王都へいざ出陣。国の父母
そんなこんなで迎えの馬車も到着し、王都へいざ出陣
車よりは揺れるけど居心地は悪くない、むしろいいかも…
椅子も柔らかいし見た目も豪華な馬車だし。
向かいに座る父と母からの視線を感じて、外の景色に顔を逸
らす
緑が多くてネオンの光で溢れている日本とは大違いだ。
落ち着いた色と匂い、虫の鳴き声さえもが田舎の実家を思い
ださせた。10分も経つ頃にはヨーロッパみたいな街並みに変
わって違う世界だということを再認識させられた。
「見えたぞ。」
「わぁ……!」
教科書とか絵でしか見た事がない真っ白で綺麗なお城。
「陛下がお待ちです」
馬車を降りてすぐメイドさんに客室へ案内された
見た目も中も本当に宝石みたいにキラキラしてる
(ハンパねぇ……)
思わず見とれるほどに綺麗だった。
「陛下、公爵御一行をお連れ致しました。」
「入りなさい。」
父と同じくらい低い声に少し緊張する。
確か国王と王妃はまともなはず…けどゲームの立ち絵じゃ登
場しなかったんだから心配だぁー
ソワソワし出す心を抑え前を向く、扉が開かれ部屋へ入った
中へ入ってすぐ頭を垂れ、父が言葉を紡ぐ
「この度は……」
「よいよい。私達の仲だろう、堅苦しいのはやめよう
いつも通りで良いのだぞハヴィよ」
優しい声で次の言葉を止め、ふぉっふぉっふぉっと髭を触り
ながら言うおじいさん……彼こそがこの国の王様。
(そしてまさかの愛称呼び…)
「はい、陛下。ご無沙汰しておりますと言っても3日前です
が。」
「最近体の調子が悪うてなぁ。このわしも歳には叶わぬよ」
白くて長い髭と王様っぽい赤いマントみたいなやつ、何かに
似てる気がする。うーんと少し悩んですぐ思いついた
「サンタさんだ……っあ。」
今私声に出してたよね!やっちまったァァァ!!!
顔から冷や汗がふきでる
恐る恐る国王を見るとにこやかに微笑んでいた。
隣に座る王妃様もだ。
(こ、これが国の父と母……!)
威厳と大きな優しさを兼ね備えてる。流石だ
父からの視線を感じて恐る恐る口を開く
「国王陛下、王妃殿下謁見致します。」
「おうおう久しぶりじゃのお。近いうち我が娘になるのだか
ら父上と呼んでくれて構わんのじゃよ?」
(喋ってるだけで眩しい!!!)
「有り難きお言葉…」
一言喋る度に首に刃が向けられているみたいな緊張感
国語で習った言葉を駆使して話す。
知ってる言葉だけでも無理があるよおお。国語だけは苦手な
のよ……日本人なのに?そんなの私が一番分かってるわ!
「お掛けなされ。」
「失礼致します」
陛下から向かいのソファに座る動作でさえ怖い
転けたらどうしよう、そんなことを考えて下を見てしまう
「そろそろ王子も来る頃ですわ。」
「我が愚息が待たせて申し訳ないな」
「いいえ、とんでもありません」
1口紅茶をすする。ほんのりとお花みたいな匂いがした
(いい匂い。眠くなりそう……)
父は陛下と、母は王妃様と話していてとても暇である。
あまり長く座るとドレスも皺になりそうで怖い。
コンコンコンとノック音が響いた
(……遂に来たか!)
扉がゆっくり開いていく、そこをじっと見つめた
王子め、私が処刑なんて回避してやる。ドンと来い!
「ルシウス・シェイリアスただいま参りました」