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~亜世界転移~  弱虫クソ雑魚鈍才な勇者(一秒のみ)    作者: 赤木野 百十一茄太郎
現ハは非現ヲ交錯サセル
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1話 山坂 利知 亜世界へ行く

……認識の話。

もしもあなたが見ているものが仮想の現実だったとして、その外も仮想として

それだとその外も空虚かもしれない。

無限に空虚が続いていく。

新幹線の脱線事故が起きた、それは昔の話であるが。

それはとてもとても多くの人の運命を変えた事故だった。

とくに、山坂利知。

その少年の運命が。


中間テストが終わり

5月と6月の境目くらいの頃彼ら二人は学校からの帰路についていた


一人は山坂利知、彼は中学二年生になったばっかりの少年だ。

非常に顔立ちがクール、つまりはイケメンである。

どうでもいいが、髪は短く切っている。

そんな利知は陽火町という普通のところに住んでいる。


そして、彼は今学校からの帰り道

友達と話しながら帰るという普通のことをしていた。

その友達の名は  麻  という

猟奇殺人事件だのと言った話が大好きで今も利知にしている。


利知としては自分と関係ない話なので、興味ないが麻は気にせず話しかけてくる。

「被害者が自分の大腸で首つりしててさー

他には・・・ああ、デブの腸が抜き取られてる事件もあった」 

利知は腸が超、好きなの?と言いたくなったが。

「それ」に気づいて立ち止まる。


_何あれ?_

アスファルトにシールのようなものが張り付いている。

瞼を閉じた人の目のような。

いや、違う。

ゲームのし過ぎで視力の落ちている利知にそう見えただけだ。

そろそろメガネをかけるべきの彼は気づく。


シールなんかじゃない。

アスファルトに、眼球が埋め込まれている。

利知は恐怖心から腰を抜かした。

ゆっくり、ゆっくりその瞼が開いていく。


「うわっううわあああひっひい」

情けない悲鳴を上げる利知の周りが。

千分の一秒に満たない時間で。空間が。世界が。

姿を変える。


周りの街並みの中から、生物が消えた。

麻が、猫が、蝶が。

忽然と姿を消した。


それはまるで異世界に入り込んだように利知は思えた。

しかし、元の世界とほぼ変わらないのだから。

「亜世界、とでも言おう」

少年は一人呟いた。


いや、生き物はいた。

二人の、生き物が。


そして、遠くから中年男性が利知に向かって走ってきていて。

途中で、倒れる。

男性は若い別の男性に後ろから切り付けられ。

抑え込まれ刃物でめった刺しにされ。

死んだ。


利知はそれを助けることは恐怖心からできなかった。


そして、死体はいつの間にか消えていて。

また遠くからさっき死んだ中年男性が利知に向かって走ってきていて・・・

また、途中で倒れて。

そして、また若い男性に殺された。


事象が繰り返している。


「まさか、な」それを思いついた利知は、試すことにした。


また死体は消えていて、遠くから中年男性が利知に向かい走ってきていた。

利知は、彼の後ろに走り込み、若い男性と彼の後ろに回り込み。


若い男性を説得しようとした。

「やめてください!殺して何になるんですか!?」

と叫び、若人をにらむ。

しかし、若人は止まらず。


ふるえる膝では、利知はそれを避けれなかった。

利知の脇腹には、とても深く。

その刃物が突き刺さっていた。


「うっぐ!」

利知は焼けるような痛みに倒れ、

深々と突き刺さたそれを引き抜こうとしたが

あまりにも痛くて、抜けずに泣く。


「あっ、あがっ」

苦しむ利知に、優しい声がかけられる。

「ありがとう」

利知は苦しみながら声の主を見た。

中年男性。だった。


少年の試行は正解だった。

_誰かが死ぬのを止める_

そうすることで、このいびつな状況は止まる。

そう考えたのは、中年が死ぬ瞬間、時が繰り返すからだ。


そしてまた、人が認識できないほど短い時間が流れる。

これで、元の世界に帰れる、と思った利知の前には。


赤い、赤い巨大な何かが、立ちふさがった。

先ほどまでそこにいなかったのに。

周りのものが突然姿を消すように、突然現れた何かは。


利知にゆっくりゆっくり近づいてくる。

その赤いものは本能的に恐ろしいものとわかる。

それほど恐ろしいものだった。

利知は、「誰かっ誰か助けてくれえええええ!」情けない悲鳴をあげ助けを呼んだ


また、一瞬という言葉で表すには短すぎる時間が流れた。


利知は、元居た世界に戻っていた。

脇腹の傷は癒えていて。

利知の隣には麻がいて

「どうした?なにかあった?」と聞いている。


利知は言った。自分に言い聞かせるように。

異常な出来事から逃げるように。

「・・・なにも、無かった!」

少し沈黙してからのその言葉は利知の願望である。

そして、現実逃避でもある。


しかし、少年の恐怖心は「逃げ」以外の選択肢を生まなかった。



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