進路はヒーローサーガへ
やっと利知.菜野が「英雄」っぽくなってきました
上松を殺すためにストーキングして。
それを終えたらパソコンになれた利知が菜野のモノを使って情報をまとめて。
それで食事を取って、そろそろ殺害しないかと菜野が提案して利知が「もっと確実な準備をしてから」反対して。
そして、「警察 確実に信頼できる」とか「人殺 罪」とか検索して見たり迷ったりとか。
そんな非日常の上に成り立つ日常でも、利知は良いと思った。
菜野もそうだった、これから人を殺すのに多少は躊躇があったから
こんな怠惰な日常に身を任せていた。
これでいい、救われなくてもいいから。
せめて同じような世界が明日も明後日も続けばいいんだ、そう思った。
もちろんそれはありえない。絶対に利知たちの願望は叶わない。
時が止まることはない。
ある日、夏も本格的になった時に菜野の電話が着信を受けた。
無機質になり続ける音声が、吐き気を催す。
利知は、なぜだ。と思った。
このまま続いてくれるだけでよかったのに!と。
菜野は平気でその電話に出た。
「……ああ、え?はい?あ?わかった」そして、電話を切った。
その後、利知に少し震える声で言う。
「今、私は祖父から電話を受けた、独自の情報網で大事なことをつかんだらしい」
「いったいどんな情報ですか?」
「上松が、もうすぐ大災害を引き起こそうとしてるっていう情報
起こす前に潰すしかない、だからすぐに上松を殺すしかないんだ」
菜野は、言い切るとしっかりとした目線で利知を見た。
「つまり……タイムリミットだ」
そして、願いを打ち壊していく。
「もう日常は終わりだ、手遅れになる前に私たちがどうにかしないといけない」
「俺たちが……そうですけど」利知は手を強く握った、爪が食い込んで痛いくらいに。
それを菜野が見て「迷ってるのか?上松を殺すのを」と言う。
しまった、と利知は思う。
迷ってはいけないと思うし、ミノリが彼のせいで死んだなどの憎むべき理由もあるのだがそれでも心のどこかで歯止めがかかってしまう。
「その、上松はどうやって大災害を起こそうとしてるんですか?」聴く。
ただただひたすらにこのまま利知は日常を引き延ばそうとしていた、出来ないなんてわかっているけど。
だから菜野は絶対零度で答えた。
「詳しいことはわからないらしい……ん?大災害なんて言葉からして人為的に起こすには非現実的なことだ、もしかしたら赤い化け物を使うのか?」
その菜野の発想に利知は乗っかった。
「それです!きっと!だから上松じゃなくて、赤い化け物を殺……どうにかすべきです!」
殺すことは躊躇った。
「赤い化け物がどこにいるかわからないのに?」
「でも……!」
「ああわかった、じゃあこうしようか、”上松をできるだけ殺さずどうにかする”」
アカネが「赤い化け物の居場所とか聞くために殺さないのかな?だったら別に上松じゃなくて他の会員もいいんじゃ?」とボソボソ言っていたので。
利知は「フォバルナエタ会は結構なことを会員でも教えてくれないって錐さんのおかげでわかったろ?」と言ってから。
菜野を見た。
嘘をついていたりする様子はない。
そう思うと。
「じゃあ、上松を倒す計画を練りましょうか」
「ああ、そうだな」
「パソコン、貸りますよ」
利知は、記録した上松のデータをモニターに映した。
やっちゃいけないことに向かっている気がした。
だけど、その息苦しさに耐えながら、利知と菜野はお互いに陰鬱な思考をしながら
一人の人間に対して攻撃的な計画を練りだした。