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無気力系悪役令嬢入りまぁす  作者: ここなっつ
9/18

とりあえずそこに正座してください

王宮の廊下をコツコツとただただ無言で歩く。

王子と腕は組んでいるもののさっきからこちらを見ようとは

しない。まだ同じ14歳のはずなのに明らかに10センチくらい

の身長差はあるし、1番しんどいのは後ろから1mほどあけて

ついてくるし護衛2人。圧力が凄い、しかもゴリゴリのマッチョだ。さらに言わせてもらうと正直、ルシウス……彼はエスコートが下手くそだ、下手すぎる

私も前世ではそれなりに付き合いでドレスを着て高めのヒー

ルを履いて夜のレストランでディナーをしたこともあった。

ディナーをした相手はほとんど全員がきっと女に慣れていた

であろう。エスコートもそれなりにうまかった。

だがしかし、彼はまず第一に歩くのが速すぎる。

アリーによると今履いているヒールは高さ7センチだと言う

世の中の令嬢がパーティで履く平均的な高さだと。

男性もそれは知っているはずだ。もしかして彼は私に嫌がら

せをしているのか?そんなはずないと分かってはいてもどう

しても彼が分からない。

例えば私がエスコートされているときの基本的な速さをクラ

ッシック曲ぐらいゆっくりだとする、なら彼はあれだ。集団

行動で優勝するチームのような急ぎ足。いや少しは盛ったが

本当にそのくらいなのだ。

ヒールと慣れないドレスでこの速さ、もはや拷問といっても

過言ではない。

王宮の廊下はまだまだ長く続く、会場までどのくらいかは知

らないがパーティ自体が5時に開始され、今は4時だ。

私たちが主役なので来客者が出揃ってから入場すると事前に

母から聞いた。だからだいたい5時半会場入りだ

まだ時間はあるはずなのにこんなに急ぎ足で一体どこに行く

のか。さっきから我慢していたがどうしても我慢できなくな

ってしまった。

「殿下!」

急ぎ足のルシウスの腕を引っ張り強制的にブレーキをかける

騎士もビシッと止まり、殿下は急なことで体制を崩しそうに

なった。

「どうかしましたか、アイリス嬢」

にこっと爽やかな笑顔を向けられて眉を顰める

(この人自覚ないのか?)

いやいやそんなはずないと首を振る

「殿下、歩くの速いです」

ルシウスの瞳を見つめてキッパリとそう言い放った。

「え?」

ずっと笑顔だったルシウスは困惑した表情を浮かべた。

「だから歩くのが速いです。私さすがに足が痛いです」

「あ、す、すまない。女性のエスコートは初めてで……」

ないはずの耳がしょぼんと垂れているように見えてしまう

正直母性本能がくすぐられた。

「だとしても困ります!私と殿下では歩幅が違うのですから

殿方のようにそんなに速くは歩けません。」

「そうなのか…。」

「はい、女性の扱いをしっかり考えてください……貴方は」

それから私はガミガミとだだっ広い廊下の真ん中で護衛騎士

を連れ、殿下を正座させ1時間の説教。時間も忘れて女性へ

の扱いについてなど色んなことを熱く熱く語っていた。

護衛もアワアワして、周りで仕事していたメイドや執事、稽

古終わりの騎士までもが次第に集まってきていた。

「アイリス様流石に言い過ぎです!」

いつの間にか騒ぎを聞き付けて来たアリーに声をかけられて

ハッと我に返った。

「あ……!」

一気に顔から血の気が引いていくのがわかる。

やっちまったァァァ!!!!!!!!!!!!

「でででででんか!お立ち下さい!私ったら……殿下になん

てことを…………っ!」

慌ててルシウスの手を取り、立ち上がらせるが俯いたままの

彼からは表情が読み取れない。

「大丈夫。皆下がれ……仕事に戻りなさい」

さっきとは明らかに声色が違う。

(これ私もう処刑だわ。いくらなんでもやりすぎだわ………

私ももう今日でさよならか…。約1日間ありがとう、イケメ

ンと話させてくれてありがとう。)

「アイリス嬢……手を」

「……はい。」

明らかに私達の周りの空気は今からおめでたい婚約パーティ

を迎えるものには見えない。私はこれからどうやって殺され

るのか考えるだけで鳥肌が立った。

お話(説教)してから歩くのはゆっくりになったが、足取り

はとても重たい。

私はルシウスに連れられて王妃様自らお手入れしているとい

うバラ園にたどり着いた。バラを見ながら無言で歩く。

(私は一体何を言われるのか、はやくも処刑か婚約破棄か)

「……アイリス嬢」

「はっはい!」

立ち止まったルシウスをじっと見つめる

「さっきは本当にすまなかった…!……っうう」

うわーんと子供のように大号泣しだした彼に一瞬思考が止ま

った。私の頭にはこのひと影武者か何かかと馬鹿な考えすら

よぎる。

「で、殿下?」

パーティの準備で人がいないとはいえ、殿下が大号泣だ。

ゲームと違いすぎて頭がついて行かない。

「女性のことはよく分からないっ!怖い……うっ」

次から次へと弱音を吐き始める彼にハンカチをあげてうんう

んと相槌を打つので精一杯だった。

前世の私には兄弟とかいない一人っ子だったし、親戚に自分

より小さい子供はいなかった。こんな子供みたいなしかも王

子の慰め方なんてとてもじゃないけどわからない。

(ど、どうすれば……)

私は彼の頭を背伸びして撫でた。

「大丈夫です。殿下……貴方はとても立派なお方です。

さっきはあんなにきつく言って申し訳ありません。女性への

扱いは今から覚えていけば良いのですよ。」

説教したお前が何を言っているんだと思われるかもしれない

がヒロインと出会うまで悪い女に捕まらないためだ

ヒロインがいい女とは言えないが彼らにとってはそうなのだ

ろう。男はか弱い女に目がない。

私は早々に退場したいのだ。

「君は本当に……そんなに優しかったか?」

(うっ…………)

心臓がドキリと波打った。

私がこの世界で自身の意識を持ったのはアイリスが14歳だ。

ゲーム内の補足だと婚約パーティが行われる今日までで計3

回はあっている。

1度目は7歳のときの殿下と出会った王宮のティーパーティー

2度目は王宮にご招待された10歳、3度目は本格的に婚約者と

なるための手続きを始めた13歳。既に誕生日は来ているため

14歳だが手続きから今日まで約3ヶ月だ。

ちなみにこの婚約は親同士の関係の深さと、"アイリス"が深

く望んだ結果である。ヒロインにも悪質ないじめを主犯格で

行っていた彼女だ、そんな彼女に優しさなどあっただろうか

(まあ、なくても今から作ればいいのか)

今の私には目標がある。処刑を回避し、田舎へ移住してイケ

メンと家庭を築くのだ。

今日必死に考えた目標だ、叶える他ない。

「以前はどうだったか自分にはわかりませんが、今は貴方を

心から尊敬しております。貴方を手助け出来たらと日々努力

する毎日ですわ」

(……本当かどうかは分からないが多分それ相応の努力は悪

役令嬢と言えどしているはずだ。そう、綺麗になることとか

……とか…………ね。)

「良かったら私が貴方に女心というのを教えて差し上げまし

ょうか?私は貴方が良き王へとなるための踏み台と言っても

過言ではありません。貴方が良き伴侶を迎えれるように恐れ

ながら私がご教授致しましょうか?」

(お願い素直に頷いて〜!)

強気なことを言いながら心の中は大渋滞だ。

少し考えるようにして顎に手を当てる

「………アイリス嬢。是非よろしくお願いします」

ルシウスはえへへとあどけない笑顔で笑って見せた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] おそらく読み易くする為に行間を開けたくて、執筆中改行を多用しているのかと思います。しかしながら端末によってはより幅が短い画面の場合があり、その場合文が次行途中でプッツリと切れ、さらに一…
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