廃墟の住人
「なんだと、助けてやったのにお礼もいえねぇのかよ。こっちは魔法も使ってヘトヘトなんだぞ」
やっぱりあの不自然な砂煙は魔法だったんだ。
多分助けは要らなかったけど、私がやるより大きな騒ぎにならなかったから一応お礼を言っておこう。
「助けてくれてありがとう。私はフレア、君は?」
「おう、素直じゃねえか、俺はマット、ここのリーダーだ」
リーダー?不思議に思っていると廃墟から、子供達がこちらの様子を覗いていた。
上はマットと同じくらいの年の子から下は5、6才の子供達がなんと20人ほど潜んでいるようだ。
「俺達だけで住んでるんだ。親がいない奴らで集まってな。みんな、こいつは大丈夫だ」
マットの言葉に隠れていた子供達がゾロゾロと出てきた。
「新しい仲間になる子?」
「綺麗な髪!」
「なんていう名前?」
私は女子達から囲まれてしまった。
マットは懐中に隠していた私の肉串を1番小さな子供に渡していた。
「そいつは街で絡まれてたのを助けただけだ。俺達の仲間にはならねぇよ。フレアだっけ、お前帰る家はあるんだろう?」
「うん、この街からしばらく行った所の屋敷でお世話になってるの」
「そうなんだ、残念」
女子達が寂しがってくれた。
「騒ぎが落ち着いたら帰れよ。それまではここにいても良いけどよ」
「それはどうも、みんなどうやって生活してるの?」
マットもそうだったが、他の子供達もガリガリの様だった。
ここにいるのはまだまだ成長途中の子供ばかりのようだし、栄養不足は発達に良くないはずだ。
「近くに川があるんだよ。そこに魚もいるし、森へ入れば多少の食べ物は見つかるよ。それに街にも食べ物はあるしさ」
刈り上げヘアの見た目が怖そうな少年が親切に教えてくれた。
「しばらく、街へは行けねぇぞ。あいつらがどっか別の街へ行くまでは、お前らも街へ近づくんじゃねぇぜ」
「あいつらって誰さ?」
「ゴロチキどもが、ウロウロしてたんだよ。俺はともかく、他の仲間が捕まったら、簡単には逃げられそうにもねぇ。みんなにも伝えておいたほうがいい」
「そうだね。気をつけたほうが良さそうだね」
どうやらマットと刈り上げ少年がリーダー格の様だった。
「おい、フレア!」
その声に私は驚いて振り返えると、ルークが中々の笑顔で立っていた。
やばい、怒ってる時の笑顔だ。
ルークの声にマット以外の子供達はあっという間に姿を消してしまった。
あの刈り上げ少年もいない、速いな、みんな。
「なんで町の外に出てるんだ。ふらふら1匹、1人で出歩くんじゃない」
「よくここがわかったね。ちょっと色々あってさ」
ルークは私とマットを鋭い目つきで交互に見た。
「変なのに絡まれたところを助けてくれたの」
「そうなのか、まぁその姿じゃな。俺の連れが世話になった。ありがとうな」
「い、いえ、当然のことをしたままです!」
心なしか、いや、マットの口調が全然違う違うんだけど。しかも、噛んでるし。
「行くぞ!」
ルークは私の手を捕まえて引っ張って歩き出した。
「じゃあね」
私はマットに声をかけ廃墟を後にした。
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