エルフ領ガイランですって。
「さて、ククリナ。レイナちゃんはこれからどうするの?」
「もちろん連れて行きますわよ。」
「ああ。そう。分かった。」
ミリアももう慣れたようで、それ以上は問わない。
「レイナちゃん、本当に大丈夫なの?この後どんな危険があるか分からないよ。」
リリーネが心配そうに尋ねる。でも、レイナの答えも聞かずとも分かる。
「ええ。リリーネさん大丈夫です。こう見えて私も強いのですよ。お姉様には敵いませんが。」
そう言いレイナは私に目を向ける。その目は「お姉様守ってね。」と言っているようだ。でも、あの火の精霊もいるし大丈夫でしょう。
「ウフフ。リリーネ大丈夫ですわ。わたしがいますもの。」
「あ、そうですね。エヘヘ。」
ダリアとトロアは何も言わない。こうなったらきかないのを知っているからだ。
これで、レイナの方向性は一応は決まった。一人ルルルだけは頬を膨らましてるが、まぁそのうち仲良くなれるでしょう。
「じゃあ、決まりだね。それで、このあとはどうする?」
「そうね。このまま進みましょう。」
私はそう言いながら皆を見回す。特に異論はないようで、其々頷いて答えてくれた。
このまま続行を決めた私達は、村長に別れの挨拶をし先に進む為村の裏口にある門から外に出た。
次はどんな村だろう。皆で想像を膨らませながら次を目指す。道すがらで例の不思議ダンジョンの話題になる。
「ところで皆さんは例のダンジョンで何がありましたか?」
私の問いに皆口籠る。知られたくない過去や、出来事の為口が重い。
「そうねぇ。あたしはスキルを得ることが出来たんだけど、それは後でのお楽しみにしたいなぁ。」
「わ、わたしもアイテムを入手しました。でも、ミリアと一緒で内緒ということにしたいなぁ。」
他の皆は2人の言葉で様子を伺っている。
やはり皆其々恥ずかしい過去や、言いにくい出来事があったのだろうと伺える。それを無理強いする事はできないわね。
「そうね。あのダンジョンは心の奥底に眠る何かを映し出したような感じでしたものね。そういう私もちょっと恥ずかしいわね。なら、其々皆後のお楽しみという事でよろしいかしらね。」
「「うん!」」
そもそも私の前世の事なんて絶対話せないものね。レイナもいるし。。あの子は自覚してるのかしら。聞きたいけど、怖くて聞けない。
そうこうしているうちに次の村らしきものが見えた。ただ今までのと違って、木の門ではなく城壁と言ったほうがしっくりくる作りの門だった。
「なんか今度の村はなんか違うね。村というより砦みたい。」
「ほんと。なんか物々しいね。」
「うん。わたし、こんなの見たことない。」
ミリアの言葉にリリーネとルルルが上を見上げる。重厚な作りで高く積み上げられた石造りの門に圧倒されているようだ。その石もただの石ではなく、なにかの特殊な鉱石を含んでいるようだった。試しにトロアが剣で突いてみるも傷一つ付かない。
「かなり固いですね。」
それに、門の向こう側からは大きな魔力を感じる。それに門の外に衛兵も居ない。
これからが本番といったところかしら。
こうしていても意味がないので、ミリアが門に向かって声をかける。
「すみませーん。」
すると門は静かに開いた。
中から出てきたのは、牛の獣人。ミノタウルスだった。
3メートルはあるだろう巨体に鋭い角。人の胴体くらいの太さの腕。内に秘めたる魔力も今までの獣人とはまるで違う。
「あ、あの。こんにちは。」
おずおずとミリアが挨拶をする。
「なんだお前たちは。まさか、エルフの里を目指しているのか?」
「あ、うん。そうだよ。」
「ふん!お前達のようなひ弱な人間がエルフに会いたいなど無謀な。命が惜しいなら帰れ!」
「別にひ弱くはないよ。ここまで辿りつけたし。」
「ああ!ここまでの半端者の獣人達と一緒にするな!この小童が!」
そういうとそのミノタウルスはいきなりミリアを殴りつけてきた。
その間にトロアが割って入ってミリアを守る。
「いきなり何をする!」
「ふん!たった一撃防いだだけで調子に乗るな!」
そういうとミノタウルスは腰に下げた大剣を握る。
「うるさいハエは死ねばいい!」
そういうと同時に剣を振り下ろしてくる。
それをトロアが剣を抜いて防ぐ。しかし、その一撃は重く鍛錬してチカラを強めたトロアでも辛うじて防いだくらいに強い。
「ほう。少しは力があるようだな。なら、少し力を加えてみようか。」
そう言いミノタウルスは力を込めて振りそうとすると、後ろから違うミノタウルスが声をかけてきた。
「待て!クザン。」
「ん??誰だ邪魔する…」
クザンと呼ばれたミノタウルスが後ろを振り返ると、クザンとは違う赤い体をしたミノタウルスが立っていた。
「あ!ロバルート様。」
そういうと、すぐさま跪くクザン。
「何を騒いでいるんだクザン。」
「ははっ。ロバルート様。人間がエルフの里を目指す為来たので力を試していた所です。」
それを聞き、ロバルートと呼ばれた赤いミノタウルスが前にでる。
「ほほう。貴様らエルフに里へ行きたいのか。」
「あ、うん。そうだよ。てか、あんた誰?村長?」
「ああ。私はロバルート。ここエルフ領ガイラン。第一の門の守護を預かるミノタウルス警備団、団長だ。」
「え?エルフ領?ここって国なの?」
「あ?そうだ。人間領では里だと思われているようだが、ここは魔法国家のエルフ領ガイランだ。この島に住う全ての獣人はエルフに仕える護衛部隊だ。」
「なっ。」
どうやらエルフは国を築き、島全てを支配しているようだ。人間領ではひっそりと暮らしている印象が主流なのだがそうでは無いようだ。全ての獣人を従え守らせている。それらを戦力と考えると魔族領に匹敵するだろう。ただこの島に住む獣人を全て把握している訳ではない為、下手をすると魔族領を凌駕する可能性もある。その為もしそれらが人間の敵となるとその脅威は計り知れないものになる。
ミリアもギルド長の娘として、そうした各領土ごとの脅威はそれなりに押さえていた。その為、この未知の戦力の危険性を瞬時に悟る。
「そ、そうなの。それで、エルフに会う為にはどうすればいいの?」
「ああ。そういえば会う為にはここに来たんだったな。エルフの許可さえ有れば会う事は出来る。もし、許可なく会いたいなら、其々の門を突破して行かなければならない。まぁそんな事は絶対に無理だが。守護門はここの他にもあるし、そうなるとエルフ領への戦線布告となるだろう。そうなれば、まぁ戦争だな。我々からすればその方がありがたいのだが。どうなんだ?人間!」
「えっ!戦争??いやいや、そんなつもりは毛頭ないよ。」
「なら帰れ!エルフが人間に会う事はない!」
「ええ!そんなちょっと待ってよ。せっかくここまで来たのに。今皆で話し合うから少し待って!」
「ああ?そんな暇は無い。許可を得ていないならさっさと帰れ!」
「そんなーー。」
「あらあら困りましたわね。」
この赤いミノタウルスが団長なら私だけでも突破は出来るけど、戦争となるとちょっとそうはいかないわね。どうしましょう。
皆で無い時間の中それぞれが考えていると、どこからか声がする。
(ロバルート待ちなさい。折角久しぶりに人間が来たのです。そのままお通しして下さい。)
「なっ!ジアード様!こやつらを通すのですか?」
(ロバルート。私に2回も同じ事を言わせるつもりですか?)
「い、いえ!わかりました。直ぐに通して、中の書記官に其方へ通すよう案内致します!」
今の誰?もしかしてエルフ??皆の頭の中に同じ疑問が浮かぶ。
「き、貴様ら。ジアード様がお会いになるそうだ。こちらに来い。」
どうやら会えるようだ。しかし、何だか嫌な予感がする。ジアードと呼ばれた者の声や言葉は物腰は柔らかい気がするが、その響きの奥に嫌な物を感じる。それは皆も同じのようで、ルルルはあからさまに嫌な顔をしている。
だが、なら尚更行かなければならない気がする。何かあればわたしが本気を出して守れば良い。そう覚悟を決めてロバルートの案内で中に入る。




