其々の道へ向けて
その日は折角だから、村の中を見て回った。
木々の上で生活をするというのはとても珍しく、好奇心旺盛なリリーネとルルルにはたまらない光景だ。
今までの二つの村とは違い、獣人達も奇異な目で私達を見ることはなくどちらかというと友好的とも思えた。木から木へ張り巡らされた道はまるで遊具のようにも見え、落ちる事に気を付ければ子ども達の格好の遊び場となる。ルルルとリリーネも例外ではない。村の子供達に負けないくらいはしゃいで追いかけっこをしている。
私はその様子をいつものように椅子に座ってお茶を飲みながら眺めている。その場所は外から来た私達に与えられた宿舎で、中の作りは村長の家とおんなじだ。
トロアとミリアはこの間の鍛錬をしてから二人でよく話すようになったみたいね。気づくと二人で居ることが多い気がする。
トロアは基本私の側にいるのだが、こうして皆と一緒にいる時などはすぐ側にいる必要がない。
(もしかして、今後あるかも。)
そう思う私は静かに見守る事にした。
そんな皆んなの様子を眺めた後下を見てみる。あまり気にしていなかったが、下はどうなっているんだろう?そもそも下に降りる事はあるのかな?そんな疑問を抱きつつダリアと下の様子を伺う事にした。
「下は何があるのかしら?ダンジョンと仰ってましたが…」
私の問いかけで、ダリアも下を覗き込む。
「んー。入り口がどこにあるのかは分かりませんが、下には畑があるようですよ。ほら、あそこ。」
ダリアが指を刺した先には。規則正しく盛られた土がありその土から野菜の葉らしきものが覗いているのがわかる。
「あら。本当ね。てっきり鳥だから虫などを食べるのかと思いましたわ。」
そんな会話をしていると、隣の家に住む鳥獣人が声をかけてきた。
「ふふふ。そうね。虫も食べますが、野菜や肉なども食べますよ。鳥の姿は持ってますが、人型も持ちますからね。」
「そうですわよね。体の大きさも違いますしね。」
「はい。それに、ここでは空を飛んで食料を取りに行くこともできないので、こうして自分達で育てているんです。」
この島にある特殊な術による空での阻害はここに住む者達にも当然ように影響してるようだ。侵入者を外に逃がさないという意味合いの他にも違う理由があるように気がしてならない。何故そんな不自由な所に鳥獣人達はいるのだろう。
まるで羽をもがれたようではないか。
多くの種類の亜人が住む島そこには大きな争いは無く平和に見える。果たしてそれが真実なのだろうか?気軽な気持ちでやってきた場所だが、それでは済まないとこれらの光景が物語っているようね。
充分に気をつけなきゃね。
そうやって久しぶりにのんびり過ごして次の日を迎える。
朝、村長グネの家の前に集合した。不思議ダンジョンに突入するためだ。
「おはようございます。皆様お揃いですね。」
「ええ。準備も済んでいますわ。」
「うん!ばっちりだよ。」
珍しくルルルも前に出てくる。余程不思議ダンジョンを楽しみにしているようだ。
「よかろう。ではご案内しますので、こちらへどうぞ。」
そういって案内された場所は、村長の家のすぐ下の木の幹の前だった。
そこに小さい紋章が彫ってあり、村長がそこに手をかざすとただの木の幹に扉が浮かび上がった。そして、中に入る。
全員が中に入ると扉が閉まった。一瞬でも真っ暗になった後直ぐに足元が光り始めた。
「うお!」
一瞬攻撃だと思ったのかトロアが驚きと共に後ろへ飛び退いた。
「ウフフ。トロアいかがなさいました?」
「い、いえ。」
トロアが珍しい。まぁ、魔法陣がいきなり光ったら驚きますわよね。
「さて、皆様。今下が光っているのでお分かりかと思いますが、この転移陣が入口になります。この村の地中深くにあるダンジョンへ行くためのものです。着いた先の場所は皆様同じ場所です。しかし、そこは一人で挑むもの故、それぞれのある空間は別のものに分けられます。つまり、お互いがお互いを干渉することはできません。よろしですか?」
皆それぞれが頷く。
村長が離れ、壁側に寄っていく。そこで、もう一度手をかざすと魔法陣が起動した。
魔法陣の光に包まれ、一瞬にして全員が転移していった。
一人残されたグネは、一度、唾を飲み込む。
静まりかえったその空間にゴクリと響き渡る。
グネはこの島の在り方に疑問を持つ一人だった。エルフが中心となり運営される亜人達を管理している。まとめ役が必要なのは分かっているが、纏めている理由、目的。それが非常に不透明でよく分からない。まるでエルフを守るために配置されている村々、そして移動の制限。情報の制限。村々は隣の村でさえ訪れ、連絡をとることも禁止されていた。
「虹色の集い」が向かったダンジョンはエルフも知らない秘密のダンジョン。遥か昔から鳥獣人達が受け継ぎ管理してきた、全ての生き物が自分を知ることのできる可能性の洞窟。グネが感じたククリナの可能性。秘めたる力は絶大だと直ぐに分かった彼は、ククリナに運命を託そうと考えた。
ククリナの周りにいる仲間達もそれぞれが大きな役割があると感じる事もできた。グネ自身もこの世界の行末は当然分から訳ではなく、すこしの胸騒ぎから「虹色の集い」を導いたのであった。これが今後どのように影響するのかも分からないが、ただ彼女らから期待させる何かを感じていたのは事実である。
彼女達がさっきまでいた魔法陣を見つめるグネ。
「果たして彼女らは何をどのように感じ、何を得るのであろうか。願わくは、皆に天使の加護があらんことを。」
そういってその部屋を後にして、自室にもどる。
一方「虹色の集い」の面々は其々小さい部屋に転移していた。岩で囲われ目の前には一つの扉がある。それ以外は何もない。そして、そこには自身の身一つしかない。グネの言う通り、仲間は誰もいないただ一人だけ。。皆それぞれがとびらに手をかけ、先に進む。。。
次からは其々のお話になります。
可能性、運命、宿命、使命、
自分達の奥底に眠る。自分の事を知る。




