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不思議ダンジョン(ダリア編)


 転移された部屋から出るダリア


 そこは先程いた部屋のような岩で囲まれた空間ではなく、

薄暗いどこかの路地裏のような所に出た。


「えっ!」


 戸惑うダリア。今きた扉を振り返るもそこにはもう扉が無かった。今の現状を把握しようと辺りを見回す。どこか見たことのあるような感覚も持ちつつ、路地から通りへ出てみることにした。


 通りに出てみたが人気もなく、並び立つ建物も所々壁は崩れていたり、窓が割れていたりと人が住んでいるような雰囲気はない。しかし、ダリアは確かに見覚えがある風景だった。それを「気のせいよ」と強く否定したい気持ちにかられる。

 少し通りを進むと一軒だけ灯りが付いている家があった。心では引き返したいが体はいう事を聞かず、まるで吸い込まれるようにその家に近づいていく。そんなに距離はない為自分の気持ちとは裏腹に簡単にその家の前まできた。


 だんだんと蘇る記憶を確かめるかのようにその家を覗き込むと、否定したかった事実がそこにあった。


 その家の中でナイフを何本も研ぐ少女の姿があった。


「なっ。う、うそよ。こんな…」


 ずっと前に消し去ったダリアの過去の記憶。城に入る前のダリアの姿が今目の前にある事実に嫌でも混乱する。


「いったいなんなのよ。これ。」


ここはクロードのとある街。ダリアはクロードで暗殺の仕事を幼い頃からやらされていたのである。両親に捨てられ、拾った育ての親がクロードの構成員だったのだ。

 物心ついた時からナイフの使い方を教えられ、幼子の姿で油断させ著名な貴族や町長など、クロードにとって邪魔な存在を暗殺させられていた。ダリアにとっては、それが日常で気が付いたら行っていた事なので、それが良いことなのか駄目なことなのかは疑問に思うことがなかった。


 ダリアが9歳の時サマリア王国に仕事で連れて行かれたことがあった。宿を取り、決行は夜のため日中は自由となった。

 いつもなら、武器の準備などをして過ごすのだがその時は既に準備は終えていたので、手持ち無沙汰となった。

 そのため、その日は町を散歩することにした。


 町を歩いていると、ピンクで沢山のヒラヒラがついたとても豪華な衣装で通りを走り回っている幼女を見かけた。とてもキレイな顔立ちに太陽の光でキラキラとした金色の髪の毛にダリアは目を奪われた。その少女の後ろからは腰に剣を刺した衛兵のような男たちに追いかけられていた。


「面白そう。」


 そう思いダリアもその後を追いかけた。まだ5歳くらなのになかなか捕まらな少女。


「凄いな。うちに来たら良い人材になりそう。」


 そう思うダリア。周りは大人ばかりで子供が9歳の自分だけの彼女は話し相手が欲しかった。その為、その少女と話してみたくなった。もし、出来れば連れて帰りたいとさえ思っていた。

 ダリアは先回りをして、少女の前に出た。

「こっち、こっちなら隠れられるよ。」


「あら、ありがとう。」


 少女はダリアのそんな呼びかけに素直に応じてくれた。


「さっきから走り回ってどうしたの?何か悪い事でもしたの?


「ウフフ。いいえ。そうではありませんわ。」


 不適に笑うその少女に余計に興味をもった。


「じゃあ、なに?教えて。」


「いえいえ、大したことではありませんわ。ただ体力をつける為に走っていただけですわ。」


「ん?体力?なんで?」


「ええ。体力ですわ。私、もう少し大きくなったら冒険者になる為、お城を出る為に体力を付けておりますの。」


「え?ん?お城??」


 そう言われてまじまじと見てみると。なるほどこの子はお姫様なんだと負に落ちた。


「なんでお城でちゃうのさ。お城に居ればご飯に困らないし。良い洋服は着れるし、雨漏りしないし。もったいないよ。」


 少女は優雅に微笑む。


「確かにそうかもしれませんわね。」


「そうだよ。そのまま居た方がいいよ。」


「いいえ。私は外に出ますわ。お城は退屈なの。とっても退屈なのです。外に出て自由に気ままに生きていきたいのです。」


 そう言う少女の顔は姫という肩書とは違う高貴で目の奥にはとっても固い意志を感じた。自分よりも幼く、小さいのにまるでたった一人でも生き抜いていく。という力強さがあった。周りに流されるままで、言われた事だけをやっている自分が凄く惨めになった。それと同時に自分のやりたい事を考えた。


    私は何がしたいのかなぁ。


 ダリアは今までそんな事を考えた事がなかった。今は何にも思い浮かばないが、何故か心はワクワクしていた。


「まったく!クラリーナ様。こんな所にいらしたのですか。」


 突然男の声が後からした。見上げるとマントを来た騎士が立っていた。歳は自分と変わらないからか、それより下くらいの騎士というには幼い男の子だった。


「あらトロア。もう追いついてしまいましたの。ウフフ。」


「クラリーナ様、ウフフではありません。ここは自分の国ではないのです。無闇に出歩かないで下さい。」


「あらそう。もう。仕方ないわね。折角この町の女の子と話していたのに。」


 ダリアはそんなトロアと呼ばれた騎士とクラリーナと呼ばれたお姫様の会話をポカンとして見ていた。

 その二人のやり取りに見惚れていたのだ。二人の何気ない会話に切れない絆がある事が分かったからだ。


「あ、すみません。そちらの君も突然すまなかった。」

 律儀にも頭を下げるトロア。



「あ、いえ、私は大丈夫です。クラリーナ様というのですね。」


「はい。そうですわ。あ、名乗るのを忘れてましたわ。ごめんなさい。」


「いえ、とんでもありません。私はダリアと言います。」


「ダリアね。よろしくね。あ、でも私トロアが来てしまいましたので、もう戻らなければなりません。もし、良ければ後で時間がある時にでもお城に来て貰えればお茶でもご馳走いたしますよ。」


「ちょっ。姫様。」


「いいじゃないのトロア。私達はお友達になったのです。」


 言い出したら聞かない事を知っているトロアは頭を掻き毟る。


 もう何も言わないようだ。


 ダリアは目を丸くしている。


     私が姫と友達??


 今までの人生の中になかった言葉にダリアは胸を満たされる想いがした。


そして、自分が今までしてきた事が恥ずかしくなった。


そしたら涙がこみ上げてきた。そんなダリアを見て


「あらあら、ダリアさんどうなさいましたの?」


そう言うとクラリーナはハンカチを差し出す。


涙が止まらず、しまいにはそこに座り込んでしまった。


クラリーナは何も言わず小さい体でダリアを抱きしめる。

「良ければお話になって。私で良ければ聞きますわよ。」


 そうしてダリアは今までの自分の事を話した。クロードの事もクロードで行っていた事も全部…………


「うーん。トロアどう思って?」


「どうも何も、やってはいけない事でしょう。」


「もう!違うわよ。貴方私より年上なのに何もわからないのね。」


「なっ!!」


「ダリアさんはね。物心ついた時からそういう環境にいたの。比べる環境もないからそれが駄目な事だと教えてくれる人も居なかったの。それがどういう事かわからないの?」


「まぁ、確かに。そうですが。でも。」


「トロアが言う事も分かります。確かに暗殺は人としてやってはいけない事です。それと同時にダリアも被害者です。わたしはこのダリアを救って差し上げたいです。」


「えっ!!!姫様何を…」



「ではこうしましょう。ダリア、貴方はわたしが買い取ります。そして、私の側仕えとして働きなさい。」


 思わぬ言葉に言葉を失うことはダリア。


「もーー。クラリーナ様はー。」


クラリーナは言い出したら聞かないそれはトロアも知ってる


「分かりました。ダリア。クロードに話を付けます。案内してください。」


 そうして、トロアと同行して王国に来ていた騎士団長とでクロードに話を付けダリアを買い取った。


 それからダリアはクラリーナの側仕えとなった。


アレスに戻って初めてクラリーナに仕える時


「ダリア、貴方は私の側仕えとなりました。過去は関係ありません。貴方の人生はこれからです。私と共に精一杯生きてください。私が城を出るその時まで私に尽くしなさい。それが貴方へ与える罰でもあります。私が出た後は貴方の生きたいように生きなさい。貴方もその時から自由よ。ウフフ。」


 ダリアはクラリーナによって救われた。


真っ暗な世界でしか生きられないと思い。それが当たり前と思っていた。しかし、そんな暗闇から引きづり出してくれたクラリーナ。ダリアは一生をクラリーナに捧げる事を誓った。だから、クラリーナが外に出たとき守れるように体術も学び、魔法も覚えた。


 その時の気持ちを忘れた事はない。


 ふと意識が戻るとそこは岩に囲まれた空間に戻っていた。


「今のはいったい何?」


 そして、そう思っている所に突然頭上が光り出した。

警戒をして一歩下がる。


 そして、その光から一冊の本が降りてくる。


自分の目線の高さに来ると本は空中で止まった。

恐る恐る手にとってみる。すると、頭の中に声が響く。


「汝に賢者の知恵を与える。主人を正しく導きなさい。」


 そういうとその本はダリアの中に吸い込まれていく。

 再び頭の中に言葉が浮かぶ。「賢者の本」と。


「賢者の本?何それ?」


問いかけるも何も応答がない。ただ、その本からはとても大きな力を感じられた。


 きっと何処かでクラリーナの助けになる事は確信できた。


「クラリーナ様、私は貴方共に。」


そう新たに誓うダリア。


 次第に視界が真っ白になっていく。ここに来た時と同じような転移の感覚が分かった。



 


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