お着替え致しましょ♡
「さあ、アイリス様。終わりましたよ」
時間をかけにかけ、やっとの事で完成したヘアスタイルは
高めのポニーテール。髪のあちらこちらに宝石のような白い
ビーズが散りばめられていて、凄く高そう…
綺麗な黒髪だし、顔には違和感すごいけどアジア人特有の黒
髪にはなんか愛着が湧いてくる。
顔は完全にヨーロッパだけど……
「すごい……凄く綺麗ですね」
そういうとアリーは驚いたように目をぱちくりさせた
「先程から気になっていましたがアイリス様何かありました
か?私など一介の召使いにそのような敬語は不要です。
あなたは公爵令嬢なのですからビシッとしていたらいいので
すよ!」
「と、特に何も無いわ。そうね、そうするわ」
心臓のバクバクを抑えてふふふと笑ってみせる。
「はい!ではドレスに着替えましょうか。今回のドレスは第
一王子直々に特注してアイリス様にプレゼントしてくださっ
たドレスなんです!耳飾りと首飾りなどの装飾品も第一王子の瞳の色に合わせた青色の宝石を使っているのですよ。」
ドレスについて話すアリーは凄くいきいきしている。
笑顔も可愛くて、優しそうで。私なんかがここにいて良いの
かな、なんてネガティブなことを考えてしまう。
(ダメよ凜香、今のあなたはアイリス。公爵令嬢、死ぬかも
しれない窮地に立たされているの。それに前世ではできなか
った事片っ端から試したら生きる意味も見つかるかもしれな
いでしょ。なんなら処刑回避出来たら恋愛も挑戦してみるの
も有りね、王子様なんてヒロインと結婚すればいいのよ)
それからドレスや装飾品はメイドさん5人で着付けられ、終
わる頃にはもう太陽が一番高く上がっていた。
(あ、朝ごはん食べないままお昼ぅ…さすがにお腹すいたっ
す。お腹の虫さん昨日からミルクレープおあずけくらってる
んです。)
空腹を感じながらメイドさん達に鏡の前に立たされる。
「わ……!」
凄く綺麗なドレスだった。
オフショルダーみたいな肩出しのドレスで背中はもうぱっか
ーんって開いてる。華奢で細いアイリスの体にはすっごく似
合ってる。ドレスの白いレースも黒い髪も対照的な色合いで
………切実に美人が羨ましい。
「アイリス様とてもお似合いですよ!」
「きっと世界中で一番お綺麗ですわ!!」
「えぇ、まるで女神様のようです!」
そしてこの溺愛ぶりだ。
気分が良くならないはずがない。もはや天狗レベルで鼻が伸
びているのを感じている。
「ふふふ、そうでしょ。素敵なドレス……」
こんないいドレスと装飾品用意してくれてるなんて意外と王
子はアイリスが好きなんじゃないの。
「ではではアイリス様。旦那様と奥様にお見せしに行きまし
ょう。その後は昼食をご一緒に食べて3時には迎えの馬車が
来ますよ。」
「……め、飯!」
「え?」
「あ…分かったわ。気にしないで早く行きましょ!」
「かしこまりました。」
危ない危ない、ヨダレ垂れそうだったわ。
私はアリーと共に部屋を出て扉の前の騎士たちを連れて広い
廊下を歩き始めた。