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雨は降っていたけれど  作者: 和林
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プロローグ

「あぁ……雨だよ」


「もう梅雨の時期か」


「傘、ちゃんと二つずつ持って行ってよ」


「分かった」




「どう?」


「なんにも……覚えてない」


「そっか……」


「でも、雨が好きなのは分かるんでしょ?」


「そうだね……昔から、大好きだった」


「なんで雨なんだろう」


「よく走り回ってたよ。レインコート着て、大人用の長靴履きたいって言ってて」


「今じゃそんな事出来ない……子供って凄いね」


「さぁ、どうだろう……無邪気だけど」


「……雨って、いいよね」




「あ、ひっくり返った!」


「もう……だから二つ持って行きなさいって言ったでしょう」


「でもね、ママ……」


「うわっ!」


「ほらね? カエルも楽しいんだよ、雨の日だと」


「ママがカエル嫌いなの知っててイタズラしてるの?」


「まーね」


「さ、早く帰るわよ!」




「ママ?」


「……」


「ママ」


「……ん?」


「名前、教えて」


「ママの名前?」


「うん」


「……」


「ママ?」




「自分の性別は分かる?」


「え……男? 本当は女の子がいいけど」


「どうして?」


「男だと、髪型とか、服とか、限られちゃうから」


「……なるほどね」


「で、性別どっちなの?」


「一応、男性」


「なんだ……」


「まぁ、そうしょんぼりしないで」


「先生は、女性だもんね」


「うん。あのね、私は、あなたはきっと……」



「性同一性障害?」


「心は女の子だけど、体は男の子って事」


「あぁ、それが自分」


「多分、だけどね」


「確かに言われてみれば、そうかもしれない」


「私は、性別はどちらでもいいと思うんだけど」


「でも、先生の事、綺麗だと思うよ」


「えぇ?それは……どういう目線?」


「……恋愛対象?」




「あ、折れた」


「ほらね? 二つ持ってきてよかったでしょ」


「そうだね」


「雨足強くなってきたね」


「早めに帰ろうか」


「うん」


「……カエル」


「え?」


「カエルいた」


「捕まえようか?」


「え、やだやだ。私が嫌なの知ってるくせに」


「まぁ……ね」




「頭、痛い?」


「ちょっとだけ……」


「薬入れてもらおうか」


「……先生は、なんでカウンセラーになったの?」


「んー……昔、小学生の男の子が病院に運ばれてきた時があってね」


「それで?」


「お母さんと、二人で運ばれてきたんだけど、お母さんの方は、亡くなられて」


「お父さんは先に亡くなられてたの。もう一人女の子が運ばれてきたんだけど、その子はお母さんを助けようとしていたみたいで」


「……そうなんだ」


「男の子は、ずっとお母さんの事探してた……だから、その子のカウンセリングをしてて」


「……ずっと探してたの?」


「本当に、ずっと。私達が話しかけても、全く反応しないくらいに、錯乱状態だった」


「その子は、今どうしてるの?」


「分からない。けど、元気にしてくれてたらいいなって思うよ」


「……僕は」


「僕……ぼく?」




麗々(るる)、早くして」


「待ってよ……今日、雨降るっけ」


「雨降っても傘買えばいい」


「やだよ、お金勿体ない」


「そんなに迷ってたらバス行っちゃうから」


「うん……まぁ、なくてもいいか」



「ママー、水溜まり踏んじゃった」


「あらら……レインコート着てるからいいけど」


「ほんとに? じゃーカエル探そーっと」


「家に持って帰るのはナシよ」


「えーー……」


「ママ、病院に行かなくちゃいけないから」


「でもパパ帰って来ないよ」


「電話するから」


「僕のこと置いてくの!?」


「……ママは、お医者さんと大切なお話をしなくちゃいけないの」


「えー、そうなの?」


「とにかく、パパとお留守番してて」


「はーい」




「……え、雨だよ」


「ほら! だから傘いるって言ったのに」


「麗々が迷ってたからでしょ」


「どうしよう、傘買う?」


「タクシーで帰ってもいいけど」


「それはお金かかるから」


「はぁ……そんなに気にしなくてもいいのに」


「だめだよ、私が許さない」


「ふーん……」



「よく見たら穴空いてた」


「不良品じゃん」


「ま、晴れたからいいか」


「そうだね」

初めまして、海乃と申します。

まだまだ成長が必要な語彙力ですが、読んで頂けると大変嬉しいです。

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