電話
ここ数日、利知が登場していません。
やっぱり、彼がいないとこの作品は何というかしまらない。
一応あれでも主人公だし。
その電話の内容は、このようなものだった。
場所の。
公園の。
強迫。
友達は。
預かった。
スグに来い。
菜野は、フォバルナエタ会と自分を名乗る者からリナを誘拐したという電話を聞き。
公園に呼び出され。
「……菜野さん、ちょっと休みません?僕が行きますから」
「いや、今すぐリナのとこに行く」
ぜーぜー息を切らしながら矢田とともに公園に向かっていた。
「友を……放っておけない」
「僕がどうにかしますから」
菜野は、矢田に連絡を取った。
何かあった時、善人かつ力を持つ矢田は助けてくれる信頼できる人物である。
一応、仲間認定した利知に助けを乞おうかと考えたが
あいつは弱いし、だいたいただの中学生に何を期待しているのかと思い乞わなかった。
で、菜野は矢田とともにぜひぜひ言いつつ走っている。
近所の暗い、不気味な公園。
「オッ来た!」そんな叫びと共に急に菜野は光を浴びた。
まるでカメラのフラッシュ。
思わずのけぞる。
目を細めながら、誰がたいたのかと睨む。
どこかふざけた雰囲気の男だ。
矢田は、菜野をかばうようにして訊ねる。
「お前か!?菜野さんの友達を誘拐して、呼び出したのは!」
「そうだ」
男は_____桂は、手を開いて。
やれやれという感じに首を振って。
「な、なんだ今の動作は……?」
「いや、アンタこんな感じに動いてくれたら写真で映えるかなあって」
「……お前、菜野さんの友人のリナ氏を誘拐したと脅迫したそうだな」
菜野は頷く。
「……ああ、そこのベンチに放置縛って放置してる、持って行っていいよもう用は済んだし」
菜野は、桂の指さしたベンチを見た。
たしかに、縛られたリナが見えた。
周りを見ず菜野は走りだす。
桂のすぐ横を通り過ぎてリナに駆け寄る。
「……気絶はしてるけど、無事か」
「じゃあな、今日は良い写真が撮れた」
「待て!」
矢田は、桂にタックルをかけて押し倒した。
「人ひとり誘拐してタダですむと思ってるのか!?」
「うわ!」桂は悲鳴を上げながら矢田の顔を何のためらいもなしに殴った。
一瞬怯んだ矢田を蹴り飛ばし。
立ち上がって
「ふい~カメラは無事か」首から下げた高級カメラを優しくなで
矢田を睨む。
「お前!壊れたらどうするんだ!」
そんな文句は無視して
矢田は体勢をしっかりととり、桂に向かって走った。
「待て!」
桂は即逃げた、速かった。
矢田よりやや遅い程度。
追いつける、矢田がそう確信したとき。
公園から、桂がでた。
「ッ!」
そして、道路に飛び出す。
危ない!桂に矢田がそう叫ぼうとしたとき。
____________________ガ―――――――――――――!
道路をトラックが、突っ切った。
桂が見えなくなり一瞬桂が轢かれたのではと矢田は思った。
しかし、そういう音がしない。
トラックが通り過ぎ、矢田が道路を見回した時
既に桂はどこかへ消えていた。
「クッ取り逃したか……」夜闇がむなしく広がっていた。