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もしもこの世界で、あなたと  作者: 白銀
第1章〜校内戦闘〜
9/52

第9話 遠出

0.


湖也は駅の駐輪場に自転車を止めた。

ここは学生のために駐輪代を無料にしてくれるから有難い。

そのまま駅に入る。

切符を買い電車に乗った。

席に座り、スマホを見る。

もう一時間目が始まっている時間だった。

もう先生には無断欠席がバレているだろう。

親に電話がいってるかもしれない。

だが構わない。その時はちゃんと話そう。

とにかく今日は無理だ。


1.


「湖也…」

天が呟く。

時刻は八時三十分、ホームルームが始まる時間だ。

湖也の席は空いていた。

遅れて来る可能性もあるが、天は何となく察していた。


もう湖也はいじめに耐えられなくなり学校に来なくなってしまったんだと


それは陸も理解していた。

ホームルームが始まったが、湖也がやって来る気配はない。

学校に来て欲しかったが、こればかりはどうしようもない。

学校が元に戻らない限り、湖也の心の疲れは取れない。

一旦離れて心の疲れを取った方がいいのかもしれない。

そう思いながら陸は天の席へ向かう。

「来ないな。湖也」

「それだけ湖也の心は限界まで来たって事だね」

湖也は家にいるのだろうか

それともそこら辺の公園で暇を潰しているのだろうか

それともどこか遠くへ行ってしまったのだろうか

二人が考えていると、クラスの数人が近づいてきた。

「今日は最カイ君来てねぇみてぇだな!」

「とうとう学校来るの嫌になったのか?」

「おもちゃがいなくなったのは悲しいが、また今度来た時に遊べばいっか!最カイ君がいなくて寂しいでちゅねー二人とも!ハハハハハ!」

陸は奥歯を噛みしめながら無視をする。

そいつらがどこかへ行くと、天は口を開いた。

「もうカイって呼ぶのはやめようって事になったのに、あいつらに広まってやがるぅ」

「ネットと同じだやな。一度世に出回ると取り返しのつかない事になる」

ちょっとした発言が、大きないじめを招くかもしれない危険。

考えてから発言をしなくてはいけない世の中。

「なんか、めんどくさくなっちゃったよね…」


チャイムが鳴り、先生が入ってきた。

先生は出席を確認すると、湖也が来ていないことに気づく。

(やっぱり学校に来なくなっちゃったか…大丈夫かな…)

「湖也君が来てないけど、誰か事情知ってる人いない?」

一応聞いてみる。

陸と天が何か言おうとしているが、人差し指を口に当てて黙ってもらう。

クラスの反応を見たいのだ。

「知りませんよあんなやつ」

「無断欠席ですよね?親に電話した方がいいんじゃないですか?」

「学校サボるとかマジ底辺だよね」

まあ、そうなるわよね。

先生は湖也の席を見る。

そこであることに気づいた。

(あれ?どうして?花蓮ちゃんもいないの?)


無断欠席なので本当は親に連絡しなくちゃいけないが、湖也に悪いかなと思い、電話はかけずそっとしておくことにした。


上伊は席に座りながら顔を真っ青にして下を向いていた。

とうとう三村が学校に来なくなってしまった。

ここまでする必要はなかったのに。

もう学校を戻していいんじゃないかと心の中の自分が言う。

だが戻せない。

怖くて戻せない。

誰でもいいからこの状況をどうにかしてくれ。


2.


湖也は電車に乗りながら外の風景を見ていた。

朝日が眩しく見える。

朝の街の風景というのは美しいものだ。

そんなことを考えていると、隣から声が聞こえた。

「あれ?湖也じゃん⁉︎」

振り向くとそこには一人の少年がいた。

名前は木田竜希(キダタツキ)、中学の頃の湖也の友達だった。

「おー竜希か、久しぶりだな」

湖也は元気のない声で話す。

「高校に入ってから俺たち会わなくなったよな」

「忙しいからねー」

「ていうかどうした?お前電車通学じゃないだろ?」

「んーまあちょっとね…」

「湖也元気無いぞ?大丈夫か?」

「大丈夫。そっとしておいてくれ…」

今いじめられてますなんて言っても竜希がなんとかしてくれるわけじゃ無い。竜希じゃ力不足だ。

しばらくの沈黙の後、湖也があることに気づく。

「そういえばお前の学校に黒木花蓮って奴いた?」

「ん?あぁ同じクラスだけど、どうして?」

「どんな奴だった?」

「んーなんか変な奴だったな。よく校長室に入ってくのを見かけるって聞いてるけどけど何してるか分からん。授業中とかスマホいじってるくせにテストの点数高いらしいし。あ、最近見てないなーとうとう不登校になったのかな?」

「そうか…」

花蓮はクラスのみんなに転校のことを話してないらしかった。

ていうか、先生にも話してないのかもしれない。

たしかに授業中スマホをいじってたりどっか行ってたりしているが、何をしているかは湖也も知らない。

話しているうちに電車は駅に着き止まった。

湖也はどこに行くかも決めていなかったが、このまま竜希と一緒にいるのは色々まずい気がして、電車を降りた。

「ん?降りるのか?」

「あぁ、お前は学校頑張れよ」

「?」

最後の言葉が竜希の心に引っかかったが、聞く前にドアが閉まってしまった。

「あいつ本当に大丈夫か?」


湖也は他の電車に乗る。

とにかく遠くに行こうと思った。


電車に乗ってからどのくらい経ったのだろうか。

湖也はすでに分からなくなっていた。

湖也は電車を降りて駅を出る。

大都会に来てしまったらしい。

沢山の人が歩いており、田舎者でさらに普段あまり家の外に出ない湖也は急いでその場から離れようとする。

あまり人通りの少ない道を歩く。

道を歩いている殆どが大人で、一人だけ制服の湖也は目立ってないか一瞬心配になったが構わず歩き続ける。

「…まあゆったりぶらぶらしてようかな」

ゲーセンで遊んでやろうかとも思ったが、今はそんな気分じゃない。

あまり来ないところだが迷子になってもスマホがあるし大丈夫だろうということで特に目的地はないがぶらぶらすることにした。

孤独な旅ってのはいいものだ。

誰かと一緒に行くとその人の都合に合わせてあらかじめ計画を立てなきゃならないため、思う存分楽しむことが出来ない。

一人ならば好きなところへ行けるし、好きな物を買える。

数分歩くと、商店街についた。

しかし湖也の知ってる商店街じゃなかった。

食べ物を売ってる店ばかりが集まるところだと思っていたが、目の前にあるお店はアニメ物を売ってたり楽器を売ってたりしている。

(へーこんな店があるんだ)

湖也は思いながらその中の一つに入っていく。

ポスターやタペストリーが売られていた。

アニメに詳しくない湖也はどんな奴かわからなかったが、商品の隣に「同人誌タペストリー発売中!」と書いてあり、そんなものもあるんだーと商品を眺める。

ポスターやタペストリーのサイズが大きく目立っていたのでそれしか売ってないのかと思ったが、店の中を歩いていくとキーホルダーやファイルなどを置いている棚もあった。

一周見終わると、湖也は店の外へ出る。

また歩き始めた。

平日ということもあり歩いている人は多くはないが、今の湖也には多く感じる。

(あーお腹が痛くなってきたなー)

湖也はトイレを探すことにした。

コンビニに入ったが、中に人がいたので諦める。

近くにあった店に適当に入る。

地下への階段を指したトイレの標識があった。

階段を降り見つけたトイレに入る。

すると隣から男性の叫び声が聞こえてきた。

「?」

隣のトイレから聞こえてきたのではない。

男性の便所の隣、女性の便所から聞こえてきた。

気のせいかと思い湖也は手早くトイレを済ませて立ち去ろうとする。

すると上の階段から降りてきた人が男性の便所ではなく女性の便所に入っていくのが見えた。

間違いない、女性の便所に男性が集まって騒いでいる。

(何があるんだろう?)

湖也は勇気を振り絞って覗いてみる。

顔には出していないが、今の湖也はかなりドキドキしている。

するとそこは女性の便所ではなく、ライブハウスになっていた。

入り口にはちゃんと女性のマークが書いてあったが、トイレの面影は全くない。

(これが隠れ家ライブハウスってやつか?)

こんなの初めて見たーと湖也は心の中でワクワクする。

そこには沢山のおじさん達と舞台に立っている三人の女がいた。おそらく全く売れていないご当地アイドルかなんかだろう。

少し中に入ろうかと思ったが、入ってすぐのところに「無断で入らなったら罰金」と書いてあったので入るのをやめて外へ出る。

(オタクが集まる商店街か…)

近くにあるもう一つの店に入ってみる。

そこはアニメのグッズを売ってる店らしかった。

キーホルダーやバッチなどの小さなものから、コスプレ衣装などまで売ってある。

(結構高いんだな…)

湖也は名札を見て驚く。

店を出ると、駅へ向かった。

スマホを見ると12:16と表示される。

(腹減ったな…)

そう思い駅の中にあるラーメン屋に入る。

席に座り、メニューを見て店員を呼ぶ。

注文を済ませたあと湖也はあることに気づく。

(あれ?俺ちゃんと注文できてるじゃん)

前天と陸と食べに行った時はコミュニケーションは苦手と言って全部天に任せてしまったが、今は普通に話すことが出来た。

(あの時天に悪いことしたかな?)

暗かった顔をさらに暗くさせ考える。

天と陸は今どうなんだろう。学校で俺の代わりにいじめられてるのかな。

(すまない、天、陸)

運ばれてきたラーメンを無言ですする。


ラーメン屋を出た後湖也は散歩を再開する。

今度は人の多い通りを歩くことにした。

こんな時間に高校生がいたら視線が集まる可能性があるからと午前は控えていたがあまり見られない。

少し歩くと、科学館が見えてきた。

二本のビルがあり、その間に球場のプラネタリウムがある形だ。

近くまで行ってみる。

(稀里が生まれる前、お母さんとお父さんとよく来たなあ)

湖也はあの時のことを思い出す。

あの時は歩くのが辛くなって帰りたいって駄々こねてたっけ。

もちろん妹の稀里が生まれてからも来たことがある。

あの時は稀里に色々教えてあげたっけ。

「お兄ちゃんが教える!」って。

(まさか一人で来ることになるとはな…)

中に入ろうかと思ったが、見てたら日が暮れそうだからやめる。

(本当に…なんでこんなところ一人で来てんだよ)

湖也は暗い顔をさらに暗くさせて空を見る。

空は曇っていて太陽の光が見えなかった。

湖也は顔を落とし再び歩き出す。

人の少ない道を歩く。


3.


一キロくらい歩いただろうか、顔を上げるとそこにはシャッターが閉まった店があった。

昔の商店街みたいだ。

周りの店もやっておらず人もいなかった。

湖也はシャッターに背中を預け腰を下ろす。

スマホを取り出し画面を見ると12:50と表示されていた。

(まだ授業終わってないか)

一日無断で学校サボって、天と陸を置いてあいつらから逃げて、こんなところで時間潰して、

(本当、何やってるんだよ)

こんなところでいつまでも座っているわけにも行かない。家に帰らなければ親が心配するし、ずっと学校から逃げてたら出席日数が足りなくなって進級出来なくなる可能性も出てくる。

(これからどうしよう)

下を向きそんなことを考えていると、足音がきこえてきた。こちらに近づいてくる。


顔を上げるとそこには黒木花蓮が立っていた。

(?)

湖也は怪訝そうな表情をすると、花蓮は口を開く。

「何してるの?こんなところで」

「いや、なんでお前がここにいるんだよ」

「そろそろ湖也くんの限界かなーと思って昨日から後つけて登校してたの」

「じゃあ今日一日中俺のストーカーしてたってことかよ。学校は大丈夫なのか?」

「一日くらい平気だよ」

「そうかい」

湖也は周りを見渡す。

曇りのため太陽の光が当たらず薄暗くなっている。

まるで俺の心を表しているかのような天気だ。情景描写とはこのことか?

そんなことを思っていると、花蓮は再び口を開く。

「何してるの?こんなところで」

「お前さっき言っただろ。限界なんだよ。学校から逃げて遠出さ。知らない街の風景を見て心を落ち着かせようとしてるんだよ」

「明日はどうするの?」

「さーな。まだ学校行きたくないし、明日はもっと遠くに行こうかねぇ。もうこのまま一人で生きてくのもアリかもしれない」

「そんなことしてると私の出席日数が危なくなるよ?」

「何がよ?だ。ついてこいって言った覚えはねぇぞ。学校行きたきゃ行けばいい」

「うーん。でも私的に湖也くんがいなきゃいけないっていうか学校にいる意味ないっていうか」

「どういうことだよそれ」

「もう立ってるの辛くなったから隣座っていい?」

花蓮は湖也の隣を指差しながら聞く。

「いちいち質問するなよ勝手に座ればいいだろうが」

「なんか怖ーい」

「そりゃ学校であんないじめ受ければストレス溜まって口調も怖くなるものだよ。それよりどういうことだよ。俺とお前になんの関係があるんだよ」

よっこいしょっと花蓮は湖也の隣に腰を落とした。

ガシャガシャンとシャッターが音を立てる。

「この学校にはやばいやつがいる」

突然花蓮はそんなことを言い出した。

「やばいやつ?」

「そう。そいつらは学校で問題を起こす危険があるんだ」

「どんな問題だ?」

「すでにやばいやつの二人は問題を起こしている」

「?」

花蓮は右手の二つの指を立ててピースサインを作ると

「一人は黒木先生、一人は大橋上伊。彼らは学校の中で大きな問題を起こしているのは見てわかるだろ?彼らみたいなやつが他にも沢山いると校長に聞いた。そしてまだ問題を起こしていない彼らが問題を起こす前になんとかするために私は校長に呼ばれて来たのだ」

「…お、おう。でもなんで俺がいなきゃいけないんだ?」

「それはねー。やばいやつを君に処理してもらうためだよ」

「は?」

「私は見つけて処理する方法を考えることしかできないからねー。見つけて処理する方法を考えても実行する役がいない。だからその処理を君にしてもらおうと思うんだ」

「なんで俺がやらないと…」

「『九月十六日の文化祭事件』」

湖也が言い終わる前に花蓮が言う。

「あの時事件を解決に導いたのは君だ。校長は君の行動力を期待して、君に頼みたいと言っていた」

「あんなものを見たら先生に報告するのは当たり前だろ?たまたま俺が見つけただけだ」

「そっかー。じゃあ運が君を選んだんだね」

「適当だなおい」

湖也はため息を吐く。

「じゃあ、俺に大橋を止めろと言いたいの?」

「そう」

「無理だろ」

「無理じゃないよ」

「なんでそう言える」

「だって、上伊くんはやり過ぎたって思ってるもん」

「…」

「君がいじめられてる時、上伊くん顔真っ青にしてさー」

クスクス笑いながら花蓮は言う。

「君と上伊くんが話合えば学校を元に戻せると思うんだ」

「無理だよ」

湖也の声は震えていた。

「いけるって」

「無理だろ!クラスの奴らは俺が大橋に近づこうとしただけで殴ってくる。あいつには近づけないんだ。話し合うことなんて不可能なんだよ!」

湖也は思いっきり叫んだ。

場は静かになった。人がいれば視線が集まったかもしれないが、誰もいないのでその心配はない。

静まった空気を、花蓮の言葉が震わせる。

「大丈夫。策はある」

花蓮は明るい声でそう言った。

「え?」

「さっき言ったでしょ。やばいやつを見つけて処理する方法を考えるのが私の役目。君はそれを実行すればいい」

「本当か?」

湖也の心に光が差す。

「うん。約束しよう。君と私で学校を戻そう」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫だって、じゃあそろそろ帰ろ?」

花蓮は立ち上がると二歩前へ進み湖也の目の前に来ると、元来た道を指差す。

「なんでそんなに焦ってんだ?」

「早くしないと下校時刻になっちゃう。早く学校に行かなきゃ」

「なんで今から学校に行かなきゃならねぇんだよ」

「あれ?言ってなかった?」

「何をだ?」

「今の学校は上伊くんが変えた姿になっている。上伊くんから出てる力みたいなものが生徒を従わせてるんだ」

「それは知ってる」

「その力の範囲は校門までだよ?」

あ、と湖也は声を漏らした。

上伊の力に範囲や制限的なのがあるのは気づいていたが、校門までだとは気づいていなかった。

なんで気づかなかったんだろう。考えればすぐ分かりそうなことなのに。どうりで家に帰ると毎日紗水からお怒りのメッセージが来るわけだ。

「紗水ちゃん毎日一人で寂しそうだったよ?学校を戻すためにも彼女に事情を説明しなくちゃいけないね。さ、早く学校まで迎えに行かないと」

「そうか…紗水には悪いことをしたな」

湖也は立ち上がると走り出す。

元来た方向へ姿を消し、一人残った花蓮は微笑むと

「元気になってくれてよかったよかった」

と呟いた。


湖也は走った。

今まで散々歩いて疲れているはずなのに、そのことを忘れてただひたすら走った。

だんだん人が多くなり、迷惑そうな目で走る湖也を見ている。

肩にコツンと軽い衝撃が走った。

「おいてめぇ!こんなところ走ってんじゃねぇ!」

そんなことを言われた。

しかし湖也はすいませんと一言謝ると再び走る。

駅に着き、切符を焦って買う。

こんなことになるなら電子マネーのカード買っとくべきだったと思うが今は買ってる暇はない。

改札口を抜け、電車が来る時刻を確認する。

後二分くらいだ。

湖也はホームまで来るとそこにあるベンチへ腰掛ける。

時計を見ると、二時十三分を指していた。

下校時刻は三時半なのでなんとかで間に合いそうだ。

息を吐いて落ち着く。

しばらく待つと電車がやってきた。

湖也は乗り、空いてる席へ座る。

そこで気づいた。

(あれ?黒木の野郎いねぇじゃねぇか!)

探しに行こうか迷ったが、電車のドアが閉まったので諦めることにする。

(まだ作戦も聞いてないよ!紗水に会って来いとしか言われてないよ!なんでその後のことを言わなぇんだよあいつ!本当に策なんてあるのか?)

イライラしながら考えたがそんなことしてても意味ないことに気づき深呼吸をする。

何回か乗り換えて学校の最寄りの駅へ着く。

「はぁ、長かった」

人のいない駅の前でそんなことを言いながら時計を見る。

三時三十四分を指していた。

「やば!」

湖也は再び走る。

坂を登り、住宅街を抜け、学校まで走り続ける。

だんだん人が多くなってきた。

学校の生徒だ。

「あれ?あれってうちの制服だよね」

「なんで向こうから走ってきてんだ?」

「学校サボって呼び出されたんじゃね?」

そんなことが聞こえたが気にしない。

立ち止まり、紗水を探す。

校門の近くで寂しそうに歩いている紗水を見つけた。

湖也は紗水のところまで走る。

「え?湖也!?なんで今ここにいるの!?」

紗水は驚いていた。そりゃそうだ。今日学校サボったんだから。

って言うか、元に戻ってるみたいだな。黒木の言ってた通りだ。

「…てか!なんで今日学校サボってんの!?先生にも言ってないみたいだし!今から謝りに行くの?」

「違う違う!そうじゃない!」

「じゃあなんなのよ」

「毎日一人で帰ってたから、寂しかったろ?」

そこで湖也は一回息を整える。

「だから、一緒に帰ろう」

その言葉を聞いた紗水は顔を真っ赤に染める。

「はぁ!?そのためにわざわざここまで来たの!?バカじゃないの?」

ハハハと湖也は笑う。

(確かに俺はバカだ。勝手に学校から逃げて黒木から色々言われて走ったらあいつ置いてっちゃうし)

紗水がスタスタと歩き始めた。

「早く帰ろ。人の目線が集まって来てるし」

顔を真っ赤にしながら言う。

「あぁ」

湖也も歩き紗水の隣へ並ぶ。

太陽が少し傾き、空が赤く光っている。

いつのまにか晴れていた。

二人で歩道を歩きながら、今日の遠出は終わっていく。

(てか、黒木のやつ紗水にも伝えろとか言ってたけど、何を伝えればいいんだ?)

走るシーンがあるものはだいたい神と聞いたので無理やり走らせてみました。(語彙力皆無)

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