少年の精神は蝕まれる
矢田は利知についてうろつきまくって調べていた。
菜野は自宅で寝ていた。
白紙錐は昼飯に屋内でチキンライスを食べていた。
利知は追い詰められていた。
自殺願望をもって
さびれたビルの屋上にいたのであった。
「ここなら……だれも、気づかない」
利知は、転落防止用フェンスの向こう側へ落ち。
その身は重力に逆らおうともせず。
物理法則に従ってぐんぐん落下し
そして、地面に叩きつけられ。
パン、と体がはじけ飛んだ。
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数時間して
「なんで」
利知は血だまりの中立ち上がりながらつぶやく。
死にたかったのに、死ねなかった。
また、ケガは治ってしまった。
自分のせいで、麻は数々の障害を負わされ
その挙句に何者かに射殺された。
そう思うと利知は耐えられず
死のうと思った。
なのに彼の体は怪我を直してしまう。
彼がわけのわからないうちにそういう体質にされていた。
「何でだよ……?」
ぼろぼろ涙を流しながら
利知はふらふらと目的もなく歩いて行った。
自分の血をぐしぐし踏みつけながら。
頭の中で普段べらべら喋ってくるアカネは
今日はだんまりだった。
なぜなら利知を言葉で救うにはどうすればと悩んでいたから。
実体のない彼女には利知を抱きしめることが出来ないから。
そして、河原に出て利知は
また、麻や自分をおそった不良を見つけた。
利知の中で、怒りが沸き上がる。
「なんっ……でだよ?なんの意味があって麻を?」」
今すぐ殴り飛ばしに行きそうになるのをこらえる
自分に言い聞かせていた。
辞めろ、俺は弱い。勝てるわけがない。
だいたいあいつが勝手に麻をボコボコにしたんだ
俺は無関係だ。
恐怖から
そう言い聞かせて鼻水を垂らしながら踵を返し逃げ出した。
翌日。朝。
学校に利知は来た
手首を切ったのに、もう治っている。
学校は麻が死んだことの話しで充満していた。
利知はラノベを読む気力も起きず
机に突っ伏してどうやって死のうかと悩んでいたら。
「山坂君?どうされましたか?」
ミノリに話しかけられてビビった。
「なっなんでもな」
「利知くん?」突然の下の名前呼びに利知は困惑。
「今日我が家にきてくださいまし」
利知は、突然の展開に困り
麻のいた席をみる。
「……そんな気持ちじゃない」休息にミノリへのピンク色の感情が
溶けて行った。
「麻君に関係することです」
利知が、聞き返そうとした瞬間。
HRが始まってしまった。
そして、放課後まで利知がミノリと話す機会はなかった。
そして、その放課後。
ミノリについて行き利知は
またしてもビビる。
彼女が「自分の家」と言ってるのは
明らかに日本にありそうにない
大きな大きな洋館だった。