亜世界 赤い化け物
あと一人でメインキャラが出揃うので、頑張ろう。
利知の目の前で妖精が踊る。
恐怖からくる幻覚。
手で振り払い、走りながら後ろを振り返ると
赤いそれが追ってきていた。
何とも似てない生き物。
いや、そもそも生き物か?と利知は疑問に思った。
それは、立体的な楕円に近い形。
つまり⊂⊃←こんな形をしている。
それの片方の極に、逆関節の二本脚が赤く有り。もう片方の極に人間のものと同じ形の
巨大な日本腕があった。
それで、どっしどっしという動きで利知を追ってくる。
腕が生えているほうの極にでかい口があった。
人のものと同じ。
ガチガチ、開閉し歯を鳴らしている。
利知は、その化物を赤い化け物と呼ぶことにした。
名前を付けることで、存在が身近になり
怖くないものになる気がした。
もちろんそんなことなかったけど。
利知は、化け物からアカネの指示で逃げ続け
もっと早くと右足を前に、左足を前に
走る。人が少ないといっても多少は、いるもので
サラリーマンや、少女を追い抜いていく。
流石に走りながら振り返り彼らに「逃げてください!」
と叫んだ。
しかし、後ろから何かがぶちゅと潰される音や
ガンッ、なんて巨大な音が鳴る、
深く考えていたら立ち止まってしまう。
何よりも、怖くて利知はその二つの音が
何なのか、確認はあえてしなかった。
何となく、殺されたと、分かるけど、分からないふりをした。
今日は妙にスピードが出る
普段は遅いが。
利知は、必死でそのスピードについていこうと
脚の回転をはやめるも、スピードが速すぎた。
利知はついて行けず、左足をひねって転倒してしまった。
「痛い……」
どうにかして立ち上がろうとする。
近くにあった自販機にもたれかかりながら。
赤い化け物を見ると、ぐんぐん距離を詰めてきていた。
「うっうわうわ、誰かあ!だれかあ!」
広い通りに悲鳴が響く。
だが、辺りには既に孤独が満ちていた。
ただそこに化け物と利知がいるのみ。
「ひい、ひい」
足の痛みに泣きそうになりつつも、必死で前進する。
もう少し、そこの角を曲がれば
一応に人がある程度多い所に出る。
足を引きずっている彼には、そこへ行くことは許されなかった。
赤い化け物は跳び
利知に先回りした。
そして、利知をその極大な腕で殴り飛ばす。
「あがっ!」
苦痛に声をあげ、利知の体は宙に舞った。
それを化け物はキャッチ。
利知の右腕があらぬ方向に曲がっている。
赤い化け物は、利知の目の前でがちがちと歯を鳴らしながら言った。
「わ・・・・・」___喋った?___
利知は化け物に握られ、逃げようとしながらアカネがこいつのすぐそばで
呆けているのを見た。
助けてくれ、と元気なく言う。
彼女があくまで利知の脳内の存在で、実体がなく無力とわかっているから。
「わ・・・が・・・・」
足をブンブン振り回し、体を揺らし無駄な抵抗をするが
どんどん、利知を握る手の力が強くなっていく。
「わ・・・・が・・・・・・子・・・・・」
利知はそれを聞いて、驚きのあまり一瞬抵抗をやめた。
それとほぼ同時に、化け物も握殺をやめる。
利知の体は地面に落ち、地面に腰から叩きつけられる。
見上げると、化け物は呆けてる。
力が抜け、魂が抜けたように。
利知はこいつからとにかく逃げようと、上手く動かない足と
アドレナリンで痛みを失いつつある右腕に苦戦しながら這うように逃げた。
アカネは、利知に何も言わなかった。
そして、だんだんゆっくりと走れるようになってきて
利知は角をようやく曲がる。
「い!?」通りに出た、普段人通りの少ないところ。
今はめちゃくちゃな人通りが多いところ。
普段は静寂と切なさにあふれてるくせに今は人人人と混雑中だ。
「なんで!?」
走り抜けようとするが、あまりに多い人波に弾き飛ばされる。
たくさんの人が、利知を見ていた。
利知のすぐ後ろで、化け物が拳を振り上げていた。
何か言いたげにがちがち歯を鳴らしながら。
「ぁ」利知の喉から声にならない声が漏れる。
自分の生が終わる事を察したから。
そして、拳は勢いよく振り下ろされ。
ただ、アスファルトを砕きながらめり込んだ。
「おい……大丈夫か?」
利知を助けに入ったのは上松。
担任教師だった。
彼は、利知を抱え走った。
すさまじい瞬発力だ。
「ぁ」色々言いたいことが利知にはあるが、声が出ない。
「ま、俺は大丈夫だ 気にするな、逃げろ」
上松は、利知を優しく立たせ。
腕を伸ばしながら化け物に振り替える。
腕を必死でアスファルトから引き抜こうとしていた。
「なにしてんだ、逃げろって」
利知は、上松に礼や様々なことを伝えたかったが
今は言われるがままに動くのが精いっぱいだった。
少年は
違和感を感じながら、走った。
利知が逃げた後、集団が赤い化け物を囲んでいた。
銃を持った数十人の男女だ。
バンッ!バン!バン!ババババ!と化け物に発砲がなされた。