表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしもこの世界で、あなたと  作者: 白銀
第1章〜校内戦闘〜
7/52

第7話 転落

1.


「え?どういう意味?それ」

湖也は質問する。

「言葉通りよ、私に話しかけないで。二回も言わせないでくれる?」

鋭い目つきで紗水は言う。いつも冷たい目をしているが、今回はさらに恐ろしく感じた。

「底辺ってのは…」

「あなたクラスの底辺じゃない。学校行事何も手伝わないし、いいところがない。目の前から消えて」

そう言うと紗水は自分の席へと行ってしまった。

追いかけようと思ったが、また何か言われそうだから

やめて自分の席へ着く。


(何がどうなってるんだ?俺何か怒らせるようなこと言ったか?この前会った時普通だったよな)

頬杖つきながら考えていると、女子が二人湖也に近づいてきた。

「ちょっと、なんで机並べないの?」

「あ、すまん」

ぐちゃぐちゃになっていた机を全く並べずに席に着いた湖也に文句を言いにきたらしい。

「今からやるから…」

「もー終わった。あんた、本当にクラスのために何もしないのね」

すると隣にいた女子が、

「噂によりと、これ三村君がやったらしいよ?」

と言う。

「あんた!それ本当なの?」

「え?まぁ本当だが…」

「信じられない!自分でぐちゃぐちゃにしたくせに何も手伝わないなんて!さっすが底辺ね。もう話すのやめるわ」

「…すまん」

「謝ればいいってもんじゃねぇ!」

そう言うと女子は湖也の机を思いっきり蹴る。

机は見事湖也の腹に差し込まれ、

「うっ!」

と声を上げる。

そして立ち上がると、

「おい今のは酷くねぇか?」

「そう?今までクラスのために動かなかった罰よ」

そう言うと女子二人は湖也から離れていく。


腹に手を当てながら椅子に座り再び湖也は考える。

(え?どう言うこと?)

すると、今度は叫び声が聞こえてきた。

陸の声だ。

「なんや!ただ立ってただけやろ!」

「お前がここに立つ資格はない!早く自分の席に座れ!」

誰かと言い争いをしているらしい。

ボロクソ言われた陸はこっちに来て

「…なぁカイ、なんかみんなの様子おかしくね?」

と聞いてきた。

「あぁ、紗水の様子も変だし。俺たちの扱いが酷すぎる」

すると天もこっちにきて

「ちゃんと机運んだのに邪魔って言われたー!」

と泣きそうになっていた。

「天と陸は変わってないよな?」

湖也は聞く。

「うん。変わってないと思うけど…」

天が不安そうに答える。

「しかし、一体何がどうなっとるんや?」

「土日の間に何かあったのかもしれない、何が原因か探さないと」


その時、三人の所に誰かが近づいてきた。

正確にはそいつは湖也に近づいていた。

「やぁ三村君。学校の最下位になった気分はどうかね?」

「大橋、お前の仕業なのか?」

「え?大橋がやったんか?」

「君がやったの?」

三人の前に現れた大橋上伊は、

「そのとうり、俺がやったのさ。この学校の生徒に身分を与えてやった。俺は一番上の王様。誰も俺には逆らえない。その次が河原さん、二番目にくらいが高い。その次がお前ら三人を除くその他の生徒、平民ってところかな?で、一番身分が低いのはお前ら三人さ。そこらへんに転がっているゴミと同じくらいの価値かな?」

「そんなことができるのか?」

「出来たのさ。今日からここは俺の国だ。君らは俺の奴隷として使ってやろうかな?」

ニヤニヤしながら上伊は話す。

「お前そんなに自分の位が大事なのか?」

「大事だよ。この前言った通り俺は頂点に立たなければならない」

「金曜日の戦いでちょっとは変わると思っていたが、何にも変わってねぇなお前」

湖也は拳を握ると

「今すぐ学校を元に戻せよ。生徒が皆平等だった、元の学校に!」

上伊の顔面に突き出した。

上伊は湖也のパンチを顔を少し傾けることで避けると、

「そんなことしていいのか?」

「?」

湖也がその言葉の意味を理解したのは次の瞬間だ。

上伊の後ろにクラス全員が並んでいた。

彼らは上伊を殴ろうとした湖也を見ると、

「お前上伊様に何やってるんだ!」

「お前のようなうんこと同レベルの屑が上伊様に触るんじゃねぇ!」

「出ていけ!今すぐ教室から出ていけ!」

そう言い湖也を捕まえ廊下に放り出してしまった。


「…カイ?大丈夫?」

ドアの隙間から顔を出して天が聞いてくる。

「あぁ、大丈夫だよ」

湖也が答えると、教室の中から、

「星川、お前も出るか?」

と言う声が聞こえた。おそらく…じゃなくて絶対上伊の下僕となってる奴だ。と言っても湖也と陸と天と上伊以外全員そうなんだけど。

天は顔を青くして

「ううん、やめとく」

と応えると再び湖也の方を向いて

「ごめんねカイ。必ずみんなを元に戻そうね」

と言う。

別に一緒にいてくれなかっただけで人を恨むほど俺は短期じゃない。

湖也は微笑みながら頷くと、次の瞬間「早く戻れ」と言う声と共に天の顔は教室の中に引っ込んでしまった。誰かに引っ張られたらしい。

今度はちょっと顔が丸い男子が顔を出してきた。

例のやつの下僕だ。

男子は湖也の方を見て叫ぶ。

「いいかよく聞け、この学校じゃ星川と土方とお前三人合わせて底辺ってことになってるが、その中でもお前は一番の底辺、最下位なんだよ!ガハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

「あぁ、それ大橋から聞いた」

挑発してくる男子を湖也がスルーすると、男子は顔を鬼のように変えて

「大橋じゃない!上伊様だ!」

と叫ぶとドアをバシッ!と勢いよく閉めた。


2.


(追い出されてから何分だったんだろうか)

湖也は考える。

正確には三十分経過していた。

もうそろそろ朝のホームルームが始まる頃だ。

まだ登校してくる生徒がいる。

机並べてないのにそいつは何も言われなかった。

ひどくね?天は運んだのになんか言われたらしいぞ?

そして廊下を歩いていく生徒ほぼ全員と目が合ったが、全員湖也を汚物を見るような目で見てきた。

(どうやら本当にこの学校の全ての生徒にこのカースト制度は定着してしまっているらしいな)

他学年の生徒は確認してないが、おそらく上伊の支配下になってるだろう。

そしてまだ確認できていないことが一つある。

先生は?先生はどうなんだ?いつものままなのか?

先生までこの制度が定着していると流石に辛い。不登校になりそうだ。

その時ちょうど美百合先生が階段を登ってきた。

そして先生の背後に知らない女子が付いてきている。

制服のデザインもここのものじゃない。

(誰だ?あいつ)

湖也が思っていると、先生は廊下に立っている湖也を見て

「あらカイちゃん、なんでそんなところで立ってるの?早く教室入りなさい♡」

お?先生は普通かも?いや普通でも困るけど、急に抱きつくのやめてほしい。

「先生は俺のこと変な目で見ないんですか?」

ととりあえず湖也は聞いてみる。

「ん?変な目って何?いやらしい目ってこと?」

「俺のこと邪魔者扱いします?」

すると先生は満面の笑みで

「やだなーそんなことするわけないじゃない!カイちゃんのこと大好きよー!」

と再び抱きついてきた。

やだこの人酔っ払ってんのか⁉︎と湖也は思ったが、先生には変な制度が定着してなさそうで安心する。担任が大丈夫なんだから他の先生も大丈夫だろう。

次に、湖也は先生の背後をついてきた女子の方を見て

「先生、そっちの子は誰なんです?」

と質問する。

「ん?あー転校生!あとで紹介するから早く教室入って!」


そして湖也は自分の席に着いた。

教室に入る時クラスの奴らから何か言われるかとドキドキしたが、流石に先生がいるからなのか誰も湖也に文句を言うことはなかった。

「さっきまでカイちゃんが廊下に立ってたけど、誰かカイちゃんをいじめてない?」

朝の挨拶よりも早く湖也のことを生徒に問いかけた。

(やべぇこの先生まじやさしいこの先生が担任でよかった!)

目に涙を浮かべそうになったが、周りを見るとシーンとしており、

(まぁ、当然だよな。誰も自分が教室から追い出しましたーなんて報告するわけないよな)

と当然の結果に涙が引っ込んでしまった。

先生が話題を変える。

「そして、今日は新しいお友達が来てくれたよー!」

おいおい、小学校じゃねぇんだからさ。その言い方やめてくれよ。

湖也は先生に言おうと思ったが、心の中にしまっておく。

「うぉ!なかなかかわいいんじゃない?」

「転校生って言うとやっぱり金持ちのボンボンか美少女か普通の男子の三択だよね。美少女でよかった!」

とクラスのみんなは騒いでいた。

おいおいそんな騒ぐことか?と湖也は言おうとしたが今の自分の立場を思い出してやめた。そもそも湖也はクラスの反応にいちいちツッコミを入れるキャラじゃない。

先生はチョークを持って転校生の名前を名前に書く。

書き終わると先生は転校生に向かって、

「じゃあ、軽く自己紹介してくれる?」

と促した。

転校生は一歩前へ出ると

「黒木花蓮です。よろしくお願いします」

と言い一回お辞儀をする。

本当に軽い自己紹介だな。

と湖也は驚くがもう一つ驚く点が、

あの文化祭事件が終わってまだ二週間くらいしか立ってないのに、事件の犯人の黒木先生と同じ苗字の子が転校してきた?偶然か?

先生は湖也の後ろを指差すと、

「花蓮さんの席はあそこの空いてるところね!あら!カイちゃんの後ろじゃない!よろしく頼むねー!」

と手を振る。

湖也の席は教室の一番奥の後ろから二番目で、空いた席が後ろに常に置いてある。


花蓮は席に座ると、目の前の男の子の肩をつつく。

「ん?なんだよ」

「一ヶ月間よろしくね」

「は?」

何言ってんだ?て顔をしているが花蓮は気にせずカバンから筆記用具などを取り出し授業の準備を始めた。


湖也は後ろの席に座った黒木花蓮の言葉に疑問を抱いた。

(一ヶ月ってなんだ?一週間後席替えするのか?それともまた引っ越すのか?)

などいろいろ考えたが、別に気にすることでもないかと思い考えるのをやめた。

が、次の瞬間もっと大事なことに気づく。

(あれ?普通に話しかけてくれた?)

今湖也は全校生徒から汚物と同じ扱いを受けているはずだ。

しかし後ろの女は嫌な目でこっちを見ていない。

しかも普通によろしくねって言ってきた。

普通嫌っているやつによろしくなんて言うはずがない。

つまり、

(この女には大橋の変な力が働いていない?)

確かめてみる必要がある。

そう思い湖也は振り返ると、

「俺は三村湖也、よろしくな」

と自己紹介をしてみる。

(さぁ、どうなる?)

気づくと湖也の心臓はバクバク鳴っていた。

コミュ障というのもあるが、仲間はたった一人でも増えたほうが有難い。

湖也が相手の反応を待っていると、花蓮は

「あ、そういえばテレビで見た顔だ!三村君の後ろの席かー嬉しいなー!」

と笑顔で言うと湖也の手を取り握手をした。

(お、やっぱり大丈夫だ)

湖也は安心し前を向くと授業の準備を始める。


3.


昼休み時間。

湖也、陸、天の三人は教室から逃げ出して二階にある空き教室に来ていた。昼休みにこんな所に来る人は誰もいない。つまり誰にも文句言われないと言うことだ。

天は箸を動かしながら聞く。

「何かわかった?」

「うーん、先生には大橋の変な力が働いてないってことと…」

「ことと?」

「あと、今日来た転校生。あの子も変な感じはなかったし、普通に話しかけてくれた」

「なるほどなぁ、今日来たから大橋の力はかかってないと言うことなんか?」

「わからない。だが生徒の中にも味方がいる。それだけでだいぶ安心できるな」

三人は昼ごはんを食べながら状況の確認と情報の整理を行っていた。

「一体どんな力が働いてるんやろか…」

「大橋をどうにかすれば治るかな?」

「それもわからないが可能性はあるな。彼がこの学校をこんな風にした張本人だし。この学校を治すにはあいつをどうにかするしかない」

「でも、どうやって?」

「あいつを殴って沈めれば…」

すっかり戦闘脳になっている湖也。

「カイって喧嘩とかしたことあるの?」

天からの質問に湖也は黙る。

金曜日のことはなるべく秘密にしたい。

下を向く湖也を見て、二人も黙ってしまった。

少しの間沈黙が続いた後、陸が口を開く。

「このまま様子を見ることはできねぇかな?」

「様子を見るって?」

「このまま何もしないで学校生活を送るってことさ。そしたら他にも鍵となる情報が出てくるかもしれない。大橋から攻略するんじゃなくて、他のみんなから攻略することが可能になるかも」

「それもありだな。あいつら何もしなければ何も言ってこないし。このまま生活してみるのも…」

三人は昼飯を食べ終わると、教室へ向かった。

ドアを開けるとみんなが三人を睨む。

ただそれ以上のことはしてこなかった。

三人は頷くとそれぞれの席へ向かう。

教室内での私語はなるべく減らすことにした。


4.


「どうだ?この学校は」

校長は目の前にいる少女は問いかける。

「周りが田舎臭い。近くに映画館とかゲーセンとか無いの?」

少女黒木花蓮は目を半開きにして退屈そうな感じでソファに寝っ転がりながら答えた。

「周りのことは気にするな。クラスのことを聞いている」

「そうそう、クラスのことなんだけどさぁ」

花蓮は校長の顔を見て

「なんかすんげぇ暗かったぞ?」

ドキッと校長は胸が飛び出る感覚を味わった。

校長はまだ花蓮に学校の現状を伝えていない。

「いつもあんな感じなのか?」

「ん?まーな」

校長は震える声で答える。

「?」

花蓮は校長の返事に違和感を覚え、

「お前、なんか隠してる?」

「いやいや!隠してるわけじゃ無い。時が来たら話すよ。時が来たら!」

「ふぅん。まあいいや。こっちから隠してる物を見つけるのも面白そうだし」

「で、『やばい奴』に関してはどうかね?」

「そんな一日でわかるわけないじゃん。それよりさ、ここゲーム機ないの?」

「あるわけないだろう」

「うちの校長室はあるのに?」

(それ相当学校に飽きてるよお前んとこの校長!)

校長はツッコミを入れようと思ったが、

「私が欲しいって言ったものなんでも買ってくれるからいい奴だよあいつは」

(なんだお前が要求したのか)

と納得する。いやしてはいけないのだが。


花蓮は校長室を出ようとする。

ドアノブに手をかけようとして、くるりと首だけを回し

「あ、そーだ」

と言い出す。

「なんだね?」

「三村湖也君に会ったよ。私の(ゴミ)を捕まえた子に」

「どうだった?」

「あいつが本当に捕まえたのかい?」

「ん?どうして?」

「どう見ても事件を解決に導こうとする奴じゃないなあいつは。なんかみんなより段違いに暗かったし、みんなに怯えてた。あんな奴が学校の救世主になるとは思えねーな」

そこまで言うと花蓮は校長室を出て行った。

校長室は机の鍵のかかっている引き出しへ目をやる。

「上伊くんの願いを叶えるためとはいえ、あれはやりすぎたのかもしれんな」


5.


一日の授業がすべて終わり、みんな帰る準備をしていた。

湖也もその一人だ。

筆箱などを鞄に入れながら周りを見渡す。

みんな暗い。

いつもなら「部活だー!」て言って教室を飛び出す人が一人はいるのに、今日は誰も騒がずに教室を出て行ってる。

先生はいつもと変わらず、教室のドアのところになって帰る生徒一人一人に挨拶をしていた。

湖也は紗水の方を見る。

湖也は紗水のボディーガードをしていて、帰りはいつも一緒に帰っていた。

そして今日もその契約は続いている。

天と陸が湖也のところへやってきた。

「なぁカイ、今日もあいつと帰るのか?」

「でも河原さん、カイのこといつものようには…」

それでも湖也は一回だけ声をかけてみようと思い、

紗水の方へ足を進めた。

「…っ!おいカイ!」

「そっとしておこうよ!」

後ろから二人の声が聞こえる。

だが湖也は足を止めない。

紗水のボディーガード、それが湖也の仕事だからだ。

紗水のところまで来ると、紗水は湖也の顔を見る。

「…何?こっち来ないで」

「あのさ、一緒に帰るって…」

「邪魔死ね」

そう言うと紗水は湖也の腹めがけて蹴りを入れる。

それは思いっきり湖也の腹に刺さり湖也の体が吹っ飛ぶ。

「いった…」

静かに呟く。

すると周りにいた奴が近づいてきた。

決して湖也を心配するためではない。

湖也に罰を与えるためにだ。

「…テメェ紗水様に何してんだよ」

「声をかけただけだ。何か問題でも」

「大問題だ!テメェみてぇなクソが紗水様に話しかけんじゃねぇ!」

「三村君さいっってぇ!」

「なんだとこの野郎死にてーのか!」

みんながいろんなことを言い湖也を蹴り始めた。

湖也は抵抗する暇もなくただ集団リンチをくらう。

流石に先生はその騒ぎに気づいて

「何やってるの!カイちゃんが危ない!」

と止めに来た。

「「「「…はい」」」」

みんなは湖也から離れると自分の場所へ帰っていく。

そのまま帰る人もいれば、部活に行く人もいて、帰りにコンビニに寄る人もいる。

ただ暗いまま。

最後に一人が湖也の方を見てこう言った。

「そーいやお前、カイって呼ばれてんだっけ?」

「それがどーした」

じゃあ俺は今からお前のことを最カイって呼んでやるよ!」

「あ、いいなそれ!私もそう呼ぼ!」

「じゃあな!最カイ君!ガハハ!」

「みんなカイちゃんから離れなさい!」

先生の言葉で湖也をいじめてたみんなは湖也から離れた。

先生が湖也に近づいて、

「大丈夫?何があったの?」

湖也は今学校に起こってることを話そうと思ったが、これは先生が入ってくる問題じゃないと思い

「先生、大丈夫です。心配かけてすみません」

と笑顔で言った。

「本当に?」

「はい、本当に大丈夫です」

湖也は起き上がり、机の上に置いてあった鞄を手に取る。

その時後ろから声がした。

「君はいじめられてるの?」

振り向くとそこにいたのは黒木花蓮だ。

「まぁ、いろいろあってな」

「それって文化祭前から起こってること?それとも、文化祭が引き金になって起こったこと?」

その言葉を聞いて湖也はドキッとした。

恐ろしい何かを花蓮から感じる。

「うーん、どうだったかなぁ〜」

慌てて湖也が答えると、

「あ、友達待たせてるからまた明日ね!」

と言い陸と天のところへ走っていった。

「…ふーん。三村君は何か隠してるな〜」

教室に最後一人残った花蓮はニヤリと笑い、教室を調べていく。

湖也の机を漁り、出てきたプリントに目をやる。

そこには湖也が授業中落書きしてたことが書いてあった。

『大橋を潰し学校の生徒を元に戻す』

『生徒の方から元に戻す』

再び花蓮はニヤリと笑い、プリントを元に戻し教室を出ていった。


6.


湖也は家に帰ってきた。

「ただいま〜」

「「お帰り〜」」

お母さんと妹の声が優しい聞こえ、湖也は少し安心した。

いつもならリビングへ向かうが、今日はすぐに自分の部屋へと向かった。

「あら?湖也?おやつ食べないの?」

「今日疲れたから〜」

湖也は適当に返事をして階段を上る。

「何かあったの?」

「うんいろいろね〜」

そういえば、学校では邪魔者とか最カイとかカイとかで、湖也とちゃんと名前で呼んでくれる人はほとんどいなくなった気がする。まぁ陸と天はいいんだけどさ。

湖也はベッドに寝っ転がり、スマホの電源を入れる。

トークアプリを開き、天と陸の三人のトークルームで

「今日は大変だったなー」

と呟く。帰ったら何か呟くのが三人の日課になっていた。

スマホの画面を見ると、

「だなー」

「ほんと学校どうなったんだろ?」

とそれぞれが返信してくる。

「どうする?もう三日くらい様子見る?」

「そうするかー」

「だねー」

と会話いていると、別のところから通知がきた。

(誰だ?)

湖也は疑問に思い見てみると、そこには河原紗水と書いてあった。

え?

トークルームを見てみる。

そこには、紗水から「なんで一緒に帰ってくれなかったの!」とメッセージが、

再びえ?と疑問に思う湖也。いや、今度は疑問より困惑の方が強い。

「だって俺みたいな邪魔者と一緒に帰りたくないだろ?」

と返信する。

すると、

「誰が邪魔者って言った⁉︎あなたは私のボディーガードなんだから、一緒に帰る義務があるの!一人で寂しかったわ!」

と返ってきた。

(どうなっている?)

「でもお前学校で俺のこと邪魔者って言ったよな?」

「は?そんなこと言った覚えはないけど?」

「嘘だろ?」

「嘘言ってないけど」

「嘘だろ⁉︎」

「さっきからなんなのよ」

どうやら紗水は学校の出来事を覚えてないらしい。

どーゆーとこ?

湖也はスマホの画面を見ながら頭を抱えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ