病院篇・回答編
この話分かりにくくてすみません。
正直読み飛ばしてもらってもあまり問題はないと思います。
この後の話に大きく関わってくることはたぶんないし。
暗水町の商店街を突っ切って「週刊大豆」とかいう雑誌が店頭に並んでるのを見て。
菜野はその住所を尋ねた。
のだが。
「……ここ、か?」
そこはぼろっちい病院であった。
窓ガラスは8割割れている。
怪しみながらも渋々中に入る。
菜野が思っていたよりもちゃんとした病院の雰囲気は出ていた。
でも汚い。
何だこれと菜野は思う、
受付の女性は顔中にピアスしてるしゴキブリの大家族は行進してるし。
「……あの―――」受付の人にどうしたらいいのかわからず聞こうとすると。
「ああ、菜野さんね、2号室へどうぞ」と、病室へ案内された。
廊下はとてつもなく肥溜めのように汚くて臭かった。
そして、2号室の扉を開け。
菜野は出会った。その顔がしわくちゃな老人 幾久 正吾と。
「来なすったか……ワシのあんなメールでよく来てくれたな
菜野」
菜野は訊ねた。
「……あなたは、何者ですか?」
「ワシは……あの図法の作者だ」
「名は……幾久 正吾
「それはさっき地の分で言いました」案内してくれたピアスガールがそう言って、踵を返し退室した。
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「……さて、君にはいくつか聞きたいことがあるだろう
なぜ図法を送ったのか?なぜ君を呼んだのか?ワシはなぜあの図法を描いたのか?」
菜野は、頷く。
そして老人は長い話になるぞ、トイレに行きたいなら今のうちに行けと目で言った。
……菜野は、無言で耳を傾ける。
とっとと話せ、そんなふうに。
本当に長い話になる、それでも聞かない選択肢があるはずなどない。
「では……まず私が何者か?ということを話しておこう
簡単にいうと科学者だ、君の祖父とは友人だった。
そして……私たちは、フォバルナエタ会から資金援助を受け、協力した。」
「どんな研究をしてた?」
「無限の命を得る研究、時を閉じ込める研究。
……一秒の認識を脳を加速させることで何億倍にも引き伸ばす、おっと
脱線したな……」
それはDWの話だった。
「それと、もう一つの研究をさせられた、人工的に不死者を作る研究
もっとも、最終的に赤色の化け物が生み出されてしまったが」
正吾は咳払い一つせず続ける。
ノンストップで言い切るつもりだ。
「そして君の祖父と私は、フォバルナエタ会のおかげで研究ができていて喜んだ、が
やつらの目的に気づいてしまった」
「目的?」
「全てを無に還す、その研究を私たちはしていたのだ 細かいことはわからなかったが」
菜野はそれを聞いて呆けた。
馬鹿げてる。
そんなことしてなんになるというのだと。
そう思うのは正吾にも予想できていた。
解説が入る。
「もちろん、そんなことしてなんになるというのだと言いたいだろう。
正直私にもわからん……無意味じゃあないか
だが」
「?」
「無意味さはやらない理由にならない
人生を無意味に過ごす者がたくさんいるようにな」
「そして、私たちはもちろんそんなことに加担する気はないだから、私たちは考えた
……世界を滅ぼすのを止めるためにな
行動を起こそうとしたが
私はこのように病院住まいになる病弱、そして君の祖父は腰も弱くそろそろ老いに殺される
知識はあろうと体がついてこなかったうえに誰かに頼ろうにも信頼できる者はいない。」
「だから……あいつは若い君の脳に自分のデータを移植することにした」
「そして死んだ、お前さんの体に宿ったはずの自分にすべてを託して」
「その計画はお前さんを見る限り、完璧に成功したわけではないようじゃな」
思い当たる節が、菜野にはある。
タバコを吸いたくなったり、口調がおかしくなったり。
異様にフォバルナエタ会に対する狂気があったのはきっと、記憶をぶち込まれそうになったからだろう。
菜野は無言だった。
「そして、ワシはやつのサポートをするためにあの図法を作り。送った」
「知っておるだろう?」
「あれは、フォバルナエタ会の奴らはおそらく、赤い化け物の体液を摂取することで
近似世界に行けるようにするだろうから、それであの世界に奴らを送れるようにできるそれは武器だと思った」
菜野は、それに助けられたことがあるから頷いた。
「が、連絡がまったく奴からない、約束していたというのに、だから私はお前を呼んだ
今の状況を確かめるため」
「そして、お前を見て確信した腦のデータ移植は失敗していたのだと」
正吾は、そして口を閉じた。
が思い出したかのように開いた。
「赤い化け物の体液を塗り込んだ武器で人を殺すと『目』になり近似の世界への入り口になる」
それだけ言って、また口を閉じる。
が、まだ言いたいことがあって口を開ける。
「……これを渡しておこう」茶封筒を菜野は、正吾から受け取った。
「なにこれ?」
「あの世界についての、論文が入っている
どうせ私が持っていても意味はない」
「貰っていいのか?」
「ああ、好きに使え」