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王子との出会い

 ルーク達の家に着いた次の日、ルークは私とアンナを残してさっそく王都へ出かけていった。


 王都までは馬の様な魔獣で半日程かかるそうなので、帰ってくるのは早くても明日もしくは、2、3日はかかるかも知れないと言っていた。


 ルークからはなるべく目立つなと言われていたので、日中はひたすら寝ていた。


 最初は屋敷にあるもの全てが物珍しくてアンナの後ろをついて歩いていたのだけど、私が部屋から部屋へ移動するたびに、ドアにつっかえて、壁がメリメリというので、家を壊してはいけないと大人しくしている事にしたのだ。


 そんな訳で、昨日ウトウトした暖炉の前で朝寝して、ご飯を食べて、寝てました。


 寝る子は育つって言うしね。


 もちろん日中寝ているのにはちゃんと訳がある。


 夜、私は屋敷の外へ出て、近くの森まで狩りに出発した。


 まだ、他のドラゴン達のように巨大な魔獣は狩れないけど、小型の魔獣なら問題ない。


 人間の住む場所の近くには大型の魔獣は生息していないそうなので、きっと小型の魔獣の生息域なのだろう。


 アンナの料理は非常に美味しいけど、量が少なくて実は腹ペコだった。

 私はまだまだ成長期なので、質も良いけど、量なんです。


 思った通り、屋敷の裏はなだらかな森になっており少し奥まで行くと魔獣を見つける事が出来た。

 ドラゴンの目は夜も良く見えるし、鼻も良いので臭いでいろんな情報が手に入った。


 私は微笑んで、夜の闇に紛れて狩りを始めた。



 朝日が昇る前にはルークの屋敷の前に5匹の魔獣を持ち帰った。

 2匹はアンナへのお土産で残り3匹は私の朝ご飯だ。


 アンナを起こさない様に静かに食べていたつもりだけど、キャ!と言う悲鳴と共にアンナに見つかってしまった。


 恐る恐るパジャマのまま近いて来たアンナが尋ねた。


「どうしたの、これ?」


 私は口がいっぱいだったので屋敷の裏の山を指差して答えた。


「山で捕まえて来たのね。ドラゴンって凄いのね。あの凶暴なシンドラーを退治出来るなんて。シンドラーが人里に出たら大騒ぎになる程の魔獣なのに」


 アンナが驚いている様だけど、私はお構いなしに最後の1匹を食べ終わると、残った骨やらツノなど食べ残しに向かって炎を噴いて跡形もなく灰にした。


 ドラゴンは狩った獲物は大抵自分の巣に持ち帰って食べる習性がある。

 そして食べ終わると灰にして、世界に還すのだと教えてもらったのだ。


 自分の巣に持ち帰るのは、自分の縄張りだと主張する為らしい。

 私には良く分からないままだったが、魔獣を捕食すると、魔獣の肉だけでなく、魔獣のエネルギーも体に蓄積される。その時に、多少のエネルギーが漏れ出てその捕食する場に残るそうな。そのエネルギーは決して消滅する事はなく、その場に蓄積されるらしい。そのエネルギーは分かる魔獣にはわかるらしく、そのエネルギーで縄張りを主張するそうだ。


 私はさっぱり分からなかったけど、あのドラゴンの巣もそうやって出来たらしい。

 しばらくはこの屋敷を拠点にするようなので、お母さんに教えられた通りに屋敷に持って帰って来たのだ。


 跡形もなく灰にするのは、食べた相手への敬意を表す為らしく、この事に関しては生前も食べ物への感謝はしっかり教え込まれていたので、理解出来た。


 低俗な魔獣なんかは自らの力をアピールするのに、これ見よがしに骨なんかを集めるやつもいるらしく、ドラゴン達は鼻から煙を出して馬鹿にしていた。


 お土産に残して置いたシンドラーと呼ぶ、角の生えたイノシシに似た魔獣をアンナに咥えて持っていくと、一歩後ろに下がりつつ私の意図を理解してくれた様だった。


「これくれるの?」


 私がコクコクと頷くと、アンナは笑って言ってくれた。


「ありがとう、着替えてくるから解体するのを手伝ってくれる?」


 私はアンナの役に立てたようで嬉しくなった。


 解体作業が終わるとアンナが屋敷の裏にある川へ案内してくれた。

 私が血で身体がベトベトなので、水浴び出来るように教えてくれたようだ。


 一通り川でバシャバシャと身体を洗い、ついでに川魚を捕まえてアンナへのお土産にしようと屋敷に戻った。


 屋敷の前まで行くと、馬のような魔獣が5頭、馬獣の横にちょうど今到着したような様な格好の人間達が立っていた。


 私は急な出来事にめちゃくちゃビックリして止まってしまったが、あちらも驚いたのか動きが止まっていた。


 馬獣が私を怖がってヒヒィンと怯える声で、人間がこちらに剣を構えて中央にいる人物を守ろうと動いた。


「大丈夫です。剣を下ろして下さい」


 ルークが声を上げてこちらを背にして言った。


「こいつがお話していたジークと私で召喚したドラゴンです。知性があるので急に襲ったりはしません」


 どうやらルークが連れてきたらしい。


「やめろ、お前達」


 中央にいる銀髪の青年が声をかけると、青年を守りようにしていた男2人が剣を下ろし、青年の後ろへ下がった。


 銀髪の青年が私をマジマジと見るので、私もマジマジと観察してみた。


 カツラではない本物の銀色の髪に、銀色のまつ毛、青い目に白い肌、整った顔立ちに、180cm程の身長、ハリウッド俳優顔負けのイケメンが中世の騎士の様なコスプレをしていた。


 私がコスプレイケメンさんを観察していた間にアンナが気を利かせてカゴを持って来てくれたので、取った魚をカゴへ入れて渡した。


「我が国の救世主殿、わたくしは王子のアーノルド・シュルツと申します。どうか我が国にお力添えをお願い致します」


 コスプレイケメン改め、アーノルドさんはそう言うと膝を折り、頭を下げて私に向かってお辞儀をした。


 後ろに控えていた2人も同じように頭を下げた。


 私は驚いて後退り仕掛けたが、思いとどまった。


 彼らは私に救世主になれと言っている訳だけど、私もルークのと契約を解消するには救世主になるしかないのだ。


 利害は一致している。


 この半年、お母さんやお父さんからドラゴンの振る舞いを学んできた。


 ドラゴンは世界で唯一無二の生き物らしく、誇り高く生きる事が基本らしい。


 なんで唯一無二なのかは分からないけど、だから私もここでアーノルドさんに気圧されっぱなしはいけない。


「グォォーーー!」


 大きな咆哮をあげて了承の意思を伝えてみた。




 


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