アサイ国の現状
「初めに説明しておくと、アサイ国は隣国シュードの属国だ。シュード国に高い税を納め、若者を徴兵され続けているんだ。その為、アサイ国の国力は年々弱っていっているらしい。アサイ国の王はどうしようもないバカでな、シュード国の王族から嫌われているそうだ。その為か知らんが、本来なら住んでいる人数に見合った税金を支払うはずが、国土の広さに見合った税を徴収され続けているんだ。アサイ国は広い土地を持つ国だが、その土地の8割は人間の住める場所ではなく、人間の人口は元々少ないにも関わらずな」
「なんで人間が住めないの?」
「8割が山脈とそれに繋がる森林地帯だからだよ。そして、そこは魔物の生息地になっているんだ。フレア達ドラゴンも山脈のどこかに住んでいるんだろ?」
私はシュウの言葉に頷いて食後の紅茶をすすった。
「お陰でアサイ国は貧乏でな、国民も今では王族達も食べ物に困る事がある様だ。唯一の救いは王子の采配でアサイ国から国民への税をほぼ取っていない事だな。そのおかげで、まだ子供が飢えで死ぬ事は無いが、その分、国力は年々落ち続けているんだ」
「もう一つの大きな問題がシュード国からの徴兵制度なんだ。シュード国は大陸の中でも大きな国の部類に入り常に他国と土地を争って戦争をしていてね。その為、アサイ国からも徴兵により若者が毎回他国の戦争に駆り出されているんだよ。彼らは一兵卒としてロクな武器も持たされず、前線に送り込まれ、そのまま帰って来ないんだ。シュード国の兵が戦死する数より徴兵された他国の人間が戦死する数が圧倒的に多いんだ」
シュウ君は持っていたカップをガシャンとデーブルに置いて苦々しく言った。
「なんで、そんな・・・」
私が言い切る前にルークが教えてくれた。
「言っただろう。属国なんだって。アサイ国が条件を呑まなければ、シュード国はこの国に戦争を仕掛けてくるだろう。あの国は素直に負けを認める国には多少の温情を与えるが、歯向かう国の国民は女、子供まで容赦なく皆殺しにする国だ。アサイ国は属国になっても、王が無能でバカだから、ジワジワと苦しめながら滅ぼされている途中なんだ」
ドラゴンの巣にいた頃に簡単にルークからは話を聞いていたけど、思ってた以上に深刻な事態なのだと理解できた。
「そこで、巨大な湖に沈みかかってるアサイ国を救おうと現王子が優秀な魔法使いの兄貴に目をつけて、お前を召喚した訳だ」
「・・・、救世主って言われても、そんな現状の国をどうすれば救えるの?申し訳ないけど、1匹の非力なドラゴンにできる事はたかが知れてると思うよ」
「確かに、今のお前に出来る事は俺達の食料調達ぐらいだろうな。しばらくは力を蓄えてくれ!っと言いたいところだったが、実はそうも行かなくなった。さっき、王子の勅令が来た。シュード国が近々また大きな戦争をするから王子自ら兵を率いて参加する様に連絡があった様だ。王がもうそろそろ病気で長くないから、王が在命のうちにアサイ国を滅ぼすつもりだろう。王子が戦場へ行けば確実に生きては返されないだろう。王の跡継ぎは今、王子しかいないからな」
「王子がもし亡くなったらアサイ国は滅ぶの?」
「間違いなくな、そのまま王も病死すればアサイ国は指導者を失うことになる。属国の指導者が居なくなれば、シュード国が新たな王を擁立することになっているんだ」
「じゃあ、王子には戦場に行かない様にしてもらわないと」
「フレア、属国の王子が命令に逆らえば、すぐに奴らはアサイ国へ兵を向けるんだよ。王子はアサイ国を戦場にしないために、戦地へ行くつもりなんだ」
「そこで、お前に王子の護衛として同行して欲しいとの事なんだ。もちろん、俺も出る事になっている。考えておけ」
ルークはそう言うと話は終わったとばかりに席を立った。
「フレア、明日、ここから1番近い街へ行ってみる?
実際にあなたの目で見て決めて欲しいの。今日は遅いからもう寝ましょう」
アンナが優しく言ってくれた言葉に私は頷いた。
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