そのニュースは普遍的で、ほとんどの奴にとって関係なくてどうでもいいものなんだろう。
朝。
目覚めは最悪。
利知は、トラックに何度も執拗にひき潰される夢を見た。
何度もぶちゅぶちゅと潰され「もう殺してくれ!」と泣き叫ぶが
利知の体は何時ものように治ってしまい。
治ればまたひき潰される。
そんな無限ループを見た。
それは、彼にとって現実にも起こりうることなのだ、気分がいいわけない。
それでも、学校に行かないといけない。
もう一度、古賀に会おう。
そうして、食パンをほおばりながら
ニュースをつけた。
アナウンサーが、悲鳴を上げていた。
「ちょっとカメラさん!画面!画面隠して!」
ビルから、落ちていく青年がテレビに映っていて。
すぐ、落ちるのをやめた。
地面にぶつかって者が物になった。
魂の抜け殻なんてどうでもいい、というようにグチャグチャに。
____しばらくお待ちください____
そんなテロップが出てくる。
「……え」利知は、いきなりそんな映像を見せつけられ困惑した。
即、自分の部屋に駆けこもり
ネットを立ち上げ。
即、即、即!ネット掲示板を確認した。
「大型掲示板の勢いがスゲエ!」
そのページに乗っていたリンクから、動画を見る。
先程のニュースが最初っから乗っていた。
違法アップロードだと、思うがあまり気にせず見る。
「フォバルナエタ会と名乗るものがビルの屋上に!」
ビルの、屋上にたくさんの人が縛られていた。
縛られていない人は立っていた。
縛られてる人とビルに利知は見覚えがあった。
__古賀に教えてもらったビルとそこで会った人たち。___
「古賀……古賀は!?」
縛られている人たちの中に古賀がいないか確認する。
わからない。
画面が遠い。
しかたなくSNSを立ち上げる。
その現場を生放送している奴がいた、電車の飛び込みをパシャパシャ撮りまくるタイプの人が
近所に住んでいるのだろう。
しかし、今すぐ情報の欲しい利知にとってはありがたかった。
しっかり、生放送を見た。
利知は、見なければよかったと後悔した。
縛られていない人が、一人づつ。
ビルから縛った人を突き落としていく。
青年、女、子供、老人。
一度だけ利知と会った人が
容赦なく肉塊に変わっていく。
「古賀……古賀は!?」
利知は必死で古賀を探した。
知ってどうなる?そんな思いもあるが、調べない選択肢はなかった。
そして、いつしか。
縛られてない人たち
までもが飛び降りだした。
どうしてそんなことをするのか?なんて利知には興味がない。
とにかく古賀だ古賀。
いない。
いなかった。
あのビルにいた人たちは皆落として殺されたけど
古賀はいない。
殺されていない。
利知はほっとして「良かったあ……」
「え……?」黙っていたアカネがもらした。
利知は何がそんなに疑問に思うのかと考えてみた。
すぐわかった、体中にぞくぞくと不快感が駆ける。
___あれだけ殺されて「良かった」?_____
人の死に対して利知は、鈍感になっていた。
自分がおかしくなったという恐怖をごまかすように古賀宅に電話をかけてみる。
一応、いるか確認しておこう。そんな軽い気持ちだったが。
『ああ、山坂君!?』電話の向こうから古賀の親の声。
『うちの子が!うちの子がいないの!』
『昨日の夜から!ずっと』
利知は数秒呼吸を忘れていた。
いない、なら。
古賀は、殺されてるかもしれない。
利知と会ったあのビルにいた人たちは古賀以外確実に死んだ。
……ビルにいたことが殺す条件なら、古賀も殺されている可能性がある。
利知は常に最低の可能性を考える。
仕方なく。
学校に体調不良で休むと連絡を入れて
利知は外に出て古賀を探す準備をしながら
どうすべきか考えていた。
___もう、誰にも傷ついてほしくない!____
傷つき続けた彼には、人の痛みがわかった。
もし、古賀に何か危害が及ぼうとしているなら。
もう、利知は震える膝を気にすることはない。