#4 蛍火
夜も中盤に差し掛かったのか、騒がしかった街も静寂に包まれつつあった。
「・・・んぅ?まだ起きてたんですか?」
目を擦りながらクムゥは、ベッドに腰をかけ二階の窓の外を眺めながら煙草を咥えている彼に声をかけた。
「ああ・・・眠れなくてな」
「珍しいですね、そんなこと」
クムゥは体を起こし大あくびを一つする。酒場から寝てたからだろうか?不安そうな目で外を見つめる彼がいたからだろうか?すぐにまた横になろうという気にはならなかった。
「・・・隊長が言ってた魔族って本当にいるんですかね?」
「おそらくいる。魔族は…分からないが、魔人なら知っている」
「魔人?おとぎばなしとかに出てくる、魔族の力を持った人間のことですか?」
「ああ、3人ほどな」
『お前が、解き放った…何をやらかすかも分からない3人をな』
「ん?今なんて言った」
「?…いや、3人も知ってるなら、確かに魔族もいるかも知れませんねって…」
「・・・・・・・」
確実に頭の中に残っているその声の出所に見当がつかない。幻聴なのか?吐いた煙草の煙とともに消えてしまったのではと、考えるほどに。
ついに、私の止まっていた頭の壊れ具合が進み始めてしまったのかもしれない。少年の頃を思い出し、頭に手を当てた。ベットに落ちていく煙草の灰を見ても動く気もしない。その灰が落ちる光景は幾度となく落とした水滴と重なった。
部屋には外から来る風音が強く響く。
煙草を強く吸い込む、息を吐くが煙は出ない。代わりにベットに落ちた灰から煙が上がる。
「アッチィぃ!消せ、クムゥ!」
ベットから飛び上がり指示を出す。どうやら灰と一緒に火種まで落ちてしまったようだ。
クムゥは慌てながらも火を素手で叩いて消す。
「ふぅ、よかった消えました…っていうかなんで僕が消さなくちゃいけないんですか!」
彼は悪びれる素振りもなく残った煙草に火をつけ直し再び煙草を吸い出した。少し笑みを浮かべながら。
眺める窓の外から小さく鐘の音が鳴る。
また・・・?
眉を顰めクムゥを見るが窓の外を見て少し怯えた表情をしている。
俺にだけではない?
立ち上がり窓の枠に手を掛け身をのり出し正面、東の方角を目を凝らして見つめる。
クムゥは荷物から単眼鏡を取り出し彼に渡そうとする。
「見てみろ、見たらすぐに準備をしろ」
クムゥは言われるがままに単眼鏡を右目に当てる。東の森の方には、周りの木々より高い位置に赤黒い目が二つ、月明かりを受けて煌めく鋼鉄の身体が見えた。
「あれって!もしかして?!」
「ああ、おそらくな。急げ!街が消し飛ぶぞ」
彼が倒した十数倍はある巨大な炎鋼龍の姿がハッキリと見えていた。




