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不思議ダンジョン(トロア編)

 

 トロアが転移で辿り着いた場所は地中にある洞窟というよりはもっと綺麗な所だった。

 壁、床、天井、全て四角い白い石を敷き詰めて作られていた。

目の前には扉があり、それ以外は何も無い。


「なんだここは?」


 トロアは辺りを見渡す。石の壁が有るだけだ、その中はとても良い明るく、灯りがある上に白い石の為余計に明るく感じた。

 慎重に壁や床などを調べるも特にワナも無ければ隠し通路のような物も見当たらなかった。


「ふむ。やはりこちらしかないか。」


 そう言うとその扉に手をかけた。


 キィ。と扉を開けてみると、左右に道が広がっていた。


「んー。どちらにしよう?」


 顔を左、右と見てみるも特に特徴は無く先見えない為どちらが正解なのか全く分からない。


 トロアは「仕方ない。」ととりあえず、左に行ってみることにした。進んで行くと道は突き当たり右に曲がる道があった、そのまま道なりに進んでいく。すると奥からスライムが数体出てきた。


「なんだスライムか。」


最下級モンスターな為、何も苦労する事なく倒し先に進む。

すると次は狼のモンスター、が出てきた。


先程のスライムよりは強い魔物だが、特に問題はない。

トロアは手応えが無い敵ばかりでつまらなそうだ。


「こんな物なのか。」


 その後もひたすら進んで行く。

右に曲ってからここまでは一本道で分かれ道も無ければ曲ったりも無い。

 あまりに長く続く道にトロアも異変に気付く。


「なんかおかしいな。流石に長すぎる。でももう少し行けば何かあるのか?」

 

 おかしいと思いながらももう少し進んでみる事にした。

そして、またモンスターが現れた。今度はゴーレムだった。

石で出来たゴーレムは剣で相手をするには硬く、トロアも手こずる。


「くっ。やはり硬いな。」


 フンッ!


思い切り切りつけるもやはり、弾かれてしまう。


「ぬぅ。ククリナ様のようなハンマーが有ればいいのだが」


 剣ではどうしてもダメージを与えられないため、距離を取るトロア。


 ふとトロアは思い付く。殴れば良いと。先日の鍛錬でトロアはスピードと共に力も強化していた。スピードは勝負の場で試したので今の自分の力を把握していたが、パワーはまだだった。


「よし。」


 一呼吸気合を入れて、殴りかかる。


「ふんっ!!」


 正面から真っ直ぐに正拳突きを繰り出すトロア。


 ボコッ! 鈍い音と共にトロアの拳はゴーレムの腹の辺りを撃ち抜いた。


 自分の攻撃が通る事を確認したトロアはそのまま畳み掛ける。パンチにキックと連続で攻撃をしかけゴーレムはあっという間に崩れた。


「おお。これは。」


 思っていた以上の力の増強に嬉しさが込み上げてくる。

この旅が始まって、規格外の強さを手に入れたククリナの側では活躍の場は全くなく、騎士としてこのままでいいのかと

思い悩んでいた。

 この間の鍛錬により、城にいた時以上の能力を手に入れた事がトロアにとってなにより大きい。


 ゴーレムを倒したトロアは先に進む。その足取りは先ほどよりも軽い。

 その後特にモンスターや罠の類などなく相変わらず真っ直ぐに進む。今度は左に曲ったり、右に曲がったりと一本道でではあったがダンジョンを回っている気分にようやくなれた気がした。そして、曲がった先に上へ上がる階段が出てきた。


「今度は上か。どうやら道は合っていたようだな。」


 もしかしたら、ここは塔なのか?と思いながら階段を登っていく、そして最上段につくと目の前には薄い膜が貼られたような物がある。「ん?なんだこれは。」手を触れてみるも特に抵抗もなくその膜の向こう側に手を出せる。警戒しながらそこを通ってみると、今度は白の壁ではなくジメジメとした薄暗い洞窟のような所にでた。

 下に下がるならともかく、上に上がってのこの様変わりに違和感を感じる。


 そして見渡すとそこには鉄の棒で囲まれた部屋がいくつかある部屋だった。「ん?」一瞬混乱したが直ぐに思い出す。

 そこは牢獄のような所だった。いや、そうなのだろう。捕らえられている者は居ないが、鎖がつけられた足枷がその部屋の中にあった。


「牢獄??なぜこんな所に、いやそれよりもここは見覚えがあるぞ。」


 膜を出た正面を見ると木でできた扉がある。扉は四角ではなく上部が丸くなっている。そして。その扉の上にある壁にアレスの紋章が刻まれていた。


「ア、アレス城だと??」


 トロアは驚愕に目を見張る。


「な、馬鹿な!」そう思いつつ扉を開けてみる。するとそこは慣れ親しんだ騎士団室入り口のある廊下だった。トロアの開けた扉の隣に騎士団室がある。その風景はこの城に来て騎士になってから毎日見てきた物だ間違える筈がない。


「………」


無言で固まるトロア。さっきまでエルフの里を目指して皆と悪戦苦闘していた筈が、アレスの地下を回っていた事を思うと信じられないのは無理もない。さらにトロアが現実を知る。


「あートロアー。もーー今までどこ行ってたのよー。」


 後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。トロアが振り返るとそこには、クラリーナの妹レイナがいた。


「あ、あ、レ、レイナ姫。。」

 頭が追いつかないトロア。


「何その顔??もー。それより、クラリーナお姉様はどこ??わたしを置いて出て行っちゃうなんて。もーわたしも連れて行って欲しかったのに!」


「クラリーナ様はまだお帰りになってません。」


「貴方しか居ないんだもん。そのくらい分かるわよ。ふん」


 少しずつ考えをまとめる。「恐らく、あの転移でこの城の地下にきた。そして。登ってきた。でも何故ここなのだ?ん、そういえば、最初の道は二方向だった。もしや、あの先に何かあるのか?ならば、いつまでもここに居て、王や王妃に見つかってはまずい。」そう一人ブツブツ言うトロア。


「もー、さっきからなにをブツブツ言ってるのよ!」


 そうなると、レイナ様このままにしても良いのだろうか。

見られてしまった。でも、連れていくわけには…


「レイナ姫、私は忘れものをしてしまったのでそれを取りに来たのです。ですので、また直ぐに行かなくては成りません。」


「あらそうなの。じゃあ、この後直ぐお姉様の元へ行くのね。」


「はい。直ぐに参ります。」


「そう。わかった。じゃあ気をつけてね。くれぐれもお姉様を守ってね!約束して出来る?」


「はい!もちろんです。お任せください!」


「じゃあ、ちゃんと約束して!」


 そういうと小指を立ててトロアに向ける。仕方なくトロアは指切りをした。


「よし!じゃあ気を付けてね!」


「はっ!ではこれで失礼します。」


 そうトロアは別れを告げて、先程の階段に急いで向かう。

階段の出入り口にあった膜は幻術か何かのようで、牢屋では壁にしか見えなかった。ただでさえ、出入りがほとんどない牢屋の壁なんてそうそう近づかない。しかもその入り口は人が一人倒れるかどうかの狭い空間だ。あえて牢屋と壁に挟まれたいと思う物好きはいないだろう。


「きっとあの先に何かある!」


 そう言うと、トロアはスピードを上げる。鍛錬で鍛えたスピードは伊達ではない。あっという間に最初に出た扉の所にきた。一応扉を開けてみるも転移陣などは無く、ただの何も無い部屋だった。それを確認した後。最初とは別の方向に進む。


 同じく途中何度か曲がり角はあるものの一歩道であった。特にモンスターは出ず。罠などの仕掛けも無かった。


 まぁ、城の地下なのだからモンスターが待ち構えているわけがないが、最初のモンスターはおそらく牢屋からの負のエネルギーから自然発生したものと推測できた。

 


 そうして辿り着いた所は壁だった。つまり行き止まりだ。


「なっ!」


 トロアはそんな訳がないと壁に近づくもやはり壁だった。

膝から崩れ落ちるトロア。「もう訳が分からない。」愕然とする。床を叩き、項垂れる。もうこうなったらこの壁を壊してやる。そう思い立ち上がる。そう、きっとこの壁の向こうに何かあるに違いない。もうトロアはそう思うしか無かった。渾身の力で壊してやると右手を振りかぶる。そして拳を打ち付ける寸前、「おいおいちと待ちなさい。」と言う声が出て聞こえた。


 トロアの拳はその声で壁に当たる前に止まった。


「誰だ!」


「まったく。無茶をするでない。」


その声と共に壁から一人の老人が浮かび上がってきた。


「お前は誰だ!」


 トロアは拳に力を込め構えた状態で問う。


「ワシはこのアレス、初代王じゃ。」


「初代王だと?」


「そうじゃ。まぁ、信じられんだろうが。」


「いや、信じよう。その頭の上にある王冠はアレスの物だ。それに、ここまでの経緯でこのような事が起こるのならば、そうである方が自然かもしれぬ。」


「そりゃあ話しが早くて助かる。」


「それでアレス王よ。貴方は未だ生きているのですか?それにこの先に何があるのでしょうか?」


「いいや、今のこの姿はこの場所にワシがかけた術の幻影じゃ。そして。この先にはこの国を守るための力がある。それを守るための術がワシと言う訳じゃ。」


「そうなのですね。しかし、力とはどう言うことでしょうか?」


「ふむ。この国及びこの世界が危うくなった時に必要な物じゃ。しかし、この先に行けるのはユウノジに相応しい者しか入れん。其方にはまだ無理じゃ。」


「ユウノジに相応しいとはなんでしょうか?」


「ユウノジはユウノジじゃ。その意味も含めて其方には未だ早いし、そもそも、その資格を得る事が出来ないかなもしれぬ。」


 国を守るための力がそこに有ると聞いて狼狽るトロア。アレス王が言うように、自分自身そんな資格があるとは到底思えない。先ほどまで、姫の騎士としてさえ資格が無いのではと思っていたぐらいだ。国なんてことが大きすぎる。


「しかし、今の其方のように自分をよく知り、認める所は潔く認める。そして、その後諦めるのでは無く追い求める。その気概は其方の美点じゃ。故に変わらず精進するが良い。さすれば道が開かれるかもしれぬ。よいな。」


「はっ!!」


「では、ワシが元の場所へ戻してやろう。」


そう言うとアレス王は転移陣を発動させる。

 その時トロアに触れる手があった。思わず振り返ると、レイナ姫がいた。


「なっ!何故ここに?」


「ウフフ。わたしもお姉様と旅をしたいのです。だからついていきます。」


「えっ!!!」


 転移陣が発動し、トロアは驚きのまま元の鳥獣人の村へ戻っていった。レイナ姫と共に。




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