、夜の魔獣達の襲撃についても試してみたい事があるの」
「どういう事だ?」
「ちょっと準備がいるんだけど」
私はルーク達に考えている事を相談した。
「なるほどな、念のため俺もついていく」
ルークの準備を待って、私とルークの二人で馬獣に乗り、目的の気配のする方へ出発した。
屋敷から街とは正反対の森の中へ馬獣に乗って分け入って行くと、巨木と呼んで良さそうな大きな木の下にたどり着いた。
あまり近くまで接近すると相手を刺激してしまうので、すこし手前で馬獣の背から降りると、巨木の上を見上げた。
あちらも私に気付いているだろう、すぐに上の枝から猫によく似た魔獣ルイガーが飛び降りてこちらに向かって牙を見せた。
私達は毎晩、懲りずにスターボーンを狙って来るルイガーの気配を辿って、すみかまで来たのだ。
まだ上には何匹か気配がするので、他にも仲間がいるのだろう。
いつもは目の前のルイガーにこちらの縄張りを荒らされて迷惑しているが、今日は自分の縄張りに入り込まれてイラついているようだった。
少しは私の気持ちが分かったか!と思いながらも、テレパシーでメッセージを伝えた。
『私の縄張りに侵入した罪により、今ここで仲間もろとも灰になるか、今後一生私に忠誠を誓うか、選びなさい』
私は精一杯威厳を出して伝えてみた。
急にやってきて、死ぬか、言うこと聞けとは自分でも何言ってるんだって思うけど、相手に舐められないようにするためだ。
ルイガーは襲撃に来る魔獣達の中でも頭二つ飛び抜けていた。
本来ならドラゴンに向かって来るような知能の無い種族では無いと思う。
自分の力量を把握出来るだけの知恵のある魔獣だ。
だけど、どういう訳か、目の前のルイガーはそれでも毎晩来ていたので、このルイガーを味方にして他の魔獣を追い払ってもらおうと考えたのだった。
おっと、忘れてた。
『忠誠を誓うなら、君とその仲間は一生食べないと約束しよう』
働いてもらう上でのメリットも付け加えてみた。
相手がどうするかは私にも分からなかった。
申し入れを断るなら、今後の屋敷の安全の為にも、木の上の仲間ごと灰する覚悟は出来ている。
出来れば、そうはしたくない、受けて欲しい。
『あなたに忠誠を』
ルイガーは犬のように伏せをして、私に忠誠を誓ってくれた。
『我が一族あなたに忠誠を捧げます』
そう言って、目の前のルイガーが頭を下げると、木の上から10匹程のルイガーが降りてきて同じように、身体を伏せて私に向かって頭を下げた。
『よろしく頼むね』
私は微笑んで伝えた。
横にいるルークにも上手くいった事を笑顔で伝えた。
こうして、スターボーンの見張り役としてルイガー達を仲間にした。
ルイガーは元々、スターボーンの魔石を食糧としていたようで、集団で1匹のスターボーンを狩っていたが、スターボーンの数が増え、大きな群れになったので、スターボーンを狩る事がだんだんと出来なくなってしまったようだ。
ルイガーは魔石を食べると魔力が蓄えられて強くなれるそうだが、スターボーンを狩れなくなって、魔石を食べることができずに、どんどん弱体化していったそうだった。
このままでは、一族が滅びてしまうと、なんとか魔石を手に入れるために、大量のスターボーンを置いていた私達の屋敷に目をつけたそうだった。
ドラゴンが見張ってると気づいて他の仲間は止めたけど、群れのリーダーである一匹が無謀は承知とか言って毎晩私に向かって来ていたらしい。
スターボーンには魔石を渡す代わりに、夜の警備をお願いする事にした。
スターボーンに魔石を渡してもまだまだ売れるくらい量はあるので問題ない。
それよりも、夜の襲撃の見張りをしないで良くなったので、体力的にも精神的にもずっと楽になった。
こうして、私は日中はマット達の解体作業や加工作業を手伝ったり、シュウ君に魔法の勉強を教えてもらい、夜はルイガー達に見張りをしてもらって、自分の狩りに専念できるようになった。
しばらくは、穏やかな平和な日々が続いていたが、だんだんと戦いの足音が近づいていた。
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