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~亜世界転移~  弱虫クソ雑魚鈍才な勇者(一秒のみ)    作者: 赤木野 百十一茄太郎
一ノ瀬
35/89

少女は

ふう、ミノリ編もようやく終盤ですよ。

赤い、赤いそれはミノリの声を出していた。


「ミノリ……なんで、なんで?」

利知には、分かってしまった。

その赤い化け物はきっと以前見たのとは別の個体だと。

フォバルナエタ会らしき奴らを重点的に殺していたのは

__私が!守りますから!__

ミノリだから。


錐のように人が赤い化け物の体液を飲み

その化物になり「かけ」た光景を見ていなくても

利知はわかる。

誰かのせいで彼女がその姿に変わってしまったことを。


そして、不運なことに利知は理解できてしまう。

錐を、彼女が殺し自分に「殺して」と懇願してきたから。

ミノリが元に戻ることはないということを。

元に戻ることが出来るなら人がこんなに絶望に染まった声は出せるわけないということを。


ミノリは必死で利知に向けて願いをしてくる。

「……変な人に……赤いの……飲まされ……て」

苦しそうで聞いていてツライ。

「・・・・・・わたし……ぼう・・・・・・そうしちゃう」

「……ころ……して」


絶望的な状況であることは間違いなかった。

ミノリはフォバルナエタ会に赤い液体を飲まされ

赤い化け物にされ。

そして、赤い化け物になったミノリは「暴走」するのだという。

利知は先ほど目の前でミノリに錐が殺されたのを思い出す。

錐の死体に原型はない。


ミノリが「殺して」というのもわかる。

自分の意思じゃないのにそんなことさせ続けられたら発狂してもおかしくない。


それでも、利知は。

ずっとずっと孤独だった自分に希望を与えたミノリを

諦められない。


「俺はミノリが好きだ、殺したくない」しっかりと、利知はミノリに答えを返す。

だが。

その言葉で少しだけ、一時的に正気に戻ったミノリが

「わたし……ばけものだから」と言い、利知はミノリに歩み寄る

そして怒鳴るように

「お前が化物かどうかなんか関係ない!俺だって人間じゃないんだ!」

利知は、ミノリに色々と言いたかった。


お前がそんな姿でも関係ない

お前が人を殺すなんて関係ない

お前がどんな存在だろうと関係ない


でも、利知はそんなこと言えなかった。


でも、ミノリは苦しそうに呻く

「……の……海岸」必死で利知に何か伝えようとしていた。

なのに「あああああああああああああああ‼‼‼‼‼」

獣のような咆哮をあげミノリは暴走した。


利知をまるで泣いているかのように殴り飛ばし。

吹き飛ばされた利知は、足が吹き飛んでしまったがそれでもミノリに近づこうとした。


どこかからか駆けつけてきたフォバルナエタ会の(はずの)男がミノリに銃を撃っている。

銃弾は効いていない、というかなんだかすり抜けているようだが

あの男はきっとなにかミノリを殺さないと理由があって逃げないのだろう。


利知は、少し微笑む。

男が足止めしてくれている。

間に合う。

ミノリのとこまで行ける。


「クソ!化け物に普通の武器は効かねえのか!」男が叫んでいた。


間に合わなかった。

ミノリは一撃のパンチで男を叩き潰す。

まるで機械のような無感情な一撃だった。


そして


ミノリは壁に穴を開け

「ミ……ノリ」

そこから、でて行こうとしていた。

利知は自分の脚の治癒が遅いと心で文句を言いながらミノリの元へ這いずる

なのにミノリは止まることはなく。

ぼそぼそとくちを動かして

穴から飛び出す。


最後に彼女はこう言ったように利知は聞こえた。

『はやく ころして』

利知の不幸はまだまだこれからです。

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