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スターボーンの山

 「おい、起きろ、あの山はなんだ」


 ルークが私の肩をグラグラ揺り動かす振動で目が覚めた。


 ダメだ、まだ眠い。それに、足に力が入らなかった。


 「お土産、あの魔獣、解体したら武器になって貴重だって言ってたから」


 私はまた目を瞑りながら答えた。


 「確かにそんな事を言った事はあるが、解体に時間がかかって1日に1匹が限度だと話したつもりだが」


 ルークの顔を見なくても絶対怒ってる。ちゃんと説明したいけど、今はちょっとまだ・・・。


 「フレア、お昼ご飯を用意したから食べなさい。話はそれからよ」


 アンナに、包まっていた毛布ごと抱き抱えられてテーブルまで連れて行かれた。


 用意してもらったスープとパンを食べ始めると少し目を覚ます事が出来たので、食べながらルーク達に説明した。


 「あの魔獣を解体して、甲羅やら魔石を手に入れれば、武器になるかなと思って。アサイ国の兵に使って貰えれば、今度の戦いの役に立つでしょう?」


 「確かに、スターボーンの甲羅で盾や鎧を作る事が出来たら兵達の戦力は上がるとは思いますが」


 「どう考えても人手が足りん、俺とシュウで作業をしても1日2匹が精一杯だぞ。何匹いるか知らんが、時間がかかり過ぎる」


 「マット達に、廃墟に住んでる子供達に働いてもらえばどうかな?」


 「フレアが出会った子供達ですか?それなら悪くないかも知れないね」


 シュウくんがルークに確認するように言った。


 「あの子供達に働く気はあるのか?」


 「そっちは任せて、ルーク達は甲羅や魔石を買い取ってくれる相手を見つけて欲しいの」


 「それなら、王子に聞いてみますよ。スターボーンの甲羅なら立派な武器が出来るので、喜んで引き取ってくれるはずだよ。逆に高価すぎて普通の店では引き取ってもらえないよ。よその国の店だったら売れるかも知れないけどね」


 「他国に持って行くのは論外だ。強力な武器の流出はアサイ国の首を絞めるだけだ。シュウ、あの王子に手紙を書いて知らせろ」


 ルークの言葉にシュウくんが頷いて応えた。


 「魔石は武器にはならないよね。加工して、他国に売ったらお金にならないかな?」


 「魔石の種類にもよるな。魔力の強い魔石は加工すれば立派な武器になるが、スターボーンの魔石は魔力はそれほど秘めていないだろう。武器には使えないが、装飾品としては高い値で売れるだろう」


 「それなら、兄に聞いてみるわ、フレアにはまだ話して無かったけど私の兄は商人なのよ。兄なら信頼出来ると思うわ」


 「そうだな、アンナのお兄さんなら信頼出来るだろう、そちらは任せる。あの子供達のところへは俺もついて行くぞ」


 私はルークの馬獣に乗せてもらい、街外れの廃墟に向けて出発した。


 


 廃墟につくと人気が無いようだったが、気配があったので気にせず声をかけた。


 「マット!いる?話があるんだけど」


 私の声に小さな子供達が出てこようとしていたが、それを留めてマットが一人で出てきた。


 「昨日の今日でどうしたんだよ。昨日のお礼に食べ物でも持って来たのかよ」


 私も最初は食べ物を渡せば良いかと考えたけど、それじゃあ、根本的には何も解決しない。


 「違うわ、仕事を持ってきたの。仕事内容は魔獣の解体作業の手伝いで、報酬は解体した魔獣の肉の一部よ。何人来ても良い。やる気ある?」


 私はあえて挑発的に話した。これは、同情からじゃない、あなた達が必要なんだと思って貰えるように。


 マットは私の急な言葉に驚いたようだが、考えるように私を見た。


 「仕事時間はどれぐらいだ?」


 時間は決めて無かったというか、こちらの労働時間はどれぐらいなんだろう。チラッとルークをみるとルークが答えてくれた。


 「朝の鐘が鳴ってから、夕方の鐘が鳴るまでだ。途中、昼飯と休憩時間もつけてやる」


 「やったね、お願いします!」


 奥の廃墟から刈り上げ少年が出てきて嬉しそうに言った。


 「おい、まだ返事して無いぞ。まぁ、報酬があるんだったら働きに行ってやるよ」


 「じゃあ、明日からお願いね。場所は分かる?」


 「あぁ、林の中の屋敷だろう、知ってる」


彼らに私が出来る事はないか考えたときに真っ先に思い浮かべたのが、食べ物だった。

 私が彼らに食べ物を渡しても良いんだけど、彼らが食べれるように解体作業をするのは私やアンナやシュウくんだ。

 自分達の分以上に子供達全員の分を解体作業をするのは正直大変だ。

 なので、自分達でやってもらおうと考えたのだ。


 スターボーンを選んだのは正直たまたまだった。

 最初に捕まえて、持って帰ろうと飛び立った時に、森の中に生息しているスターボーンの数がやけに多い事に気付いた。

 余り同じ種ばかり狩る事は生態系のバランスが崩れる為、してはいけないと教わった。

 だけど、スターボーンの数は異常に多く、木の根っこまで食べられて木が枯れて、山がハゲ山になっていたのだ。

 前に捕まえた時にルークが言っていた言葉を思い出し、食糧にもなって、甲羅も役に立つならと思いスターボーンを大量に狩る事にしたのだった。


 私はルークに馬獣に乗せてもらい、廃墟を後にした。


 「お前にしては頑張ったんじゃないか」


 馬獣の背に揺られながらルークが言った。


 珍しくルークが私を褒めてくれたけど、返事は出来なかった。


 実はさっきから眠気が襲ってきて、ずっと我慢していたけど、もう限界だった。

 私はルークにもたれかかるように眠りについた。




 

 


 

 


 


 

 

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