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廃墟の少年

 「おい、お前」


 私が後ろを振り返ると10歳くらいの生意気そうな少年が声をかけて来た。


 「何か用?」


 「お前、見かけない顔だな。この街は俺たちの縄張りだぞ、好き勝手するんじゃねぇ」


 「別に好き勝手してないけど?」


 生まれて初めて会った人間の子供だったけど、明らかに絡まれてる気がする。


 「お前、馬獣に乗ってただろ。なんで、剣士様と一緒に乗ってるんだよ」


 今度はとんだイチャモンをつけられてしまった。

 今まで、車椅子生活で舌打ちされたり、わざとぶつかられたりした事はあるけど、こんなに一方的に絡まれるのは初めての経験だった。


 「私まだ馬獣乗れないから」


 「そんな事聞いてるんじゃない!それ、よこせ」


 いや、さっき聞いて来たよね。

 

 ダメだ、話が通じない。


 けど、私の方が大人なんだからこんなガキンチョ相手に怒るなんて大人気ない事はしないでおこう。


 このガ、少年はお腹が空いてるのだろう。

 よく見ると来ている服もボロボロで頬も手足もガリガリで、大きな青い目がこちらを睨みつけていた。

 

 「何、見てんだよ!」


 「別に何も見てないよ。ハイ」


 私は手に持っていた串を渡した。

 少年は注意深く串を受け取ると、あっという間にどこかへ走り去って行った。


 私はそれを見送ると、ため息をついてルーク達のところへ戻ろうとした。


 しかし、また声をかけられてしまった。

 

 「おい、嬢ちゃん、優しいね。俺達にもその優しさを分けてくれねぇかい」


 今度は、10人程の30代ぐらいのおじさん達だった。


 森の中で歩いていてもこんなに何度も魔獣に絡まれた事は無い。


 たまたま今日がついてない日なのか、この姿のせいなのか、私は大きなため息をついた。


 明らかに柄の悪そうなおじさん達は、身なりは綺麗じゃないが、お腹が空いているわけではなさそうだった。

 酒瓶らしき物を持っているやつもいるし。


 どこにスパイがいるか分からないから、人の目のあるところではドラゴンに戻らないよう言われていたので、飛んで逃げるのは無理。


 明らかに他の通行人は目をそらして避けているみたいなので、誰かに助けを求めるのも無理そう。


 ルーク達のところまで逃げるのもありだけど、この姿で逃げ切れるか自信は無いし、剣を持ってるおじさんもいるので、逃げ帰った先でアンナさんやシュウくんを危険に晒すのは嫌だな。


 「ねぇ、この国の男達は徴兵されてほとんどいないって聞いてたけど、おじさん達は徴兵されなかったの」


 「よく知ってるじゃねぇか、お嬢ちゃん。俺達は戦地で怪我をして帰って来たんだよ、英雄ってやつだ。だからお嬢ちゃんの持ってる有り金全部くれねぇか」


 よくよく見ると、手が無かったり、片目が無かったり確かに負傷兵なのかもしれない。

 だからといって、大の大人が寄ってたかって女の子に対してカツアゲは許される事では無いはずだ。


 私はこうなったら戦う覚悟を決めた。


 シュウくんからいくつか攻撃魔法の呪文を教わっていたので、試してみようかな。


効かなそうだったら、元の姿に戻って丸焼けにしよう。


 私は悪い事を考えて呪文を思い浮かべた。


 すると、同時に砂煙が目の前に立ち込めた。

 まだ魔法は使ってなかったので、急な出来事に驚いたけど、向こうも驚いている様だった。


 目に砂煙が入って、痛くて目が開けられないでいると後ろから誰かに手を取られ、引っ張られるようにその場から逃げ出した。


私は、手を取られるまま、走り続け街外れの廃墟に逃げこんだ。


 「なんで、さっさと逃げねぇんだよ、バカやろう」


 私は息を整えながら、顔を上げた。

 まだ目は痛いけど開いて見ることができた。


 「元はといえば、あんたのせいでしょ」


 私から串をカツアゲした生意気そうな少年が廃墟を背に立っていた。



 


 

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