白紙 錐その2
ああ、そろそろDWでちらりと出た、赤い奴の登場です
(後二、三話くらいかかるかもしれませんが)
「あつっ・・・・・・・」
コーヒーが熱くて、利知は思わず顔をしかめる。
オシャレで、高級そうなわりに客のまばらなカフェで、セクシーな女性と
向かい合ってティータイムをしていれば
ヘタレ少年は緊張する。
かっこ悪いところを見せられないとぎくしゃくし、かっこ悪くなる。
最も、利知が緊張しているのはそれだけの理由じゃない。
向かいの席の目の前の女が、白紙錐 つまり、フォバルナエタ会のメンバーだからだ。
利知は逃げたかったが逃してくれない。
「何を見たんだ!?」と大声で錐が聞いてくる。
だから
「じゃあ、ひ、人目につく場所で話しましょう!はい!」
と提案したら、意外と受諾してもらえた。
利知は、安全を確保したく
錐は、利知からの信頼がないと話にならないと判断したからだ。
「……で、なんですか俺に教えろって、俺としてはあなたたちフォバルナエタ会
が何者かとかさっきの学校の惨状だののをむしろ教えてほしいんですけど」
少年は錐は今回かなり冷静で安全な状態とわかっているので
はきはき堂々と喋れている。
彼はさっきまで取り乱していたが、錐と会ってコーヒーを飲んだら
落ち着いた。
錐は、紅茶をごくごく可憐に一口飲み、答えた。
「あなたは、なぜ狙われているの?何を知ってるの?」
利知は驚愕した。
「何で知らない?」
「私はね、そんないい地位じゃないのよ、この前どうにかしてフォバルナエタ会に
入ったばかり」
どうやって入るのか?やどうやって会にたどり着いたのか?
など利知は興味はあるが大事じゃないと思うので聞かなかった。
「あそこは、何を組織立ってしてるのか?会員はいったいどんな人なのか?
一切不明」
利知はその話を何となく知っていた。菜野と話したこともある。
「そして、会員ですら一切合切わからない、なにをすればいいのかも教えてくれない
だから、勝手に動く、フォバルナエタ会のメンバーとして」
「は?」利知は切れそうになった、そんな意味不明な組織おかしい。
目的のない意味のない集団。
なんじゃそりゃと、叫びたくなる。
こらえる。
「……それで、俺は本当に関係ないし、俺は本当に何も知りません」
「嘘」
錐が急に冷たい瞳になり、彼女の体から温かみは消え危うさだけが残る。
その瞳は利知を見ていなかった。
強くカップの取っ手を握っている。
いったいなぜ彼女はそんな目つきになれるのか?
利知は、震えた。
「絶対にウソ、ホントに関係ないならあなたは
十三年も監視されていない」
利知が今コーヒーを飲んでいたら噴き出していただろう。
「ジュ、十さ・・・・・・・」利知の年齢と同じ、つまり生まれたときからの監視。
「あなたは、何を見たの?」
「な・・・・なにも」
「何を見たの?何を知ってるの?」
食い気味。
「だから・・・俺にはなにも関係な……」
「何を見た?」
だんだん、語気は荒くなっていく。
しかたなく、利知は話し始めた。
DW、DDW、好菜野。
「それだけ?本当に?」
錐は、利知に対してとてもとても冷たかった。
まるで氷のよう。
利知は、必死で思い出す。
錐が机を人差し指で叩いていて、その音が強くなっていっている。
そして「あ、赤い・・・・・」
DWに行った時、最後にちらりと見たそれを思い出した。
「赤い、何?」
「あ、赤い化け物・・・・・・・」
必死で言葉を紡ぎだしていく
「そう、その化け物はどんな奴?嘘をつけば……」
錐は、指の動きを止めた。
「……嘘をつけば、分かるわね?」
そして利知を野獣のように睨む。
「わ……わかりません」
流石にどもりながら、答えると。
「そう」
冷たさが消え温かさが戻ってきた。
冬が春になるように。
「ありがとう、ほら、これでティラミスでも買って帰りなさい」
机に、千円札を二枚置き、錐は立ち上がった。
利知は、椅子に座ったまま動けなかった、緊張がまだ解けていない。
手を振って、店から出る錐を見ながら
疑問に思っていた。
利知の頭の中で声が響く、アカネの声だ。
「あの人……フォバルナエタ会のメンバーってホントかしら」
利知は小声で返す。周りに気づかれないよう。
「なんというか、会に忠誠を誓ってるとかそういう雰囲気じゃないよな……?」
「むしろ、恨んでるみたいな」
復讐、その二文字を利知の脳が浮かべる。
利知は、ずっと変で不気味で異様な出来事と
まだ、たいしてかかわってない、まだ手を引ける、逃げれる
そう思っていた。
だが
____十三年前から監視______
そうじゃない。
深く、生まれた時から、ずっと関わっている。
泣きたくなったが、利知は泣かなかった。
もうそういう出来事に慣れてきたのだ。