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砂漠の地下の街(前編)


 最初にミリアから足を踏み入れる。階段は石で出来ており、風化した様子もなく比較的新しく綺麗だ。中は薄暗く灯のような物もないので、松明を二本作って進む事にした。

特に物音もなく人の気配もないのでとりあえず、注意深く降りてみる。

 

 大きく螺旋状になった構造の階段を降りられる所まで下に行くことになった。特にトラブルもなく順調に進めることで警戒心も次第に緩んでいった。

 一時間ほど降りた所で少し広い部屋に着いた。ベットが四つ置けそうな広さでそこには灯りが灯っている。灯りがある事で人もしくは他人種がある事が窺え、何も無かった今までの苦労が報われたような気がした一同。もうすこし部屋の様子を見てみると左奥に階段の続きがあり、右手には机と椅子が1組置いてあるだけの簡素な部屋だった。

 とくに調べることもないため、ミリアの「行こう」という号令で先に進む。


 「何か起きるのでは?」という緊張からか一人を除いて皆顔が硬っている。ククリナだけはいつも通り優雅な笑顔を浮かべている。その心中は「ウフフ、何があるのかしら?罠かしら?もしかして秘密のアジト?いずれのしても楽しみだわ。」と好奇心しかない。


 そんなお気楽のククリナを他所に慎重に階段を降りていく。すると今度は30分ほどで、階段の終わりに着いた。とりあえずこれ以上下はなさそうだ。もしかしたら別のところに階段があるかもしれないが、それは今はいい。

 階段が行き着いた所は地中という事がよく分かるように、周りは全て岩に囲まれた空間だった。正方形の部屋で家具などの人工物は全く見当たらないが灯りだけは灯っていた。


 真正面には木でできた扉が見え、ミリアが恐る恐る開けてみる。目視できるほどの隙間をあけ除いてみる。真っ直ぐ一本道になった通路があるだけで、やはり人影はないし、物音もしない。ミリアが「大丈夫そう。」と皆を手招きしながら扉を全開に開け、先に進んでみる。

 すると今度は少し豪華な扉が見えた。それは近づいてよく見てみると、今までのとは違い宝石や金属の飾りなど普通の家には無い豪華な扉だった。「この先は本命かも」と一人思ったミリアは今度は音が聞こえるくらいの小さな事で隙間をあけ、物音を探ってみる。今度は今までと違い、人の話し声が聞こえた。


 「誰かいる。」


と皆な告げるとククリナ以外の皆が唾をゴクリと飲み込む。


そして、心の準備をしたミリアが思い切って扉を開けた。


 扉を開けた先には、裏路地のような通りにでた。目の前に通りが一本ありその両側に建物が並んでる。その建物には窓が付いており、先程の話し声はそこから聞こえたようだ。ミリアがその窓の下まで来てみると今度はちゃんと会話が聞こえた。

「ほら、唐揚げの出来上がりだ。持っていってくれ。」

「ぶどう酒一本追加でーす。」


といった具合の会話だった。


「ん?もしかして、食堂?えってことはここに街か何かがあるの?」


 全くの予想外の会話に頭が追いつかない一同(ククリナは除く)


「ここでは、分からないから表に回ってみようよ。きっとここは裏側だろうし。」


リリーネの提案で外側に回ってみる。

 そこに広がっていたのは商店街だった。人はまばらだが、確かに商店があり食堂があり宿屋もある。規模は大きく無いが朝出発した村よりも賑やかだった。ただ、そこにいる人達に違和感を覚えた。


「凄いな。地下にこんなのがあるなんて、聞いたことないよ。」

 冒険で色んなところに行ったことのあるミリアが当たりを見渡しながら言う。

「でもなんか変ですね。」

ダリアもやはり違和感を感じるようだ。表情は取り繕っても視線を厳しい。


「ええ。どうやら、人の中に亜人達も見受けられますね。」


トロアも気づいたようだ。

 皆が違和感を感じたのは人の他にも、エルフ、獣人、など亜人種も紛れていたからだった。亜人種が多く住む大陸は海を越えたところにあるが、この辺で見かけることは滅多にない。特に争っている訳ではないが、亜人種達が人を毛嫌いすることが多いため人と接する事がとても少ない。

 しかし、ここはそんな地上の状況とは裏腹に当たり前のように交流が持たれているようだ。猫の獣人が店主を勤める商店がありそこで人が買い物をし、人が営む宿屋にも様々な人種の人達が出入りしている。

「でも、特に争いとかそんな様子はないな。ここいったいなんなのだろう。」

トロアはそう言うと、視線をミリアに向ける。

「あたしも、こんなの聞いた事ないねぇ。」


 そうやって、トロアとミリアが今の状況を分析していると、シルクハットをかぶったトカゲの顔をした人が声をかけてきた。


「あら、珍しいですねぇえ。旅の方々ですかぁあ。いったいこんな所で何をしているのですかぁあ。」


 見たことのない人種のモンスターと言っても納得できそうな風貌に皆に緊張がはしる。

「そ、そんなに警戒なさらないでくださぁい。私はノロと申します。このロードワンで町長しているものです。決して怪しいものではありませんよぉお。」


「虹色の集い」の皆は視線で会話をし代表でミリアが対応する。


「町長さん??ってここは街なの?」


「はぁい。そうです。ここは砂漠の地下街ロードワンという所です。」

 ノロと名乗る者は辺りを見渡しながら答える。

「そんなんだ。でも、なんでこんな所に街があるんだい?」


「んー。なんででしょうねぇ。わたしも、ここに派遣されているだけなので、詳しいことはわかりません。ところで、そちらの少女はあなた方の仲間ですか?」


 ルルルに、視線を向けてノロが訊ねてきた。


「そうだけど。それがなに?貴方には関係ないよね?」


「んーー関係ないというか、実は頭に二つコブが生えて、白髪の七歳くらいの少女を探すよう頼まれてまして、見たところその子のような気がしたものでしてね。」

 

 トロアがルルルの前に出て警戒する。ルルルは突然怖い視線を向けられ震えている。


「そんな怖い顔をしないでください。その子をこちらに寄越してくれれば手荒な真似は致しませんから。」


「何を言う。この子は我々虹色の集いの仲間だ。お前のような輩には渡さん。」

 トロアはそう言うと剣を構える。それに合わせるようにミリアも剣を構える。


「やれやれ、仕方ありませんねぇえ。フラーホール!」


ノロがそう唱えると、ルルル以外の皆の足元に黒い穴が出現する。その穴から黒い光が照らされ身動きが取れなくなり、次第に引き摺り込まれていく。


 それぞれがもがくも、抵抗虚しく皆んな黒い穴に飲み込まれてしまった。

 それを見ていたルルルは声も出ない。歯はガチガチなり、立つこともできないくらい震えている。


「ふっふっふっ。他愛もない。さぁ、白髪の少女よ一緒に参りましょう。」

ノロはそう言うと、黒いロープを取り出しルルルを縛り上げた。そして、縛り上げられたルルルは中を浮かびながら連れ去られてしまった。


――――――――

 


 ミリアが目を覚ますとそこは岩に囲まれた牢屋だった。

「ルルル!皆んな!」

 思わず叫んで起き上がると辺りを見渡した。

そこには、同じように捕まったトロア、リリーネ、ダリアがいた。気を失っているようだ。


 「皆んな起きて!」

そう言いながら皆の体をゆするミリア。

「んーー。ここはどこ?」

「ルーちゃんは無事?」

「んーー。不覚をとった。。。」

とそれぞれが目を覚ます。

「良かった。皆怪我はない?」

ミリアの体にそれぞれが体を確認する。特に怪我は無いようだ。


「あれ?ククリナは?」ミリアがククリナがいないことに気づいた。

「あれれ?居ない。」リリーネも辺りを見渡すもそこにククリナは居なかった。


「え?どこいっちゃったの?他のメンバーは居るのに何でククリナだけ。。」

 ミリアはもしかして、ククリナの秘密を見抜かれた?と心配になるが、口にはしない。

「別のところに捕まっているかも。とにかくここから出なきゃ。」

「そうだね。でも、どつやって?」


「私が切ってみよう。皆はなれて。」


ガキッ。

 トロアが剣を振るうも鉄格子はびくともしない。

今度はミリアが「私が!」と剣を叩きつけるも同じ様子だ。


「まいったねー。」


ミリア達が悪戦苦闘していると、上の方が大きく揺れた。


「な、なんだ??」


「まずいね。なんか今の揺れで此処が崩れそうだよ。」


パラパラと砂や石が降ってくる。上の岩盤が崩れているように感じた。

 しかし、その振動はすぐに止んだ。


「あ、みて!あそこ!」


リリーネが指を差したところを見ると、今の衝撃で岩盤が傾いたのか鉄格子に人が通れそうな隙間が出来ていた。


「お!よし。あそこから出よう。」


 牢屋から脱出できた四人は出口らしき階段を駆け上がる。

そして、出てきたところはただ何もない広場の様な場所だった。

 そして脱出できたことに安堵するよりも前に衝撃的な光景を目にする。


 地面に座り込むルルル。その隣には宙ぶらりんに浮いているさっきのノロ。

 よく見てみると、ノロが宙ぶらりんなのはククリナがノロの首を掴み持ち上げていたからであった。


「はっ??」


意味のわからない四人。それ以外言葉が出なかった。


「ち、ちょっと、ク、ククリナ。これはど、どういう事?」

ミリアがどうにか言葉を発する。


「あら、ミリア。ご無事でしたか?この後助けに行こうかと思ったのですが、大丈夫なら安心いたしましたわ。」

 

 いつも通りのククリナ。


「それで、トカゲのおじ様。なんで私の大切なルーちゃんを狙ったのかしら?」


「う、うぐっ。ぐっ。」


「あらあら、これでは喋れませんか。なら仕方ありませんわね。」

 そう言って下に下ろす。でも、手は離さない。



「さぁ、言ってみなさいませ。」


「いや、あの、とある方に頼まれまして。。。決して傷つけるとかそういう事ではありません。」


「んー。拐っておいて、その言い草はないわねぇ。」


「いやでも。。。。。本当にすみませんでした。。どうか命だけは許してください。私も詳しい事情は知りません。」


「そう。んーでもね。私の大切なルーちゃんにこんな怖い思いをさせておいて何もないというのはおかしいわよね。」


 ククリナの厳しい視線が突き刺さる。


「本当にすみません!わたしは、クロードを脱退し貴方に忠誠を誓います。奴隷でも構いません。ですから命だけは…」


「皆さんどうしましょうか?」



「んーー。ククリナ。状況がいまいち掴めないんだけど。」



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