表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~亜世界転移~  弱虫クソ雑魚鈍才な勇者(一秒のみ)    作者: 赤木野 百十一茄太郎
俺には関係ない
59/89

死刑宣告

利知の大好きな小説「ヂーギンペムルマ」は床に雑に置かれていた。

暗くて、寒くて、悲しさの詰まった部屋の中で。


「利知……言わないといけないことがあるの」アカネが、部屋の隅で縮こまる利知に。

そう話を切り出した。


「利知、あなたはね」アカネは迷っていた、ずっと。

だけども彼女は役割があるから、赤い化け物を殺すために利知をサポートする役割を持っているから。

こんな時でも、話すべきと思った。



赤い化け物は暴走する自分を誰かに止めてほしくて、利知を助け、利知に力を分け与えた。

その説明を利知にしないといけなかった。


そのことを話し(菜野の見たものと同じものを話した)、利知の表情を見ると何も見ていなかった。

俺には関係ないと全身で言っているようだ。

それでもアカネは続ける。


とぎれとぎれの震える声で、利知に言う。

それは死刑宣告。


「……オリジナルが死ねば、コピーも死ぬ」


利知は体のほとんどを赤い化け物の破片で維持している。

つまり、赤い化け物の望み通り利知が殺してあげれば、利知も死ぬ。


それは、別にいいのだ

なぜならその死に方は赤い化け物を殺さないだけで回避できるからだ。

本題はここからだ。


「利知、あなたどうして治癒がいまいち使えない程度に遅いかわかる?」

利知は答えない。

話を聞いていないわけではない。

返事をする気力がない。


アカネは一息で、詰まらないよう言った。

「治癒能力が、時間経過とともに劣化してるから」

言えた、後は流れに乗って言葉を紡ぐだけ。

「それで、完璧に劣化しちゃったらもうあなたは肉体を維持できない」

「そして、そんな状態になるまで今から後数か月程度」

「つまりあなたは逃げようが、戦おうがすぐに死んじゃう」

利知は答えない。

答えない。

無言。

ひたすら虚空をその瞳に写す。


そして、突然一言。

「俺が菜野さんとかに殴れないやつを殴れたのって、俺もあーいう化け物だからなんだな」

そういったのは大した意味はない、ただ気づいたからというだけ。

絶望と疲れを最大限に受けているものにしか出せない疲れ切った声だった。



当たり前だ。

友達は全て殺された。

自分のせいだったりもしたし、自分が殺したことすらある。

本当にただの中学生の利知に耐えれるはずがない。


「……俺にはもう何も関係ない」

また、利知は餓死を待つ。

何日も何日もその時を待つ。


不死に近い存在であること。

それは利知にとって何の得にもならなかった。


アカネは利知に必死で呼びかける。

彼は意識の中からアカネを排除していた。

ただ、死ぬために生きるモノになっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ