不調の原因
夜の空は地上よりも温度が低いのか、冷たい風が体に当たって少しだけ心地良かった。
車椅子生活になる前はお母さんに怒られた時など気分転換に外へ散歩へ行くことが好きだったな。
そんなことを思い出しながらスターボーンの生息地へ翼を動かした。
上空から見ると、スターボーンの群れが固まって眠っているのがよく分かる。
本来は甲羅を背に岩影や木の下などで隠れて寝る魔獣かもしれないが、数が多過ぎて隠れる場所が無いのだろう。
けど、圧倒的な数の前には余程の大型魔獣では無い限り、襲われる事はないに違いない。
だからこそ、ここまで増えすぎてしまったのだろう。
私は狙いを定めて一気に急下降した。
ある程度の数を仕留めた終わると、周囲に群がっているスターボーン達を追い払おうと炎を吹き出したが、思ったほど威力が出ず、追い払う事が出来なかった。
それを見たスターボーン達が私が飛び立つ前にと、襲いかかって来た。
馬鹿にしないで!
咆哮を上げて威嚇すると、後ずさったが、私の周りからは逃げようとしない。
私もここで飛び立つわけにはいかない。
私は争いは好きな方じゃないけど、生前はなかったドラゴンとしてのプライドがそんな行為は許さないと心の奥で言っていた。
私とスターボーン達でお互い一歩も引かずジリジリと睨み合いをしていたけど、私の方は内心ふらふらだった。
このままじゃまずいかも知れない。
体がふらつくのはなんとか抑えているけど、ここは動いた方が負ける気がする。
私は気力を振り絞ってスターボーンを睨み続けようと、体に力を入れたその時、あたりの空気が変わり一瞬の内に稲妻がスターボーン達を襲った。
稲妻の後に鳴り響く轟音と共にスターボーン達が倒れていった。
私は息を吐き、空を見上げると、上空から力強く翼をはためかせながら、稲妻の色をしたドラゴンが降り立った。
『お兄ちゃん』
『近くでフレアの気配がしたからな、ちょっと会いに来たんだが、あの男にこき使われてないか』
お兄ちゃんの顔を見るとなんだか嬉しくなったけど、大丈夫とはなんだか言えなくて言葉に詰まってしまった。
私は言葉の変わりに頷いた。
最初は爬虫類顔にドキっとしていたのに、今は安心感を感じていた。
『近くに昔使っていた俺の隠れ場所がある。そこまで来れるか?』
私の返事も待たずにサッと飛び立ったので私も急いで跡を追った。
森の中の谷底に大きな空地があり、谷底に岩の洞窟がぽっかりと口をあけていた。
その洞窟の前にお兄ちゃんに続いて降り立つと、『ちょっと待ってろ』
と言うやいなや飛び立ったので、私は洞窟で丸まって体を休める事にした。
ここはドラゴンの巣になんだか似てるな、
ウトウトしながら体を丸めているとお兄ちゃんが帰ってきた。
『食べろ』
お兄ちゃんは熊に似た、けど熊の3倍は大きい魔獣を狩って運んで来た。
お腹は空いていないはずだったけど、魔獣を見た途端、急に空腹な事に気付いた。
私は遠慮なく魔獣をガツガツと食べ始めた。
すると、食べれば食べるほど、体に力が湧いてきて完食する頃には今までの不調と眠気が嘘のように回復していた。
先程とは比べものにならないような炎で魔獣の骨を全て灰にするとお兄ちゃんが口を開いた。
『あんなスカスカの魔獣じゃ、いくら食べても意味がないぞ。なんであんな美味しくない奴らを狩ってたんだ?』
『確かに美味しくはないけど、なんで意味が無いの?』
『魔力がほとんどあの甲羅と魔石に取られてるから、食べても魔力を自分の力に還元できないからだ』
私が理解出来ないでいると詳しく教えてくれた。
ドラゴンは魔獣を食べる事で魔力を体に取り込んでいるらしい。
スターボーンは魔力が甲羅と魔石に持っていかれているので、いくら食べても、何も食べていない状態と同じになっていたのだった。
しかも、一応お腹には入るので満腹感は感じるから、タチが悪い。
私の体調不良の原因はスターボーンの食べすぎによる魔力の低下だったようだ。
今は魔力たっぷりの魔獣を食べてすっかり元気になる事が出来た。
『ありがとう、お兄ちゃん、知らなかったよ』
『当たり前だ、本来、一人前になるまでに、他の仲間達から教えられる事だ。お前はあの人間に無理矢理連れて行かれたから、知る機会を奪われたのだ』
お兄ちゃんは憎々しそうに伝えて来た。
私は大量のスターボーンを捕まえてどうするか、これまでの事を簡単に説明しながら、本調子では無い体を休める事にした。
『馬鹿な魔獣どもをお前が相手にする必要ないぞ、適当に魔獣を連れて来て相手をさせれば良い』
『どう言う事?』
『知恵のある魔獣なら俺達ドラゴンの命令を効かない奴はいない。一生食べない事を条件に雑用を任せるんだ』
私はお兄ちゃんからその話を詳しく聞く事にした。
今抱えている問題が一気に解決出来るかも
屋敷を飛び立った時は、胸にかかっていたモヤモヤが一気に晴れていく気がした。
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