とある毒
奴らが何を言っているのかわからなかった。
だが奴らが持ち込み垂れ流した毒みたいなものが今でもたまに胸を痛める事がある。
解毒の方法なんて分からず叫び出したくなった。
その度、青色の奴らが通り過ぎた高速道路で血を逆流させ、叫んで痛みを忘れようとした。
行け、始めろ、ここだ、全て、決して
抽象的な印象を膨張させて雨の中を躍り狂った。
通過した事のない様式を踏みつけて走った。
奴らの教えなんて知らなかったけれど、奴らの民謡の様な賛美歌が頭の奥の方にある電源のスイッチをまた入れた。
相変わらず何を言っているのかわからなかった。
そして奴らが何を叫んでいるのかわからなかったが、何故叫ぶのかは感じる事が出来た。
感情を的確に説明する言葉を持たず、分かり合うべく一瞬を表現する一種の術なのだろう。
医者にはストレスとコンプレックスと言われるだろうが。
同時に踊って高揚し、告白や懺悔をしたりして救いを求めていたのかもしれない。
例えば酒を飲む様に。
酔っ払って暴れ散らかすことに似ているのかもしれない。
今でもこの毒が胸を痛め、渇きを覚えさせる。
今では青色の奴らに見つからない様に、地下室で叫んでいる。
幽閉されていると言った方が近いのかもしれない。
「何馬鹿な事をしているんだ」
そんな昔聞いた褒め言葉はもう聞かないように扉を閉ざして。
いつか自分の光は全てを照らしていた。
いつしかその傲慢さを思い知り、岩の陰に隠れた。
岩と地の隙間、岩の亀裂、万年の影。
傲慢にも全てを照らしていたと思っていた自分に万物を発見した瞬間だった。
幾つもの鳥居をくぐり、時に化かされ、混乱した時にまたたまに聞きたくなる。
綺麗なものも汚いものも混ざり合った純粋な叫びを。
また奴らが胸の奥を叩いたら、鐘の音に祈りたくなる。
いつかの星や光に祈りたくなる。