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エルフからの依頼ですわ。


 とりあえず、能力の件の事は一応の結論が出た。スタミナや魔力などの数値的な所は別として、スキルや魔法の様な異能の類は無くすことも、封じることも、増やすことも出来る。

 魔力や攻撃力などのその人自身の力は弱体化する事は一時的にという条件がつく。その為、例え私の能力を封じられたとしても、予め力や魔力などにスタミナの数値を振っておけば特に問題ないだろう。魔法やスキルが無くても物理で押し倒せるだけの力があるからだ。


 さて、問題はこれから聞くエルフからのクエスト依頼。


 長い年月で蓄えられた知識や魔法。スキルといったこの世界で生きる上で欠かせないそれらを網羅していると思われる彼らからのクエストが普通であるわけがない。ただ、普段エルフがこの島から出る事は殆どない為、ただの素材回収という線が無いわけではないが、依頼する人を選んでいる以上その可能性は低いだろう。


 うーん。正直気が重いわね。


 でも、逆にここで恩を売っておけば後々良いこともあるかもしれない。エルフの待つ知識はとても魅力的だし、良い関係を持てれば損ではないだろう。



「それで、どのような依頼なの?」

 

 普段通りを取り繕っているようだが少し警戒してミリアが尋ねる。


「ウフフ。ミリアさんあまり警戒しないで下さいな。私達は貴方方をどうこうしようとは思っていませんし、クエストも嫌ならお断り頂いで結構ですから。」


「ああ。う、うん。分かった。」


「それで、依頼なのですが実はカントナート山脈内にいるダークドラゴンを討伐して欲しいのです。」


「な、ダークドラゴン?!。」


「ええ。カントナート山脈は龍族のテリトリーですが今その中で争いの元になりそうな種火がダークドラゴンなのです。本来龍族達は互いを干渉せず、縄張りなども無く自由に生活しているのですが、それをダークドラゴンが支配しようと暗躍し始めているとの情報があります。」


「それって。。龍族達が一つの勢力としてまとまるという事なの?」


 ミリアが尋ねる。その隣にいるリリーネは顔が青いようだ。下を俯き小刻みに震えているようにも見える。


「ええ。私達の見立てでも同じ様な結論です。本来龍族は世界に対して不干渉です。エルフの知識ではドラゴン達は世界の監視者とも言われています。同種のドラゴンは一つの群れを形成しているでしょうが、龍族全体ではまとまっていません。それは纏まる必要が無いからです。しかしダークドラゴンはそれを纏め上げて、この世界の支配に乗り出すと目されています。なので、貴方達にそれを阻止して欲しいのです。」


「カントナート山脈ではそんな事になっているのか。」


 トロアはその火種がアレスへ向かうことを懸念しているようだ。ダリアも同様に。


「そんな悪いドラゴンいるんだ。ねぇ。お姉ちゃん、そんな悪いドラゴンはやっつけちゃおうよ。」


 ルーちゃんは乗り気の様だがリリーネは青い顔をしたままだ。ダンジョンから戻ってきた時からはめている腕輪を固く握りしめている。その様子は何か事情がある様だった。私はそのリリーネの様子が気になった。その小刻みに震える手に触れて視線を向けると、私の意図を察したのかリリーネが口を開く。


「あ、あの。討伐じゃないとまずいのかな?倒さないでお話し合いじゃだめなのかな?」


「…そうですね。恐らく話し合いは出来ないでしょう。そもそもドラゴンが人の言葉を聞くとは思えません。それに私達の言葉を聞いてくれる様なら討伐の依頼を出す事はありません。」


 そう言うジアードが一瞬見せた今までとは違う蔑む様な表情を私は見た。けれどそれはほんの一瞬の事で、皆には見えなかったようだ。”討伐”という言葉にリリーネも俯いてしまう。ミリアやトロアも思考は”討伐出来るか否か”になっているようで考え込んでいる。 


 まぁ、私はどちらでもいいですけど。倒すのは問題無いし、話し合いでも何とかなりそうな気がする。寧ろまだいったことのないカントナート山脈や龍族達に興味がある。一頭くらいペットに出来ないかしら。移動も楽になるし、とても便利そうよね。出来れば可愛い子がいいわね。ウフフ。


 皆の迷いや葛藤がわかるのか、一同を見回すとジアードは

「まぁ、もし倒せなくて大丈夫です。せめて今の山脈の詳しい現状が分かれば問題ないです。だから、出来れば討伐で無理なら情報収集してくださればいいのですがお受けして頂けませんか?」


 そのジアードの譲歩にミリアが乗る。もちろん私も。


「分かった。そういう事ならやらせてもらうよ。ククリナいいかな?」


「ええ。大丈夫ですわミリア。」



「ありがとうございます。それで報酬なのですが、生憎私どもはお金をあまり持たないので、装備や魔導書など物での提供になるのですが如何でしょうか?」


「うーん。そうだねぇ。皆んなどうする?」


 お金に関しては私のお小遣い貯金がまだまだあるので此方としても欲してはいない。装備も私やトロアとダリアは今ので充分だしリリーネにしても特に問題は無い。まぁミリアとルーちゃんは強化してもいいかもしれないわね。それにここで得られる物の中で1番貴重なのはやはりエルフの知識かしらね。 


 その事を皆に伝えてみるとやはり皆、同じ意見になった。

その為、報酬はその時に知りたい知識をおしえて貰う事にした。ただ、内容は帰ってくるまでに決める事にした。

 そうして受ける事に決まった今回の依頼について詳しく話を聞いた。


 もっとも重要とするのは龍族が世界を支配しようしているのかどうかを確認する事ね。龍族の力はやはり強大だ。個としての力が強いのは当然だがそれが群れとなるとその脅威は計り知れない。エルフからの依頼以前に世界に住う者にとって見過ごせない問題ね。私が気ままにのんびり過ごすためには世界が平和であることに越した事はないしね。

 私が求める自由までにはまだまだ障害がある事にげんなりしつつも、城にいるよりはと自分を慰めるしかない。


「じゃあ、とりあえず今日はここで休んで明日出発しよう。結構遠いしね。」


「あ、そうそう、皆様。カントナート山脈までは近くまで私どもの転移陣があるのでそちらをご利用下さい。アレス王国から少し北に行ったところのレナの泉という小さい泉があります。そこへ繋がっています。」


「え!そうなんだ。エルフって凄いね。」


 リリーネが思わず驚く。討伐でなくてもいいとの言葉で少し心を軽くしたようだった。やはり、リリーネはドラゴンと何かあったのかしら。


 カントナートへの道のりが楽になった事でより気持ちが軽くなった私達。ドラゴンへの脅威は私がいる事で皆はあまり心配していないようだ。けれどいくら私でも複数を相手にして皆を守り切るのは正直難しい気もする。やはり、慎重に行くべきであろう。


 部屋に戻った私は、皆にその事を伝える。


「皆さん、明日のカントナート山脈ではくれぐれも注意して下さいね。幾ら私でも複数になるとキツイかもしれませんわ。」


「そうですね。各自が慎重に行動した方がいいでしょう。相手はドラゴン。油断すべきではありませんね。」


 トロアが同意してくれた。その言葉に皆も気を引き締めているようだ。でもやはりこの旅で少しづつ力をつけて来ているため、其々がとても頼もしいわ。


 ある程度翌日の事が片付いた私達はここのエルフの宮殿内を散歩する事にした。


 

 散歩をしてみてここがエルフの宮殿であるとしみじみと感じた。正面入口のホールは白を基調としていて、無駄なものも無く程よく並べられた植物がアクセントになってエルフらしい品が滲み出ていたが、部屋が並ぶ廊下に出ると壁には幾つもの本が並んでいた。絵や調度品というような物は一切なく、壁を埋め尽くすかのように大量の本。それが知識のエルフ。と言われることがとても腑に落ちた。


「やっぱりエルフって凄いねー。」


「うんうん。沢山のご本だね。わたしも読みたい。」


 リリーネとルーちゃんが楽しそうに話す。


 二人が言うように私もこの本の量に知識の大切さを前世での経験とも併せてより一層思う。


 やはり情報は武器になるわね。まだこの世界には知らないことが沢山あるしここで、得られそうな情報や知識は確実に得た方がいいわね。

 そうやって宮殿を散歩した後は外の庭に出てみる事にした。


 外は薬草やハーブ、野菜など沢山の植物がある以外は特に変わった事はなかった。しかし、裏に回ってみると植物や木々がより濃くなっていた。今までの村同様に秘密の出口や何かを隠しているかのようにも思えた。ただ、それらの植物も人の背丈以上の高さがあるため、その中に何があるのかを確認することは出来ない。エルフが秘匿する何か。それはとても魅力的だわ。

 ここの里に来るまでも道は限られて横道に逸れることも出来なかった。そのため、この島自体に何があるのか全くわからない。わからない事だらけだ。空を飛ぶことも出来ない。無作為に森を歩く事も出来ない。まるで何かを見せないようにしている。そんな憶測さえ浮かんでくる。ここは一体どういう所なのだろう。少しワクワクするわね。いつか探検してみたいものね。


 ルーちゃんも私と同じのようで、爛々とした目で裏の植物や木々を見ている。リリーネは目の前に植物に夢中のようでその先には気が回っていなさそうだ。トロアは、、うん。興味ないね。あ、ミリアも。ダリアはハーブを物色している。皆んな楽しそうね。


 うーん。この平和な感じやっぱりいいわね。いつまでもこうでありたいわ。 


 ま、とにかく明日はドラゴンが住うカントナート山脈だゆっくり休んで明日に備える事にしよう。







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