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~亜世界転移~  弱虫クソ雑魚鈍才な勇者(一秒のみ)    作者: 赤木野 百十一茄太郎
一ノ瀬
32/89

それでも、だけど、しかし、やっぱり

白紙錐は。

それを見ていた。

赤い赤い液体を飲み込まされた人が

腹をおさえて苦しむ。

体中から、固まった血が噴きだそうとしていくつもの膨れを作り

ぶちゅぶちゅと膨れ上がった皮膚が破裂し血を飛び散らせ。

その人は死んだ。


「……これが、”適応”出来なかった末路……」

錐は、憤りを露に歯ぎしりした。

「赤い化け物になることが許されなかったものの末路……!」




利知の心は平穏を取り戻し。

今日も今日とて笑顔で学校に来ることが出来ていた。

ここ何日間かは、フォバルナエタ会だのといった異常に巻き込まれない

ので、かなりいい気分だった。


もちろん、巻き込まれないことだけがその気分の理由ではない。

ミノリという仲間を得たことも利知の心を癒した。

菜野や矢田、錐は、敵と「戦おう」としているし

麻が死んだしでミノリが仲間になるまで利知が信頼し、共感できるものがいなかったのだ。


だが、今はいる。

今は不安をぶちまけられる。

安心できる相手がいるから。


学校で利知は古賀とヨモギに「おっはよう!」と底抜けの明るさで挨拶した

「何……何よアンタ、なんでそんなに明るいの?」と古賀が利知はもっと根暗だろと

いう視線を浴びせてきたのは若干傷ついた。


そして利知は誰もいなくなった麻の席を見つめ

少しさびしさを感じ

次にミノリの席を見て

「……ミノリはどこだ?」呟いた。

「ああ、また後ろかな?」振り向く、誰もいない。


少し心配しながら朝礼が始まり、出席確認の時間

上松が「あれ、ミノリの欠席理由誰か知らないか――?」と聞きだした。

それを聞いて

利知は自分の鼓動が早まっていることに気づく。

___大丈夫、こんなことよくあるきっとミノリは風邪でも引いて

ただただ学校に連絡してないんだ____

利知は自分の心に不安が染み込んで、広がっていくのがわかった。


__大丈夫、おれはネガティブになり過ぎなんだ___

不安がひたすらに満ちていく。


「……だれも知らないのか?まあしょうがない」

朝礼が終わった後、利知は自分の顎から滴り落ちる汗が机に小さな水溜まりを

作っていることに気づいた。


利知は必死でネガティブを頭から追い出そうとしていた。

そうだ、今日は4時間授業だから昼に帰るんだ

家に帰る前にちょっとミノリの家に寄ってみよう

ああ、風邪ならお見舞いの品いるかな?

そんなこと思いながら。

自分は弱気になっているんだ、そう必死で思おうとした。


そして、授業が終わり。

放課後、利知は他のことに目もくれず掃除当番としての仕事を

素早くちゃっちゃと終わらせてミノリの家に走った。


必死で作り上げた脆く優しい日常が崩壊する音を聞きながら

利知は走る。

こんな音気のせいだ、俺がおかしいんだ、ちゃんと現実を見ればきっと

きっと優しい世界が見えるんだ。そう、自分で自分に言い聞かせ。


屋敷が見えた。

利知は足の回転を速める、スピードに体がついて行かずすっころび体中に擦り傷を作るが

すさまじい速度で治っていくのを走りながら確認してわき目も降らず走った。


そして、屋敷の門。

利知の心に満ちる不安がじわじわと、利知の体に漏れ出す。

利知は自分の体が冷えていくのを感じた。

血の匂いがする。

何度も何度も流して浴びていやというほど理解したその赤い液体の匂いがあたりを漂っている。


利知はそして短く悲鳴を上げ尻もちをつく。

「何で、何でこうなるんだよ……!?」

ミノリの門に立っていた黒服の門番がいたから。


彼は

頭をかちわられ、脳みそと血をぼちゃぼちゃと垂れ流して

死んでいた。


利知にはそれだけで、わかってしまう。

何度もこんな状況にぶち込まれた利知は

ミノリに何かあったと瞬時に察してしまう。


「ミノリ……!ミノリ……!」

ふるえる体にイラつきながら何者かに壊されて誰でも通れるようになった門を通過する。

利知は泣いていた。

「何でこうなるんだよ……」弱々しく、言葉を漏らした。

ミノリのところへ行かないと、利知はそう思った。






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