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GLIM〜首つり台の旅人〜  作者: トウヤ
9/10

#3 名族-3

 東地区へと向かっていくマックローンはトバリとの話がついた事に安堵はしていたが、足取りは重かった。


 東地区のハクイ・フルフェズ、彼は間違いなく指示は受けてくれる確信があったが、色々と面倒な部分があった。


 フルフェズ家というのは初代グリムの時に姓も持たない雑兵、ドレアから成り上がった一族である。


 成り上がり方も頭が使えた訳ではなくグリムに対しての忠義心のみで、それは現在まで続いている為一応はリース派に所属しているのだが、自分たちはグリム派だと言い張りグリム王家以外からの命令に対してあまり聞く耳を持たない。

 

 この事に関してはマックローンからすれば好都合でしかない事だったのだが、問題があったのは喋り方だった。


 ハクイとは歳は二つ下で幼い頃からよく遊んでいた仲だった、にも関わらず異様なまでに忠誠心があるためか敬語や礼節をしっかりとする。というよりふざけてるのではと思うこともある。面倒くさい、ホントに面倒くさい。


 このように…

 

「お久しぶりでございます!すぐにお出迎えできず申し訳ありません!このような遠い所までマックローン様に出向いていただけるだなんて、このハクイ・フルフェズは生涯マックローン様に足を向けては寝れません!!いや!寝ることすら致しません!」


「…いや、いきなり出向いて悪かった。あと寝てくれ。」面倒くさい・・・


フルフェズ家の門を叩き、部屋へ通されてから2分後の出来事である。


「用件を簡潔に伝える。トリムの件は知っていると思うが、ここハイブでもそれが起こる。先手を打つためにフェド家とギガン家には行った。フェド家は非対応、ギガン家はオリオビに明日兵站を送る。お前には警備強化と周辺調査のために兵を貸して欲しい。出来るか?」


 マックローンは一切、話す隙を与えない。


「もちろんでございます。ハクイ・フルフェズ、心に誓います。しかしながら少し質問をよろしいでしょうか?」 


「ダメだ」


「了解致しました!」


「・・・いや、ハクイ様。詳しく分からないまま決断するのは気が早いかと」


ハクイの側近を務める男は、あまりにも早すぎる交渉成立に思わず口を挟む。


「ポーカー!失礼だぞ!もうすでに事細かにマックローン様はご説明してくださったではないか。これ以上何を聞きたい?」


「・・・・承知しました」


 ハクイに言い返したとしても無駄になることは分かりきっているポーカーは黙るしかなかった。


「・・・よし、これで公式的な話し合いは終わりだ。ここからは私的な話をする。だからその面倒な敬語は使わなくてもいいぞ」



「分かりました。すまないがポーカー席を外してくれ」


「いや、居たままで問題はない。むしろ聞きたい事があるのならば聞いてくれ」


「私からは何も。我々に入って来ている情報と、先ほどの話を合わせれば十分理解できます。ただ、ハクイ様が少し質問があるとおっしゃっていたので…」


 マックローンとポーカーはハクイに視線を向けるが表情は変わらない。再度マックローンとポーカーは目を合わせ話を振ったことと、振らせたことを後悔し始めていた。


「私の聞きたいこととはマックローン様、自らが隊長を務めていらっしゃる。グリム王国第十三部隊の隊員の皆様に一度御拝謁させていただきたく思うゆえに、皆様の所在をお聞かせいただきたく思うておりました!」


「・・・今はハイブの森に出た炎鋼龍討伐に向かわせている」


「そうだったのですか!?まさか、マックローン様率いる王国隊にお手を煩わせてしまうとは…」


「質問は…もういいな。それでは、今日はもう遅いため明日、周辺調査を行う。そのために適切な人間を何人か用意しておいてくれ」


「了解しました!!ポーカー!部隊の編成そして指揮を任ずる!急ぎ準備に取り掛かってくれ!」


 __________________ 


「一日目は、こんな感じだな…」


 舞台は再び騒がしい酒場へと戻る。クムゥはもう眠っている。


 話、聞いとけよ。


 フォーンとシヴは黙ったまま彼の方へと目を向ける。


「2日目は?」


「何匹かここらではあまり見かけない魔獣はいたが、決定打となりそうなものは無い。ハーナウに持って行った所で兵は動かせん」


「・・・明日、ハーナウに行って無理にでも引っ張ってくるしか無い。炎鋼龍がいた位置が近すぎる、そのことを考慮すれば近いうちに何か起こる可能性が高い」


「そうだな、今日はもう宿に向かおう。シヴ、タオムを連れてきてくれ。朝一で向かおう」


この決定に対して誰一人として(といってもタオムとクムゥは聞いてはいないのだが)疑念がある者はいなかった。 


 街は夜がこれから始まるといった騒がしさだったが、宿に向かって進んでゆく。

みんなで歩いているだけだったが、何故か彼だけが独り別の空間にいる感覚を覚えた。



 何か抜けている・・・そうじゃなきゃ背筋を這い上がってくる泥のような恐れはなんだ?・・・


 

 宿に着くとマックローンとフォーン、シヴとタオム、クムゥと彼に分かれ、部屋にベッドが2台と窓がひとつある窮屈な部屋に通され眠りについた。 彼以外は…

 

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