#2 ハイブの街-2
マックローン一行は歓楽街の方へ向かっていた。人気のない夜の住宅地を通る。空腹で倒れそうだが、足は軽い。
「なぁ、マックローン。ハクイに何を頼んだんだ?」
「東側の警備強化だ、詳しくは後で話す。」
歓楽街に入ると仕事終わりの男と仕事始めの女で賑わっている。一軒の店に入り、席に着くとすぐさま食べ物を注文した。
肉や魚の様々な料理が並んだテーブルにハクイにした頼み事について聞いている暇はなかった。
一通り食べ終えると、タオムはカウンターで屈強な男どもと筋肉を並べ酒を酌み交わし、クムゥはウトウトとしていた。
マックローンは残る3人にさえ、最悪でも彼にだけ聞かせておければ問題は無いだろうと考え、ハイブの街に着きフォーン達と分かれてからの自身の動向を話し出した。
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2日前ー
「では、行ってくる。」
「ああ・・・」
南門にて、炎鋼龍討伐に向かうフォーン達を見送る。とは言っても実際に対峙するのは一人、「彼」だと指示を出したのだが。
マックローンはすぐさま自身の仕事に取り掛かる1つはハイブを管理する三つの名家への挨拶周りである。マックローンは一応ではあるが、皇位継承順位8位か9位ぐらいにはなる、れっきとした王族であったためグリム王家に長らく仕える名家とは交友関係を深めておく必要があった。
もう1つと言うのは仕事ではなく、自身の直感に基づいたある予想に関しての調査である。
南門からしばらく歩き南地区を管理するガネーロ・フェド家の元へと訪れる。
フェド家の邸宅は白く流線形に曲げられ装飾された柵で囲まれ、庭には噴水まで置いてあり、メインの建物は白と蒼を基調とした彩りでまるで彫刻の様に見えた。
ただ、マックローンにはそれを見て綺麗と言うよりも卑しく見えていた。
「マックローン・グリムだ。急に訪ねて来てすまないが、ガネーロ・フェド殿にご挨拶をしたいのだが。おられますかな?」
2人の門兵は驚いた表情で返事をし、1人をその場に残し邸宅へと入っていく。
「・・・・・・・・・」
本当にこの男はグリム王家の人間なのか?
グリムと名乗るその男は背も小さく御付きの御人などもいない、貫禄も...無い。
しばらくすると邸宅から先程の門兵と一緒に執事と思われる者と共にこちらへやって来た。
「マックローン・グリム様、お越しいただきありがとうございます。中へどうぞ。」
執事にエスコートされながら案内されてゆく様子を見て門兵二人は、首を傾げる。
「本当か?」
「何が」
「グリムっていうの?」
「さぁ...」
邸宅内へと入り、2階へと案内されながら横目で見た玄関ホールのシャンデリアや暖炉などに冷たい視線を向ける。
「こちらで少しばかりお待ちを。」
通された場所は、少人数用の客間だろうか、数々のインテリアで装飾された生活感のない部屋だった。
テーブルを挟み、一人掛けのイスと長椅子が置いてあったので腰をかけた。
柄物の椅子は 硬く、冷えていた。
ガチャ
「お待たせいたしました。」
にっこりと笑みを浮かべて入る。
「わざわざこんな所にまで御足労いただきありがとうございます。」
深々と頭を下げる。
「いやいや、こちらこそ急に訪ねて来てすまかった。話しておきたいことがあってな。」
マックローンは立ち上がり、微笑み返した。
深々と下げた頭を上げ、目が合う。
「少しばかりな...」