亜世界転移 年上のヒロイン
メインヒロイン 菜野 登場とか言っておきながら恋愛要素は第二章「ミノリ」までないのはごめんっちょ。
利知は、謎の世界に行ってから。
特に何もなかった。
何か謎の組織とかに追われたり
化け物と戦ったり。
そんなことは起きなかった。
しかし、利知はまだ少しあの日の出来事を気にしている。
あれはもしかして幻覚だったのかと悩みながら
利知は、中学校で数学の授業を受けていた。
だから。
ぼんやりしていて。
利知は
「はい、山坂、この公式の答えは」
先生にあてられて、あわてて立ち上がった。
と書いてあげたいが、少年は立ち上がるのにも一苦労する。
まず、立とうとして椅子を引いた瞬間、椅子の足が折れて転倒し。
転倒した先に、臆病な癖に体の強い女子がいて。
「こないで!」と利知を蹴り飛ばし。
自分の机に転がりながら頭をぶつけ、痛がりながら立ち上がろうとした瞬間
異様に滑る床で滑り、後頭部を強く打った。
そして、利知は気絶した。
先生はぼんやりしてる奴に、答えられない問題を聞き
それをきっかけに叱ろうという魂胆だったが。
これには苦笑いしかできなかった。
そして、利知は救急車を呼ばれた直後に目覚め
その後もなんやかんやあって。
今、学校から帰っている様子は普段より貧弱そうだ。
河原沿いをふらふらと歩いている。
彼の前に、クソダサファッションの女が立ちふさがった。
ジーパンは普通だが
ぼさぼさの長髪と、かわいらしいフォントで「太郎」と書かれたTシャツが
あまりにもかっこ悪い。
利知は女をスルーして帰ろうとしたが。
「待て」
と肩をがっちりつかまれそうもいかない。
そして、変な奴に絡まれた利知の膝は
がくがくと震え今にも崩れ落ちそうであった。
だが、それでも。
「ナッ、なんでしょうか?」
どうにかして恐怖の中声を絞り出す。
若干対人恐怖症気味、と利知は自分のことをそう思った。
女はそんなヘタレと対照的に。
フランクに話す。
「おー、お前コミュ障?あ、わたし 好 菜野 (こう なや) 22歳」
好、と名乗る女はそのまま続けた。
「お前あの世界行ったろ、私も行ったんだあそこ
はじめて見たぞ、私意外にあそこ行ける奴」
あの、と言われ、利知はピンときた。
亜世界と名付けたそれだ。
しかし利知は喚いた。
「俺は何も知らない!何も関係ない!関わりたくないんだ!」
しかし。
午後6時 裏路地のつぶれかけのカフェ。
そこに利知は連れ込まれた。
客がまばらで、コーヒーは不味くて、不気味だ。
「で、あの世界を私はDWと呼んでる、正式にはディメンションワールド」
利知は、好があまりにも強く「話し聞けよ!」
というのでビビッてついてきてしまった。
後悔する、家に帰って大好きなアニメの録画みとけばよかったと。
ひたすら、好はDWを説明する。
利知が何を話せばよいか理解するために必要なことなのだと。
だが、説明が長いので、聞きたくないなと利知は感じた。
長すぎて頭に入ってこない。
「あれは意識が形作る空間」
「あれは夢のようなもの」
「あれは」
あれはあれはあれはあれはと、回りくどい言い方ばっかりするので
利知は眠たくなった。
なので、菜野はかいつまんで DW と呼ぶそれのルールを教えてくれた。
最初からそうしろ。
ルール
1. DWの中での時間はDWの外よりとてつもなくゆっくり進む
2. DWには自分の肉体ではなく意識が行っている
夢の中のようなもの
3. 行く方法は「目」と自分の目を合わせること(そうなった時点で強制的にDWへ行かされる)
帰る方法は、そこで、誰かの命を助ける
4. 菜野と利知しかいまのところDWに行けない
理由は不明
5. DWには、誰かと接触していればいっしょに行ける
6. その他のことは一切合切不明
もしかすると、DWで死んだりすると現実の自分も死ぬかも
DWDWDWと、その呼び方が微妙に利知は嫌だった。
自分の名付けた亜世界という名前で呼んでほしかった。
そんな子供っぽいこと口には出さないけど。
「あなた、よく話してますけど、それを聞いた俺にどうしろと?」
コーヒーをすすりながらたずねた。
菜野は「ん、いや、なにかDWについて、私の知識にない
情報ない教えてくれないかなって
後、DWに関わってるっぽいフォバルナエタ会と戦ってくれないかなって
アイツらなんか、悪いことしようとしてるっぽいし」
ナエタという間抜けな響きに脱力しそうになる。
しかし、利知はそんな中、恐怖する。
「俺はそんなことと関係ない!平和に生きたいんだ!
というかなんでアンタはあの会が悪いなんて言える!」
利知は叫んだ。カフェの店員が利知たちを見つめているが無視。
わざわざこんなつぶれかけの店に来る奴なんて変な奴だと元から思っているから。
しかし、利知と対照的に菜野は冷静だった。
「はっはっは、お前なあ、あんな世界に入れる時点で平和に生きれないって
あの世界で何か、変なもの見なかったか?お前を狙ってそうな」
会とどう関わっているのかは雰囲気でごまかされた。
そして。
利知は、赤い何かを思い出すが、記憶を必死で閉じ込める。
アレに自分が狙われてるなんて考えたくもない。
ちなみに利知は会の名前を聞いた時
頭の中でこの世界の常識を思い出していたが
わざわざ口には出さない。
フォバルナエタ会と言えば、あの正体不明の団体だろ?
なのに、いろいろなえらい人が入ってて、めちゃくちゃ力を持ってる。
この2022年最大の謎の組織!
と、頭の中で言った、地味に今2022年とも言ったが。
それも特にいう必要は無いので言わない。
「ま、これを見ろ」
菜野は利知の手を掴み、彼にスマホの画面を向けた。
そこには、変な画像がうつっている。
三角だの四角だのと言った図形が規則的に並んだ。
利知がそれを見た瞬間。
音が1メーター進むより短い時が流れた。
周りの人が消え。
またしても、亜世界(もしくはDW)らしき世界になった。
菜野は淡々とに利知に話す。
「大丈夫、犯罪とかはしないって、もし戦いたくないなら
戦わなくていいけど、連絡先だけでも教えて
協力しようよ」
菜野は、へらへら笑いながら、状況を飲み込めていない利知を勧誘する。
「ああ、そうだ、ここはDWじゃない別の世界
ドリームディメンションワールドだ、略してDDW
この画像を見ることで行き来できる」
利知は渋々、スマホの電話番号を教えた。
菜野が「教えてくれないならお前この世界において一人で帰る」
なんて脅すので、ビビったのだ。
そして、家に帰って利知は自分が何か変なことに巻き込まれていることに
枕を濡らした。