亜世界 やっぱヒロインこいつらでいいかな
警察に盗聴器を持ちこみ、利知は駆け込んで事情を説明した。
「ふんふん、それで?」
「だからっそのっ!盗聴器!」
「ハイハイ、子供は寝る時間だぞ」
と、警察は利知を突き飛ばした。
その言葉に冷酷さが染み込んでいた。
「ちくしょう、なんだよちくしょう」
夜風にあたりながら、狭くて細くて入り組んだ人気のない道を利知はうろついていた。
なぜこんなへんぴな所を選んだのかというと、3週間前
人通りの多いスクランブル交差点でこけたのに、だれにも気にされず
通行人に蹴り飛ばされたり踏みつけられたりしたことがまだ怖かったからだ。
盗聴器のあった家になんて帰りたくなかった。
警察も信頼できない、証拠を持って行ったのにあの態度はおかしい。
まさか、公の機関にもフォバルナエタ会が?
意外と身近に敵がいる?
なんて利知が考えていると、アカネが話しかけてきた。
「何を握っているの?」
利知は、両手ですがるようにアニメのフィギュアを握りしめていた。
そう。ヂーギンペムルマのメインヒロインのもの(season2version)だ
握りしめていると勇気が出る。
そうまとめればいいものを
「いや、これはヂーギンペムルマっていうアニメの3話から登場した・・」
なんて、細かく早口で説明しようとするから。
「な、なに一人で滅茶苦茶しゃべってんのよ?」
知人に見つかる。
その知人二人
ヨモギと古賀にはアカネが見えないから
利知がヤバい奴にしか見えないのだ。
「だァお!?」
よくわからない叫び声を利知はあげた。
やべー奴と思われたことと、フィギュア握りしめてるとこ見られた
恥ずかしさからの魂の叫びである。
そして、自分の思考が恐怖を呼ぶ。
__意外と身近に敵がいる?__
「くっ!来るな!来るなよ!」
「ありー?利知くんどしたのー?おかしいよ」
ヨモギにまでおかしいと言われながら、利知の恐怖があふれる。
「なっ何でこんな深夜にうろついてんだよ?中学生が、危ないだろ?」
どもりながら、聞く。
「アンタもでしょ」古賀が冷静に返し。
「そのねー、古賀ちゃんが塾で、私が映画見た帰りー」ヨモギも冷静に返す。
利知は、二人をにらみつけて、ビビってる。
「なによ?その顔、まるで私を怖がってるみたいな」
「えっ、いや……」
ヨモギは笑いながら「人間不信?」と平気で言ってくる。
そして「もっと、利知君は周りを信用していいと思うなあ―」
利知の心にクリーンヒット。
周りが怖くて怖くてしょうがなくなってる彼には
心を見透かされたようだった。
利知から離れていきながら
「じゃあね、アンタも早く帰りなさいよ?
この前不良に殺されかけたの忘れた?」
古賀は別れの挨拶をした。
利知は、「う、うん」と小さく返した。
帰っていく二人を見ながら。
利知は、ヨモギに言われたことを反復する。
___周りを信用しろ、か_____