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さぁ、出発ですわ

 


 ―出発の日―



 夜明け前、街の入り口に「虹色の集い」達は荷物を馬車に乗せて出発の準備を行なっていた。荷物を乗せると言ってもククリナの異空間バックがあるため大したものはない。直ぐに使う、水や軽食などの食料と装備類などである。他の調理器具や、宿屋には置いておけないウモウフトン、野営用の簡易テント、等々は異空間に収納してある。

 さっさと荷物を乗せ終えると、ククリナは皆に微笑みかけた後、後ろを振り返る。その目線の先には、お城があった。


 前世の記憶を取り戻し、それで生じた退屈な日々。そこから抜け出すために、来る日もくる日も走った。姫という立場から、剣術や体術、魔法など。一切必要ないとやらせてもらえなかった。しかたなく、社交のための為の体力作りと称して走る事しかできなかった。でも、外に出て得たスキルによって無駄にならなくて良かったと。ほっとした時もあった。


 仲間も沢山増え、最近は街の暮らしにも大分慣れた。

しかし、外に出れば自然の何処かに城が目に入った。見ないようにはしていても、気がかりな妹がいる為完全に無視することも出来なかった。ダリアによれば、「なにやら企んでいる事があるようですが、大層お元気です。」と言っていたので「ならよかったわ」と安心した。これで、心置きなく此処から去れる。


「さぁ、皆さま用意はいいかしら?」


 トロアも感慨深いようだ。騎士という城内での立場を失わせてしまった事にククリナは少し後ろめたかった。

 城を出る前も「あなたは此処に残りなさい。」と説得しても「いいえ!私はクラリーナ様の騎士です。これは、死ぬまで私がしなければならない騎士としての仕事ですし、生き甲斐です。なので、貴方が行かれるところにずっとついて行きます。」と頑なだった。外に出てからもなんだかんだ、楽しそうだったので、ククリナもその後ろめたさはいつの間にかなくなっていた。今生き生きと荷物の最終確認を行なっている。そして、


「ククリナ様、準備完了いたしました!」


と、とても得意げだ。


「では「虹色の集い」の新たな旅立ちですわ。出発いたしましょう。」


 ククリナの号令で、皆馬車に乗り込む。

トロアが馬車を動かす。ゆっくりと、馬車は進んでいく。見送りは特にいない。しかし、朝日は皆を見送るように登り始めた。


 

「さーて。これから何処に行きましょうかねぇ。」


ミリアが持参した朝ごはんを食べながら気ままな質問を皆に投げかける。これからの旅は自分達が好きなように、自由に選べる。ミリアの、その投げかけに実感が湧いてきたククリナとリリーネは目を輝かせて考える。


「何処に行きましょう。。なら地図を広げて皆で考えるというのはいかがですか?」


 ククリナはそう言うと地図を広げる。地図と言っても、とても大雑把なもので、国や大陸、山脈などの位置が載っている程度のものだ。


 その地図によると、中央にアレス。北がトクヌート国、西にサマリア王国。東にミレー共和国。南にマリヌス砂漠がありそれを超えた南にトット村。マーレイア公国。があり海を挟んで、エアレルン大陸がある。エアレルン大陸にはエルフをはじめとした、集落があり他にも獣人などの亜人種も集まっている。正に人里離れた孤島と言えるだろう。

 他にはトクヌート国の北にはカントナート山脈があり、それを超えると、魔族領ダービッツがある。この位置関係から鑑みるに、魔族と亜人種、エルフの間に人間がいると言う事になる。つまり、人間が間にいる事によって、他種族間の争いが抑制されているようなものだ。山脈には龍族もいるが、基本は受けの姿勢なので、手を出さなければ干渉してくる事はない。魔族にとってもその山脈があるが故に人間への手出しがしにくいという見方もあるが、噂によると山脈に入る手前のキキルの森に転移用魔法陣があるらしい。それを介すことで、人間領に簡単に入る事が出来る。その為、山脈の存在が魔族からの侵略を阻止してるとは言い難い。

 魔族が攻めてこない最大の理由は、今は魔王の席を巡って長い間攻防が続いている為だ。


 また、西側のサマリア王国の先には、何処の国にも属さない。盗賊、マフィア等、裏の世界生きる人が集まる街、クロードがあるという。昔は別の国があった所だが、裏社会の策略にあい滅んだ。生き残った人々はサマリア王国へ逃げ、残ったのは悪人達という具合だ。


 さて、そういう位置関係の為現在行こうと思えば選り取り見取りの五人、どごを選ぶのか。。。


「んーー?わたしは、海が見てみたいけど、砂漠にも行ってみたい。」


 リリーネは広大な景色を見たいようだ。隣で悩むククリナは実はクロードに行ってみたいと思っていた。「裏社会ってどんな所だろう?」と。


 ミリアは「あたしは、大きな商店があるサマリア王国がいいなぁ。たーっくさん買い物したい!」と冒険よりもお買い物がしたいらしい。


 「では皆さま、私がおまとめいたしますね。」


 と最年長者らしく、ダリアが皆の意見をまとめる。


「こういうのはどうでしょう?砂漠を見た後にサマリア王国へ行くというのは。期限のない旅ですし、時間はタップリあるのですから…」


「お。いいねぇ。砂漠にはもしかしたらダンジョンとかもあるかもしれないし、そしたらお宝とかたくさんとれそう。それを売ってサマリアでパーっと買い物しよう!」


 皆んながみんな、和気藹々としてる様を「皆さん楽しそうでなにより。ウフフ。」とククリナは穏やかに見ていた。城で夢見ていた光景がそこにあったからだ。

だからこそ、王女という立場も捨て後ろ盾も何も無いこれからの事で気を引き締める。この大切な仲間達を絶対に守ると。

 

 特に問題もなく順調に砂漠へ向かっている「虹色の集い」達、そろそろ昼になるので水場のありそうな所を探す。現在まだ、アレス王国圏内でもう少しで国境に差し掛かる所だった。王国内最南端にミミルという村がある。今日の目標はその村まで辿り着く事だ。そうして、小川が流れる場所を見つけたのでそこで休憩を取る事にする。


 ククリナのバックから調理器具、食器、食料をとり出し、薪にダリアが魔法で火をつける。


「あら?ダリアは魔法が使えたの?」

不思議そうにククリナが尋ねる。今までそんなことを聞いた事が無いし、見たことも無かったからだ。

「ええ。ククリナ様生活魔法くらいなら一通り使えます。」


「いやーー。メイドの鏡だね。主人の面倒は勿論、料理に魔法まで使えるなんて。」


「いえいえ。そんなことはありませんよ。」


ミリアとダリアも大分打ち解けて来たようだった。

「さー。皆様出来ましたわ。」とダリアが作ってくれたのは、野菜炒めと芋のスープだった。流石は元筆頭メイド。料理も一流だった。メニューは庶民的だったが味は違った。

「うわー。美味しい。」や「わたしこんなの食べた事ありません。ダリアさん凄いです。」とミリアとリリーネは夢中で食べた。ククリナとトロアは懐かしそうに食べている。トロアに至っては城の味が恋しかったのか、目に光るものが見えたような気がする。


 皆が食事に満足し、再び動き出す。

見える景色全てが新鮮なククリナとリリーネは馬車に付いている窓から身を乗り出すように見ている。

「うわー綺麗。ねぇククリナあっち見て!変わった鳥がいるー。」「あらあら、ホントね。なんてゆう名前なのでしょうね。ウフフ。」とやはり新しい事をするのは新鮮で楽しい。


 そうやって、景色を堪能しながら進む一向。ミミルの村にもうすぐのところで、倒れている少女を発見した。

「トロア!止めて!」

 トロアが馬車を止めると、ククリナとリリーネが真っ先に飛び出していく。トロアが「ククリナ様、勝手に飛び出さないでください。危険です!」と静止するも間に合わない。


 その後に、トロア、ミリア、ダリアもククリナ達の後を追う。

 五人が少女の元へ辿り着くとククリナが声をかける。

「大丈夫ですか?どうなさいました?」

しかし、意識が無いようで返事がない。ダリアも覗き込む。

トロアは周囲を警戒していた。少女は、身体のあちらこちらに傷があった。リリーネが回復魔法で傷を癒す。


「うっ。。。」


少し反応があったが、やはり意識は戻らない。


「どうしよっか。このまま放っておけないし…」


ミリアが皆に問いかける。それに、少女の体の状態をみているダリアが「村までもう少しですし、連れて行きましょう。」そう提案する。


 少女を馬車に乗せて、再び動き出し村へ向かう。

その車中。少女の頭を撫でようとしたリリーネが違和感を覚える。自分達の頭には付いてない物が付いていた。

「ク、ククリナ。見て。。この子の頭…」


そう言われてククリナが覗き込む。そこには小さな角のような物が頭に生えていた。

「あらあら、何かしらね?人ではないのかしら?」


ミリアも二人の会話を聞いて、同じく覗き込む。

「うーん。どっかで見た事あるような…」

と、思い出せないようだ。そうして、皆で考えていると村に到着した。村というだけあって、家はまばらだ。時間も日が傾いてきているので、外にいる人も少ない。

 その村人達は馬車が入ってくるのを見て、近づいてきた。


「こんにちはー。旅の者なのですが、今晩ここに泊めさせてもらってもいいですか?」

 ミリアが、その近づいて来た村人に聞く。その村人は隣にいた兄弟らしき人物とコソコソと話すと、「村長に聞いて来ます」と奥にあった大きな家に入っていった。少しして、村長という割には若い男がやってきた。

「どうも、はじめまして、このむらの村長をしております。ゴンと申します。ここに泊まりたいとの事でしたが、生憎この村には宿屋がありません。どうしますか?」


「ああ、それは大丈夫。場所だけ貸してもらえれば野営するから。」


「分かりました。それでしたら、あちらにどうぞ。何もお構いできませんが、あちらなら水場がありますので野営もしやすいでしょう。」


「ありがとうございます。助かります。」


と村長の許可も得て、皆が野営の準備を始める。

ククリナのバックから、簡易テント5名分。ウモウフトン5名分。後は昼と同じように、お食事セット一式だ。


 そして、助けた少女はダリアと同じテントに寝かせることにした。ダリアには長年のメイド経験から看病をするのにも適していると皆で判断した為だ。

 少女の分もウモウフトンをダリアのテントに用意し、そこは寝かせる。まだ起きないようだ。


 その後、皆で食事の準備をする。担当は昼とほぼ同じ。だが、今回はダリアの助手にリリーネが付いた。料理を覚えたいらしい。今夜のメニューはパンとシチュー。デザートに来る途中で摘んだフルーツだ。


 シチューを煮込んで、辺りにお腹が空くようないい匂いが漂い始めた頃、ダリアのテントから物音がした。


「あら、起きたかしら。」

と、ダリアは食事の準備で手が離せない為、椅子に座ってお茶を飲んでいたククリナが様子を見に行った。

 テントの中に入ると。やはり少女が目を覚ましていた。


「大丈夫ですか?体は痛くありませんか?」

 と様子を伺う。少女は戸惑った様子で、自分の体を確認し、周りの様子を伺い、そしてククリナの方を見た。目に涙を浮かべ「うん。だ、だい、じょう、ぶみ」と答えると、ホッとしたのか何なのか泣きはじめてしまった。


「あらあら、どうなさいましたの?」とククリナは少女を抱きしめる。すると、少女は安心したのかさらに泣き出す。ククリナは背中をさすってあげ泣き止むのを待った。



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