第41話 3人の戦い
「夢境の奴、俺みたいにあの体育館で全てを終わらせるつもりみたいだな。湖也達もあの世界がどう言うものかもう分かってるみたいだし、5年前に作られたとか言う設定わざわざ作らなくても良かったのかもな」
1
「仕方ない…やるしか無いのか」
電灯しか頼ることのできない空き地で、戦闘が始まった。
「お前の信念を砕いてやる!」
大羅は空高く舞い上がり、土の体を巨人へと変化させる。
そのまま湖也目掛けて落下する。
湖也はとっさの判断で横へ飛んで避け、着地した反動で前へ思いっきり飛び出した。
巨人の体を思い切り殴る。
しかしびくともしない。
「そんなものかお前の力は!」
「何で⁉︎大政先輩は砕いてたのに!」
「お前の力が足りないと言うことだ!」
大羅は巨人の手を動かし湖也を叩き潰そうとする。
確実に湖也を潰したと思ったが、次の瞬間その手が粉々に砕かれた。
「今度は足りたようだぜ」
「多少はやるみたいだな」
しかし瞬時に手は再生していく。
「破壊してもすぐ再生じゃあキリがないな」
「土がある限り俺は無敵だからな」
次の瞬間、巨人の背中から無数の土の糸が飛び出した。
その糸は空き地の壁へ伸びていき、壁に当たると反射して伸びていく。
無数の糸が色々な方向へ伸びて反射して絡まり蜘蛛の巣のようになっていく。
「なんだこれは…」
やがて隙間を埋めるように土が土が広がっていき、完全な土の天井が出来上がった。
頭上ギリギリに作られた天井、光は全く入ってこなくなった。
大羅はその天井の上に立つ。
「なにも見えねぇ…」
湖也は天井を突き破ろうとする。
次の瞬間、突然天井にズボッと穴が空き土の太い腕が飛び出した。
大羅が向こう側から天井を突き破ったのだ。
湖也は冷や汗を流した。
あと数センチ右にいたら当たっていたからだ。
ボゴッとその腕を抜き大羅は空いた穴を覗き込む。
「チッ惜しかったか。だが次は外さねぇ」
「まずい!」
湖也は必死に横へ飛んだ。
さっきいた場所に天井を突き破って腕が突き刺さる。
「あれ?おかしーな」
空いた穴が塞がっていく。
また暗くなった。
どこに大羅が腕を突き刺すかわからない。
じっとするべきだろうか、それとも逃げ回るべきだろうか。
(いや…これはまずいかもしれない!)
湖也は咄嗟の判断で横へ飛ぶ。
さっきまでいた場所に穴が開いた。
「おい!ミラー!正確な場所教えろよ」
「教えたわよ。次そこから南西1メートル」
トンという音が聞こえた。
大羅が足をつけた音だ。
真上。
正確に狙ってくる。
「逆モグラ叩きかよ…」
また湖也は飛んだ。
「何言ってんだお前」
穴が空き大羅の声が聞こえる。
湖也は逃げるしかなかった。
反撃しようにもその前に追いつかれる。
大羅に湖也の位置は丸わかりなのだ。
大羅の拳に装甲が耐えられるかも分からない。
「くそ…!」
湖也は走りながらデバイスに触れた。
右腕の装甲を展開させる。
立ち止まり、右腕を構えた。
「…止まったわ」
ミラーが告げる。
「逃げても無駄だと分かったか?アァ⁉︎」
大羅は土で固めた腕を思い切り突き刺す。
それとほぼ同時に湖也も展開した右腕で天井を殴った。
双方向からの強い衝撃に土の天井はヒビが入り、次の瞬間ガラスが砕けたようにバリッ!割れていく。
「なんだ。少しはやるみたいだな」
殴った反動で大羅は高く飛び、翼竜の姿へ変化させる。
「まずい!体が動かねぇ!」
湖也の方は展開させた反動が来てしまった。
「なんだ体が動かねぇのか?チャンスだ」
大羅は巨人の姿になり湖也目掛けて落下する。
巨人の全体重をかけて湖也を潰すつもりだ。
「まずい!動け!うぉぉぉぉぉぉぉおおお!」
ドシーンと地響きがなり巨人の体が着地する。
「はぁ…はぁ…」
間一髪で湖也は避けた。
黒い装甲になって、硬直時間が前より短く感じる。
「はぁ…死ぬかと思った。おい!ずっとそんな分厚い土纏いやがって卑怯だぞ!」
「夢境は全ての能力使えるんだろ⁉︎これぐらいにぐちぐち言ってんじゃねぇよ!」
大羅はブチギレながら叫び返す。
「それはそうだけどさ…」
2人の戦いを見つめるミラーを見て花蓮は呟く。
「ミラーが黒髪なのなんか違和感あるな。ずっとピンク色だったから」
「あれは暴狐の姿なの知ってるでしょ。人間の姿はこっち。ずっと影森拘束してたから暴狐の姿であるしかなかったの」
「暴狐の姿になって変わるのが髪の色だけってのが珍しいよな」
今度は湖也が動いた。
助走をつけ右腕に力を込め思いっきり巨人の足を殴る。
少しヒビが入った。
「もういっ…!」
湖也がもう一度右腕に力を込める。
その時だった。
「…な⁉︎へっぶ!」
ヒビが入った足から大量の土が噴き出した。
その土に飲み込まれるように湖也の体は飛ばされる。
「なんのこれしき…!」
湖也は立ち上がり、流れに逆らって歩き出す。
「馬鹿じゃねぇの。そんな土の中を歩くって、どういう事かまだ分かってねぇのか」
急に流れていた土が固まった。
腰から下が動かなくなる。
「土は俺の体の一部。つまりいつでもお前を捕まえることが出来るってことだ」
「それはどうかな」
「あ?」
湖也は自分を捕まえている土を思いっきり殴った。
バリッバリバリっと音がして土が割れ、すっぽりと腰が出てきた。
「お前も分かってないじゃねーか。このくらいの薄さなら割れることさっき見せたろ」
「だからってこの俺の体を打ち砕くことは出来ねぇ。そんな自慢話なんかガキの悪戯並みにくだらねぇ事だ」
大羅は巨人の腕に力を込めて湖也に殴りかかった。
湖也はジャンプでかわしその拳の上に乗り、力を込め土の拳を打ち砕いた。
素早く腕に乗り移り、破壊しては乗り移りを繰り返していく。
「うぜーなお前!そんなことしても俺の体はすぐに再生出来んだよ!」
もう片方の腕で湖也を掴もうとするが、湖也はその腕に飛び移る。
「ちょこまかちょこまかと…」
「俺は夢境を止めなければいけないんだ!こんな所で戦ってる場合じゃない!だからすぐに終わらせる!」
「くそ…修復が間に合わねぇ…」
両腕を粉砕すると湖也は素早く足元へ回り込む。
「さっきいっぱい吹き出したから足が細くなってんじゃないか?腕の修復に気を使いすぎて足の修復してなかっただろ」
「しまっ⁉︎」
湖也は力を込めて右足を殴る。
ドッと鈍い音が大きく響いた直後、右足が砕け散る。
バランスを失った土の巨人は倒れ込んだ。
湖也はその体の上に立つ。
「よーし中から引っ張り出してやるぞ」
次の瞬間、ガボっと音が鳴って土の巨人の体に穴が空いた。
湖也が空けたのではない。
大羅が自分から飛び出したのだ。
中から出てきた大羅は土でできた装甲を着ていた。
「あんなクソみてぇな戦術でやられるとはな…」
「お前、土でそれ作って意味あるのか?」
「これでもそこそこ頑丈だ。お前らの『それ』程ではないが」
はぁと大羅は一度大きなため息をつく。
「お前、一つ大事なこと忘れてねぇか?」
「忘れてる?何を」
「お前のその黒い装甲のことだ」
大羅は湖也を指差す。
「お前はその装甲お前の仲間のお陰で手に入れたと言っていたが…そもそもその黒いデバイスを作ったのはハデスだろ」
「…」
「あいつは憎たらしい奴だったが、それを作ったっていう事実はそんなもんじゃ変わらねぇ。一番感謝すべき人に感謝出来てねぇじゃねぇか」
「そうね。ハデスは人間とは思えないような奴だったけど、一応私達の仲間だものね。嫌いだけど」
ミラーもうんうんと頷く。
「それもそうだな…じゃあ」
ガシッと湖也は大羅の首を掴んだ。
「ハデスにも感謝してお前に勝つ!そして明日の世界の崩壊を止める!」
「ハハ…やってみろよ…」
首を掴まれながらも大羅は笑っていた。
「お前状況分かってないのか?いつでもお前を殺せるんだぞ?」
湖也は落ち着いた様子で言う。
「降参しろ。そして明日一緒に夢境の所に来てもらう!」
「お前一つ勘違いしてないか?」
「え?」
「俺が最初に決めたルールに『降参したら負け』という定義は無い。『逃げるか死ぬか』のどっちかだ。そして…」
湖也の絶望する姿をじっくり味わうように一拍置いて大羅は言う。
「俺に『逃げる』と言う選択肢はない。さぁ、殺してみろよ。じゃなきゃ勝った事にならねーぞ」
「は⁉︎そんなの勝っても意味ないじゃないか!」
「なら負けるか?」
次の瞬間、土の中から竜が飛び出した。
竜は湖也に噛みつき、遠くに放り飛ばす。
ドンッ!と湖也の体が壁にぶつかる音が響いた。
「やっぱりお前とは組めそうにない。諦めろ」
湖也が起き上がると、そこに大羅の姿はなかった。
「姿が消えた…」
突然湖也は吹っ飛んだ。
何者かに殴られた感触。
最初に大羅と会った時のことを思い出した。
あんな大きい怪物が普通にいたにも関わらず、みんなは普通にしていた。
「お前のもう一つの能力だな。姿を消せる能力といった所か」
「正しくは認識をコントロールできる能力だ。今は声のみを認識出来るよう調整してある。ミラーの超感覚には効かないくらいだし、夢境に対しては意味もない能力だろうがな」
今度は蹴られて吹っ飛んだ。
足音も聞こえないんじゃよけようが無い。
「おいミラー!大羅の場所教えろ!」
「いやよあんたなんかに。それに気安く私の名を呼ばないで」
「…!」
大羅の位置が掴めない。
いつどこで攻撃が飛んでくるのかも、いつ土の巨人に押し潰されるかも分からない。
そしてもしこの戦いを続けたとしても、大羅を殺さない限りは勝ち目はない。
再び殴られて吹き飛ぶ。
逃げ出したい。
「おぅおぅ急に動かなくなったじゃねぇか」
(俺が強くなったの知ってるだろ?)
紗水に言ったのを思い出した。
逃げるのは過去にやった。
過去と同じ事を繰り返しては成長と言えない。
明日は大羅よりも強大な能力を持つ夢境との戦いが待ってる。
「こんな所で…逃げるわけにはいかない!!」
「なら死ぬだけだなぁ!」
次の瞬間、湖也の装甲に一瞬。
黒い稲妻が駆け巡った。
「…!」
ドシン!大きな地響きが鳴る。
大羅が湖也目掛けて落下した。
大羅の姿、音を認識できない以上湖也には大羅の行動は予測できない。
大羅の攻撃は避けようが無い。
しかし、湖也の体は、潰れていなかった。
(あいつ、避けた⁉︎俺の姿を認識している⁉︎)
大羅はのっそりとその巨体を起き上がらせる。
(…まぐれか)
「うおおおォォォォォォォ!」
湖也の叫び声が聞こえる。
立ち上がった瞬間、ドゴォ!と音が鳴り右脚が砕かれた。
(ぐっ…やはりバレてる⁉︎それだけじゃ無い。さっきまでこの足の太さは砕けなかったはず⁉︎)
「うおおおォォォォォォォ!」
(いや違う!俺のこの足が細くなっているんだ!何故…)
瞬時に左脚も砕かれる。
ドスンと両足を失い体が落下した。
「絶対に勝つッッ!」
ビリリ…と再び装甲に黒い電撃が走る。
(…⁉︎)
大羅は嫌な予感がして土の巨人から脱出する。
土の装甲を纏い湖也から距離を取る。
土の巨人は竜へと姿を変え湖也に襲い掛かるが、瞬時に湖也によって砕かれる。
(何なんだこれは…!)
ゴォッ!と大羅は迫り来る湖也から自分を守るために厚さ10mもの土の壁を作る。
「そんなものォォォォォォォ!」
湖也はその壁ごと大羅をぶん殴った。
「ッ…!」
バゴォン!と壁は砕かれ、勢いよく大羅の体はぶっ飛び、3回ほどバウンドして転がる。
起き上がると目の前に湖也がいる。
恐怖のせいか湖也の体がやけに大きく見えるきがする。
「はは…こりゃたまげた。今度は本気で殺されそうだ」
「ここで勝てば…たとえお前が死んでも花蓮とミラーは付いてきてくれるんだろ?」
「だから私の名をあなたが気安く呼ばないで」
「ここで負けるわけにはいかないんだ!ここで負けたら、もう後戻りできなくなる気がする!紗水のお母さんと約束したしな!この世界を守るって!」
「本当に殺れんのか?」
「逃げる気はないんだろ?」
「あぁ、それは変わらないな」
「だったら殺すしか…!」
湖也が右腕を展開させ殴り掛かろうとしたその時、
「はいはーいストップストップ!」
花蓮の声が耳に入った。
「…なんで止めんだよ」
大羅は拗ねた様子で言う。
「今止めてなかったら大羅死んでたよ?湖也の本気の覚悟が見れたからね。一旦この戦いは中止!そしてこれはリーダーの命令だ。大羅とミラーは湖也と一時的に協力関係を結ぶ事!さ、湖也もその腕おろして!」
「え…それって…」
一気に湖也の力が抜ける。
「勝っ…」
「馬鹿言うんじゃねぇ!戦いは中止だっつっただろうが!お前は俺に勝ったわけじゃねぇ!」
大羅は叫んだ。
「お前俺に殺されかけてたんだぞ⁉︎よくそんなこと言えるな!」
「リーダーの命令じゃ仕方ねぇ。今回だけはお前に力を貸してやる」
「別にあんたのためじゃ無いんだから!勘違いしないでよね!」
ミラーが頬を赤く染めて叫ぶ。
「ツンデレ定型文そのまま言われてもなぁ…」
「はぁ⁉︎協力してあげるんだから感謝しなさいよ!」
「はぁーあ、とにかく中入るか。おい、お前何やってんだよ」
大羅はキャンピングカーのドアに手を掛けながら湖也を見る。
湖也は腕をだらーんとおろしたまま突っ立っている。
「腕を展開させた反動が…」
「あ?なんだそれ」
4人はキャンピングカーの中に戻っていた。
「なるほどなぁ。つまりだ、必殺技を使ったらしばらく動けなくなるって事だろ?そんな隙晒してよく今まで戦えてたな」
大羅は水を一気飲みする。
「だから考えて使わなきゃいけないんだよ」
「ぶはぁ。あとお前、あの力なんなんだよ」
「あの力って?」
「俺の能力がただのお前に破られるわけねぇ。お前はあのまま俺の事を認識できないまま潰されて終わりだった筈だ。なのにお前は避けた。お前は何をしたんだ?」
「俺は別に何もしてないよ。負けたく無いって強く願ったら頭上の大羅がうっすら見えたんだ。よくわかんね」
「そうか…」
「夢境は明日の7時何処に出てくるの?」
今度はミラーが聞いた。
「俺たちの学校の裏にある裏山、あそこの中にあるどでかい体育館らしい」
「山の中に体育館?」
「そう。なんか学校で使う予定だったんだけど何故か使ってなくて、5年くらい前に作られたって言ってたな。ピカピカだったぞ」
「いやキレイかどうかは聞いてないけど…」
「それで、夢境はどうやってこの世界を破壊するんだ?」
花蓮が湖也に聞く。
「そればかりは行ってみないと分からねぇ。とにかく俺たちで止めるぞ」
「うん。分かってる」
「あ、そうだ。俺もお前に聞きたいことあるんだよ」
湖也は大羅を見る。
「お前と会ったあの日、俺の妹はお前のこと見えてたんだよ。他の人は見えてなかったのに、何で?」
「単純な話だ。お前を呼ぶためにお前の妹には姿を見せた」
「何で俺の妹のこと知ってんだよ」
「ミラーの力でお前らの家族関係はこっちに筒抜けなんだよ」
「紗水ちゃんが晩飯中にあんたの事話してることも知ってるわよ」
「なっ⁉︎そんな…お前、やめろよぉ!」
「ニタニタして気持ち悪い」
次の日の朝。
湖也達は空を見上げた。
「ビルに囲まれてるから朝日が見えねぇや」
「何で外出たんだよ」
「別にいいじゃん。大羅とミラーと花蓮がせっかく仲間になったんだから、みんなで朝日でも見ようかと思って」
「だから、気安く私の名前を呼ばないで!次呼んだら殺すわよ」
「ツンデレにしては尖りすぎない?女体化ランスじゃん」
「は?」
「すみませんでした」
「お前仲間呼ばわりすんなよ。俺たちはただ力を貸すだけだ」
あくびをしながら大羅は言った。
「え?じゃあ何?道具?」
「今度余計なこと言ったら殺す」
「お前ら怖すぎだろ…そう言えば、花蓮は?」
2
午後1時、血斗と空は2人で街中を歩いていた。
「暴狐出ないね」
「湖也からの連絡とかも特に無しだ。夢境の動きが全くないってことなのか?」
そこで2人はある男の子に目が行った。
その少年は無駄に表情の明るいおじさんに声をかけられている。
「おじさんについてきてくれたら、お菓子沢山買ってあげるよー」
「え?ホント⁉︎やったー」
男の子はおじさんに何の不安を持つことなくついて行く。
「おい」
血斗はおじさんの肩に手をかけた。
「なんだい?」
「お前こいつの親戚かなんかか?とてもそうには見えないが」
「もしかしてゆゆゆゆ誘拐⁉︎」
空の顔が青ざめて携帯を握りしめている。
「ちっ、バレちまったか!」
そう言うとおじさんは血斗の手を振り解き走り去って行った。
「あれ?お菓子はー?」
男の子がキョロキョロしている。
血斗は男の子の頭をポンと叩き言った。
「おい坊主。今度から知らない人に『お菓子あげるよ』って声かけられたらこう泣き叫べ。『お菓子なんかいらないからママを返して!』ってな。無実の罪にビビって逃げ出す」
「ノボリそれ逆上して拐われるんじゃ⁉︎」
「お菓子?いるー!」
男の子は純粋無垢な表情で血斗を見つめる。
「いや俺は持ってねぇよ…とにかくな、お前はまだ小さいんだ。親は何処だ?」
「親…?」
「パパとママは何処かな?」
空が優しい声で聞く。
「わかんない…」
「こいつの親どうなってんだ」
「まぁまぁ…」
「あ!お姉ちゃん!」
突然男の子は叫び走り出した。
男の子が走っていく方向を見て2人は驚愕する。
そこにいたのは花蓮だった。
「おや、登君に青山さん」
「こいつお前の弟かよ…」
「いや、この子は近所の子でよく面倒見てるんだよ」
「お姉ちゃん、好きな人がいるんだって!」
「興味ねぇよ」
男の子の言葉に血斗は冷たく返す。
「うわーんお姉ちゃん!この人がいじめてくるー!」
「よーしよしよし、あの人は私達の敵なのよー」
「その子を戦いに巻き込むな」
男の子はお母さんを見つけて去っていく。
「あの子助けてくれてありがとう。君達、装甲が使えなくても人助けするんだね。ちょっと感心だな」
「あったりまえだろ。あと、敵の親玉に感心されて喜ぶバカが何処にいるかよ」
「湖也なら喜んでくれそうだけどな」
花蓮が微笑みながら返す。
「あいつが?」
「うん、昨日だって私達に助けを求めにきてたんだよ」
血斗達は耳を疑った。
「もう一回言ってくれない?」
「あぁ、よく聞こえなかった」
「だから昨日湖也が私達に助けを求めにきたんだよ」
「湖也がぁ⁉︎お前らに⁉︎助けを求めただとぉ⁉︎」
「あぁ、そうだよ」
血斗は花蓮の肩に手を置く。
「ちょっと来てもらおうか。その事について詳しく聞こう」
「別にいいよ」
「あー、ノボリ浮気してるー」
「何処をどう見ればそうなるんだよ』
「…それって本当なのか?」
「あぁ、湖也は間違いなくそう言っていたよ。今日の7時、夢境を止めなければこの世界が終わる」
「で、何でお前らに助けを?」
「君達は装甲を失ったんでしょ?他に手を借りるとしたら私達しかないと思ったんだろうね。君達を失いたく無いから助けを求めなかったか…それとも足手まといになるから来て欲しくなかったのか…」
「あいつが俺たちの事を足手纏いだなんて考えるかよ!」
「でも君達に全く話してないのは意外だったな」
「お前らは手を貸したのかよ」
「うん、湖也の本気が見れたから。私が貸してあげる事にした」
「何で俺たちじゃなくてお前達に頼るんだよ…」
「じゃあ君は何ができるって言うの?もう君たちじゃ何もできない」
「そんな…」
「そんな事ないよ!」
「…!!」
突然の空の声に血斗は驚く。
「もう戦う事が出来なくても、私達が夢境を止めたいと思う限り、何かできる事はある気がする…」
「空…」
「じゃああなたには何ができるの?」
「…今から考える」
「そうだ。まだ時間はあるんだからじっくり考えればいいだろ?」
「計画性が無さすぎる…」
花蓮はポケットに手を突っ込む。
「ま、私は今湖也と協力関係にあるし、さっきの子を助けてくれたお礼もしたい」
ポケットから取り出したのは鍵だ。
「その鍵は?」
「これはうちの高校の校長室の奥にある部屋の鍵の複製品。今そこでは影森がデバイスを作っている」
「は!!?あいつが!?どうやって作ってんだよ」
「この前湖也と戦っている時にデバイスの詳しい情報を手に入れたらしい」
「この前って、あの雪山での事か?でもあんな状況でデバイスの情報得るって無理だろ」
「影森の能力ならば可能だ。校長室の奥にはデバイスを作る施設が整ってるからね。ただ作るのにそこそこ時間がかかるらしくてね。およそ2週間ぐらい必要らしい」
「あの時から2週間って…まさか⁉︎」
「そう、ちょうど今日が出来上がる日なんだ。つまり、デバイスが出来上がった瞬間君が奪い取る事ができれば」
「そのデバイスを俺の物に出来る…て事か。それが出来なければあいつにデバイスを渡すことになる。世界が消えればそんなこと関係無いが」
「えぇ⁉︎でも、登生身だし、そんな危険な所に行くなんて無茶だよ!」
「確かに、生身であいつと戦う事になるかもしれない。やるかどうかは君次第だ。どうする?」
「俺がまた戦えるようになるなら、もちろんやるさ」
血斗は花蓮から鍵を受け取る。
「この世界の命運がかかってるんだ。この戦い。絶対勝ってやる!」
3
午後1時、上伊と凛は街中を歩いていた。
「上伊って女の子と2人でデートとかある?」
「は、ははは初めてだよ…」
(初めての女の子と2人でお出かけ!絶対ボロを出さないようにしなければ…)
「そうなの?クラスのリーダーやってるからモテると思ってた」
「り、凛はなんか経験ありそうだけど…もしかして彼氏いたりとか?」
「全然!私上伊の事しか見てなかったから」
「えぇ⁉︎」
ドクンと心臓が高鳴る。
「え、前言ったじゃん。『上伊に憧れてる』って」
「そうだけど、いきなり言われると…」
胸に手を当て呼吸を整える。
「あ!あの喫茶店気になってたの!入ろうよ!」
凛が上伊の手を引っ張る。
「落ち着いたら側から!」
また上伊の心拍数が跳ね上がる。
(とにかくこの状況に慣れよう…!男なら負けられない戦いが、ここにある!)




