一堂に顔を合わせず会す
ちょっと再来週くらいまで忙しいんで更新頻度落ちます。
2階、壁や天井に絢爛な装飾が施された廊下に
カツカツと、足音が響いていく。
矢田はできるだけ静かに歩いているのだがそれでも響いてしまう。
「……」
桂葬儀をつけて入った一ノ瀬家の屋敷だが
何というか、歪な雰囲気だった。
乱雑に血がぶちまけられ壁にこべりついていたり、誰かの右手が転がっていたりと
青野はなんだこれは、と思う。
正直、こんな不気味な空間見たことが無い。
明らかに何かがあった、この屋敷で。
そのころ利知は3階にいた、矢田のいるよりも一階分上の場所である。
「クソ、何だよ……」ミノリの家をまた一歩一歩踏みしめながら歩いていた。
ミノリの追憶をするのならば自分が彼女を殺した海岸に行けばいいのに、わざわざ大して印象のないこんなところに来ている、つまり利知はまたあそこに行くのが怖かった。
大事なことから逃げているような気分になり罪悪感も感じ
おまけにさっきからなんだか頭がずきずきとする。
だから利知はイライラするし、悲しくなるし、切なくもなる。
「利知、気づいてる?」アカネが突然声を出して利知の心臓が跳ね上がる。
いきなりしゃべるな!と怒ろうと利知はした、しかしその言葉をつぶすようにアカネが重いトーンで言う。
「……なんか、ここ変じゃないかしら?」
「え……?」
アカネに言われて利知は辺りを見回す、そんなにおかしいことがあるとは思えない。
そうアカネに伝えると。
「なんで壁とかにさ、血がついてたりするのよ?あと変なにおいする気がするんだけど」
利知は、アカネの言っていることが何がおかしいのかわからなかった。
確かに彼女の言うようにこの屋敷は腐臭はするしそこらに血がこべりついているが
そんなこと当たり前で大して驚くべきことじゃないように彼は感じた。
利知は頭を掻きながら歩く、だんだん痛みがひどくなってきた。
「ああ、クソ!」
苛立ちながら、階段についた。
4階に上がる階段であり、3階に下りる階段でもあるそれを見て
アカネはひきつるような声を出した。
何だ、と利知が聞くとアカネは無言で下りていく方の階段を指さす。
それの方向を見れば、踊り場に大柄な大人の男がいた。
苦しんで呻いて転げ回っている。
利知を見つけると血涙を流しながら救いを求めるように手を伸ばそうとしてくるが
びくびくと痙攣してまともにそれすらできていない。
「大丈夫ですか!?」利知は男に駆け寄る、男を助ける方法も知らないのに。
男は、踊り場でのたうち回りながら近づいて来た利知に叫ぶ。
「助けてくれ!俺のなかにいるんだ!虫が!頭を食い破って、ふひ、ぎゃははは」
悲痛に叫んでいきなり笑い出した。
「ぎゃはははははは、あっ、あいつが来る!アイツが来る!嫌だ助けて!死にたくない―――!
死にたくない――――!」
いきなり笑ったと思えば突然泣きながら騒ぎ出す。
明らかにまともじゃなかった、言っていることが本当かもわからない
そんな歪な状態の男に利知はたじろぐ。
しかし、怖がりながらも男から目を離すことができなかった。
なんだか男に親近感が湧いてしまうからだ。
「う、うげっ、うおげっ」突然男が嗚咽しだした、そして「うげ――――っ、うげ―――――――っ」
ビチャビチャと不快な水音が鳴り響く。
男は胃液と「それ」を吐いた。
「それ」を見て男は余計気持ち悪くなって、また吐いた。
利知も「それ」を見て吐きそうになった、惨劇に慣れていなければ辺り一面に吐瀉物をまき散らしていただろう。
「それ」とは、ぐちゃぐちゃで赤く染まったぷるぷるした肉だった。
どう見ても人の肉であった。
男は「それ」を見て。
「ひっ、ぎゃ、うわ、うわあ!」
恐怖し胃液の上で腰を抜かした、泣きじゃくりながら逃げようとするが
自分の吐き散らかしたゲロが足を滑らせどうにもならない。
「助けて、助けて」利知を見ながら男は懇願する。
仕方なく利知は立ち上がれるよう手を差し伸べた、が。
「……あぎっ」突然、頭を押さえて男がうずくまった。
そして「いたいっ!痛い痛い痛い痛い!」泣き叫ぶ。
利知にはどうしようもなかった。
ただ、男がのたうち回って、体中の穴から血を出しながら
ガンガンと頭を地面に打ち付けて頭痛のする脳みそを取り出そうとしながら死んでいくのを見ているしかなかった。
そして、男は死んだ。
あっけなく無意味にどうしようもなく死んだ、命が大事って本当なんだろうかと言いたくなるほど。
利知は何となく男に手を合わせて冥福を祈ろうとしたが、死体の様子を見て
掠れるような声で「……そうか」と言った。
なぜ男と少し親近感を感じたのか何となくわかる。
男の死体は傷口に小さい赤い泡がでてはじけてを繰り返している。
とても泡が小さいが、これは利知が怪我したときと一緒。
「赤い化け物」の力を得たものが怪我した時の反応である。
そして男は頭を押さえながら「痛い」
と言っていた。
利知も、さっきから頭が痛い。
つまり、利知のように男は赤い化け物の体を摂取して不死を得たが「未来」の利知のように死んだということかと
自分の悲惨な末路を見せられたような気分になり、利知は吐きそうになった。
アカネが気まずいのか何も言わないのも気分の悪さを加速させる。
「あっ?」利知は、男の死体に異常が起きているのに気が付いた。
赤い化け物のような血のような赤色に変色している、それと同時になんだかドロドロに溶けているようだ。
そして、その溶けて液状化したものの体積はどんどん少なくなっていく。
終わりに液状化した死体は気体になって、見えなくなる。
後にはゲロと血と服が残って、死体は一切残ることはなかった。
利知は、自分が死ぬシーンを見せられたような気分になった。
それから、少し疑問に思ってアカネに聞くことにした。
「……彼は人の肉を吐き出したから、さ、人の肉を食べてたってことじゃないか」
「赤い化け物みたいに、人を吸収しようとしたってこと……だよな?」
そして、一息で一気に利知は聞いた。
「俺もこの人みたいに、なるのか?」
アカネは頷いて口を開いた
「赤い化け物の力を得たあなたはかなりの長期間、ほぼ不死だった」
「ミノリちゃんみたいに赤い化け物になってしまうでもなくね、ならなかったのはたまたまあなたの体質が運よく化け物になりにくいものだったから」
利知は『運よく』といわれると疑問が湧く、むしろ化け物にとっととなって何も考えられなくなったほうが幸せだったかもしれないからだ。
「で、あなたは化け物になれない、詳しく言うとなる時が来たらそのボロボロな体が耐え切れず死んであの男の人みたいになる」
アカネの言うことに利知はああ、やっぱりと思った。
結局、どの道を行こうと自分は死ぬのだ。
それはもう、どうすることもできない。
利知は壁を蹴った。
「なんで、俺ばっかりこういう目に遭うんだよ!」
心からの叫びだった、何度も怪我して、何度も友を失って、何度も苦しんで。
「クソ!」
吐き捨てるように言ってまた利知は歩き出した。
利知は自分が、目的のないことをするのはただ現実から逃げたいだけなんじゃないかと思った。
考えながら歩いていると
「……あ」
利知は、憔悴していて先程は疑問に思わなかったことに気づく「なぜ、男がいたのか?」ということに。
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一ノ瀬家の地下牢にて。
監禁されている菜野は、どうしようかと考えていた。
スマホの電源を入れてみると電波が通じておらず110番通報できない。
「うーん、この身一つで脱出しろというのか」
菜野は、自分の指を見た。
女性としては武骨で男性としては繊細なものだ。
次に、牢屋の鍵を見た、シンプルで道具さえあれば菜野の指で簡単にピッキングできそうだ。
「……道具があれば、の話なんだけどなあ」
菜野はないものねだりなんてくだらない、と備え付けのベッドに身を預けた。
ひどく臭いシーツを使っているが、ゴミ屋敷という劣悪な環境で過ごす菜野にはこの程度何ということはなかった。
プロット読みなおして最近気づいたんですけど主人公の利知って作中時期が春~夏なのに緑のあったかいセーター着てるんですよね。
それ、「利知がもうすぐ死ぬ」くらいに体が弱っていて体温が上げきれず常に寒いから、というのでした。
完璧にこの設定忘れてました。




