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お城を脱走いたしますわ。

 

 準備は完璧。城の裏手にある使用人出入り口に馬車では無く馬を用意し、多少の食糧。お金は長年貯めたお小遣いがある。衣装も下界に相応しく動き易いものをトロアに用意してもらった。



 最初の荷物なんてそんなものでいいだろう。足りないものは現地調達すればいい。 あとは出るだけ。

 それも、恐らく今日決行できると思う。トロアの話だと、お父様やお母様が今日の食事の席で私の普段の素行について注意する。ということらしい。これを利用しない手はない。

 しかし、王族でも日曜ドラマ見たいなことがあるんだなとちょっと和むわね。もっとお難くて、腹黒い世界かと思ったわ。



 しかし、私は今日決行する!自由の為に!冒険の為に!


 食事の席にて、

「コホンッ」お父様(王様)が咳払いして始める。


「クラリーナ、最近の行動はいったいどうしたのだ。メイド長や騎士団達、色々な所から其方への苦言や要望がそこらかしこから聞こえておる。走り回ったり、勉強から逃げたりする事は姫君のする事ではない。」


「そうですよ。クラリーナ。いくら第三王女とはいえ王女は王女。相応しい作法で凛としていなさい。」


「お父様、お母様、正直に申し上げてもよろしいでしょうか?」


「折角の時じゃ、正直に申せ。」


「はい。では申し上げます。私は王族に相応しい行動や言動を身につけ、そのように振る舞わなければいけないと言う事にうんざりしております。」


「な、なっ。何を申すのじゃ。仮にも王族の一人とあろうものがなんという事を。そもそも、それは王女としてそのように振る舞う事は其方の義務じゃ。嫌とかそういう事ではない。」


王妃は言葉を失って愕然としている。


「はい。それは分かっております。ですが、私は例え王女という立場を失っても、そのような退屈な事はもう金輪際したくありません。我儘と言われようと嫌なもは嫌であります!!」


 私は正直に言い切った。


「な、な、な、なんということだ。そ、そうか、わかった。もう其方の事は何も言うまい。そこまで言うのだから、この城に居たくないのだろう。もう良い。この城から出て、好きなように生きるがいい。」


「えっ!お父様!そこまでする事は無いのではありませんか?」


 突然第四王女、妹のレイナが仲裁に入ろうとする。


 

 けれどそれは私には余計なお世話。レイナには悪いけど、この好機を逃すわけにはいかないの。でも、意外にあっさりとしてるわね。。。まっいいか。



 私は、食後に飲んでいたカップを置き席を立ちながら皆に宣言する。


「いいのレイナ。私はここを出ていきます。お父様、お母様、不出来な娘をお許しください。お兄様、お父様、お母様、レイナの事よろしくお願いします。」


そして、ドアを開けてもらい外に出る。


「では、皆様さようなら。」


 ドアが閉まる。レイナが泣いていたがもう後には引けないし、引くつもりもない。だが、時折レイナには手紙を書こうと思いつつ、準備してあった裏口へ向かう。


 そこには、トロアが待っていた。その表情には 本当に良いのですか? と書いてあるが、見なかった事にし、馬に跨る。そして、このままの格好では流石に彷徨けないので、城の出口、外門にある見張り小屋で用意していた、洋服に着替え、再び馬に乗る。


 門から出ると、表現のようのない興奮が込み上げてきた。


「やりましたわ!ついに城の外へ出られましたわ!トロア!私やりましたよ!フフフ。アハハ。オーホッホッホ。」


「まったく、クラリーナ様は。。。まぁ、しょうがないですね。私がお供します。」


「ありがとうトロア。これからもよろしくね。それで、これからどうしましょう。私はまずは冒険者ギルドへ行って、冒険者の登録がしたいのですけど。」


「そうですね。それもそうですが、その前に今日の寝るところを確保いたしましょう。そこで、荷物を置いてから冒険者ギルドへ行きましょう。」



「そうですね。わたしはもう自由なのです。気ままなに行きましょう。」



 クラリーナ姫は自由になった。王族というしがらみで雁字搦めの窮屈な世界から解き放たれ、正に籠から飛び出した鳥のように。


 そしてそのまま、トロアの言った通り宿屋で部屋をとった。もちろん王宮とは違いとても質素なお部屋。トロアはなんだか不満そうだが、私はとても満足している。前世の記憶があるんだもん。全然問題ないわ。


 そして荷物を置いたあと冒険者ギルドへ早速向かう。



「ここが冒険者ギルドね。いかにもという感じね。さぁ、トロアドアを開けてもらえまして?」


「あの、クラリーナ様。もうここは城では有りません。全て自分で行うのですよ。」


 笑いを堪えるように言うトロア。当然、私は頬を膨らませます。


「わ、わかっていますわ。ちょっとトロアを試しただけですよ。」


 まだトロアは笑っているがそんなのは無視だ。私はギルドの扉を開ける。



 扉を開けると、酒場のようにテーブルや椅子が乱雑に並べてある。その奥にカウンターがあり、そこには料理を作る大男と事務作業をしている女性がいた。

 酒場の様なフロアには雑談をする冒険者らしきグループと、昼間だというのに大量のお酒を飲みテーブルに伏せって寝ている盗賊みたいな男がいた。

 私は後ろにトロアを控えて、女性の居るカウンターに向かう。そこに行く際、冒険者らしきグループから好奇の様な、敵意のような視線を向けられるもの。そんなのは気にしない。面倒だから。


「こちらは冒険者ギルドでよろしくって?」


成人を迎えたばかりのような若い女は一瞬目を見開いたあと、答える。


「あ、はい。そうです。ご依頼ですか?」


 私がか弱そうに見えたのか、登録に来たとは思われないらしい。


「いえ、冒険者の登録がしたいの。」


「えっ。冒険者ですか?はぁ。分かりました。では、こちらにお名前のご記入と血判をお願いします。登録はお連れ様もご一緒でよろしいですか?」


 私が頷くと紙を二枚差し出した。


さて、問題である。名前どうしましょう。流石に本名はまずい。万が一王女とバレたら色々面倒くさい。うーーーーん。


クラリーナだから、、


よし、ククリナにしよう。えっ。特に意味はありません。


血判を押し、紙を受付嬢に渡す。


「では、簡単にご説明します。まず、クエストですが、大きく分けて四種類あります。採取クエスト。討伐クエスト。護衛クエスト。そして、ギルドから直接冒険者に依頼する、ギルドクエスト。最初の三つはそのままで、ギルドクエストは緊急だったり、国からの直接依頼だったり、強力なモンスターの討伐など危険且つ、緊急のクエストになります。他のクエストはともかく、ギルドクエストは一度お受けになったものはキャンセルが出来ません。なのでよく考えてから受けて下さい。ここまでは、よろしいですか?」


「ええ。」


受付嬢はニコリと微笑むと続ける。


「では、最後にこちらの紙の真ん中にある魔法陣にもう一度血判を押してください。冒険者初回登録時に限り、一つスキルが得られます。」


 スキルという言葉にテンション最大になる私。トロアもさっきまでの呆れ顔が嘘のよう、目を輝かせている。なんだかんだ言っても騎士である。


 二人で目を輝かせてその紙を覗き込む。


「トロア先におやり。わたしはその後にするわ。」


「はい。」とトロアが血判を押す。すると紙はほのかに光った後。文字が浮かび上がる。


(騎士の鏡)…主がピンチの時に発動する。発動すると、自身の力とスピードが上がり、主に対して強力な結界を張ることができる。


 つまり、主が結界で守られてる間 主の事を気にせず動けるという事だ。なかなか、使い勝手が良さそうなスキルである。


「あら!なかなかいいわね。トロア、ちゃんと守って下さいね。」


 トロアは苦笑いする。なぜ苦笑い?解せぬ。


 因みにこの世界には攻撃力や、防御力はゲームのように明確な数値はない。腕力に依存する部分が大きく、これ以上に武器の性能がモノを言う。魔力量という概念もあるがそれも、精神力の部分が大きい。しかし、目安として一応の数値はある。

 トロアの紙には攻撃力2000。防御力1500。魔力量500。

 スタミナ2000と書いてある。


 一般的な冒険者Aクラスで攻撃力は1500くらいで、トロアはA +といった所だろう。あくまでも目安で。ただスタミナと魔力量は概念とは言っても概ね間違いは無いそうだ。

 そして、冒険者はD〜SSまである。所謂上級者に当たるのがAクラスである。国に数人がSクラスに当たり、戦略級と呼ばれる奴である。SSはまだなったものはいなく、はっきり言って伝説級だ。英雄級とも言う。

 クラスを上げるには、ギルドへの貢献度と強さで決められる。強さを決める際の目安は倒したモンスターが強いか弱いかで決まる。

 さてさて、ではククリナの番。。。


「じゃあ、今度は私ね」

血判を押すとさっきと同じようにホワッと光ると文字が浮かぶ。


(神々の采配)…自身のステータスの最大数値の数値を他の数値に振り分ける事が出来る。


 攻撃力500。防御力300。魔力量500。スタミナ…


 50、000、000。


「はぁ!なっなにこれ!!ねぇ、トロアちょっとこれどう言う事?」


面倒くさそうにトロアが、受け取り紙を見ると目を見開く。


「なっ!!!なんだこれは。」


「ねぇトロアどう言う意味?教えて。」


「もし、この事が本当ならこのとんでもない数字のスタミナの数値を他のステータスに移行できると言うことです。というか、こんな数字本当にあるのでしょうか。。うーん。とりあえず、ここではなんですので宿に戻りましょう。」


「わかったわ。。。受付嬢のお嬢さん、それでこの後はどうすればよくって?」


「はい。こちらが冒険者が持ち、ランクを示す為の魔石になります。ランクによって色が変わります。最初は青からスタートです。青、黄、緑、赤、黒、金になります。皆さん小手に仕込んだりペンダントにしたりしてます。裏面にギルド名を刻んだりして、ギルドメンバーの印としてますね。受付は以上になります。直ぐにクエストをお受けになりますか?」


「わかったわ。とりあえずクエストは後日にするわ。今日は帰ります。色々ありがとう。」


「いえ、何か分からないことがあったら何でも聞いて下さいね。」



「「じゃあ。」」


 受付を終え、足早に宿へもどる。


「で、トロア。詳しく教えて下さる?」


「はい。姫様。 先程の続きですが、スキルの説明通りに考えるとこの、スタミナの数値を攻撃力や防御力、魔力に数値を分けられると言うことになります。五千万という巨大な数値を考えると全部平均にしてもとんでもない数値になります。果たして、これ以上の数値があるかどうか。。。」


「そ、そうね。一般的な冒険者でも攻撃力だけ見ても1500くらいですから、ちょっと異常すぎるわね。もしかして私…」



その後、トロアと今後の事について話した。特に私のスキルの件で。基本私の数値は内緒にする事。下手に知られると面倒な事に巻き込まれる可能性があるからだ。逆にそう簡単に私がやられる事は無いみたいだから、正に好きなように冒険が出来るみたい。トロアの護衛もいらないくらい強いらしいの私。。余計な不安や恐怖がないのはいい事ね。正に……


 気ままな私の冒険の始まりだ。


でもあれね。私がピンチになる事は無さそうだからトロアのスキル無駄になりそうね。



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