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もしもこの世界で、あなたと  作者: 白銀
第2章〜校外戦争〜
37/52

第37話  無頼

男性はモニターを眺めている。

モニターには少年の想いが画面一杯に広がっている。


1


激しい光が収まると、湖也の装甲は黒に変色していた。

湖也は全く動かない。

「湖也?」

紗水が不安そうに声をかけた。

次の瞬間、湖也は急にとてつもないスピードで走り出した。

一気に守と攻正のところへ行き、2人まとめて回し蹴りを喰らわす。

「「ぐわぁ!」」

2人の情けない声が響いた直後、2人の体は爆散。

跡形もなく消えて無くなっていた。

「え…?」

唐突の出来事に天は声を漏らす。

周りにいた人全員が唖然としていた。

2人を消した後、少しの間湖也の体は止まったが数秒すると突然ガタガタと不規則に震え出した。

今度は近くにいた凛に向かって襲い掛かる。

「いやぁぁ!」

凛は急いで距離を取るが、あっと言う間に詰められてしまう。

「まずい!湖也!待て!」

そう言って動いたのは陸だった。

咄嗟に凛の元へ走り湖也の攻撃から守ろうとする。

「湖也!どうした!凛は暴狐じゃないぞ!」

「土屋君!」

ただ湖也にはその声は届かず、目の前にいる陸に向かって力を込めて振り下ろす。

ガゴンッ!と音が聞こえた。

「う…みや」

次の瞬間、陸の体は爆散した。

「陸!!」

天が叫んだ。

周りはただ立ち尽くすしかなかった。

湖也が親友であるはずの陸を殺した。

湖也は今、暴走している。


「あれは…」

遠くからその様子を眺めてる者がいた。

大羅だった。

「三村湖也が負の感情に取り込まれ、ハデスに仕組まれたデバイスが作動したか」



湖也の装甲が今度こそ凛を捉えた。

拳を握りしめて力を込める。

「湖也やめて!」

叫んで動いたのは紗水だった。

瞬時に湖也の目の前に行き、湖也が殴るよりも速く湖也を抱きしめた。

「私の能力、相手が動くよりも早く動くことができる。こんなところで役立つなんて…」

湖也は紗水に抱きしめられながらも暴れ回る。

「うぅぅぅぅぅぅ!」

泣いてるようにも聞こえる湖也の叫び声が響き渡る。

紗水は必死に抑え込んだ。

「湖也落ち着いて!湖也がどれだけ辛い思いをしているか分かる!だけどこんな事をするのは間違ってる!一旦話し合おうよ!ねぇ!お願い戻ってきて湖也!」

その声が届いたのか、黒いデバイスの反応が消え装甲が消えた。

目の周りが赤くなっている湖也はきょとんとした様子で周りを見渡す。

「あれ?」

「良かった!」

紗水も装甲をしまうと安堵の声を漏らした。

周りにいたみんなも装甲をしまっていた。

「え⁉︎紗水どうした急に抱きついて…て、ん?」

そこで湖也は異様な空気を感じとった。

周りを見渡すと、何やら凄く冷たく、引いた感じの目線を向けられている気がする。

あの優しそうな空、そして天まで。

そこで湖也は気づいた。

「あれ?陸は?」

どこにも陸がいない。

「先に帰ったのか?」

「湖也…まさか何も覚えてないの?」

「覚えてるて…何が?」

紗水は今起きた事を湖也に伝えた。

最初はキョトンとしていた湖也だが、みるみるうちに顔が真っ青になっていく。

「俺が…陸を殺した?」


2


怯える葉種を前に、大政はハデスを睨んだ。

(葉種を人質に、しかも対処方法は無い)

ハデスの方へ向かったら、ハデスが葉種に何かするかもしれない。

葉種を強引に連れ出すことは可能だが、極限の恐怖に苛まれている中無理に連れ出すと葉種は壊れかねない。

「どう?この女の子助けるの?」

ハデスは動かない大政を嘲笑いながら言った。

「決断が遅いねぇ。あんたそれでも3年生ですかぁ?目の前の後輩にそんな無様な格好晒して良いのかなぁ?」

大政は装甲をしまった。

(大丈夫。後はきっと、信頼できる湖也達がこの醜い争いを終わらせてくれる)

「ひぃ…」

葉種はナイフを握った手を震わせながら後退りをする。

大政がこっちに向かってきていた。

(俺は湖也の憧れになれたんだろうか。湖也の期待に応えられただろうか)

「近づかないで!」 

葉種が必死にナイフを振り回す。

大政は手を広げ臆することなく進む。

「大丈夫だ。もう安心しろ」

「ひぃ…いや…」

葉種の背中が檻にあたった。

追い詰められた状況で、葉種のいる場所から液体が溢れ出す。

アンモニア臭のする液体が大政のところまで届くが、大政は近づくのをやめない。

液体を踏みながら大政はひたすらゆっくりと歩み寄った。

「い…いや…来ないで!いや!」

葉種は我慢できなくなってナイフを思いっきり突き刺した。

大政の胸に刺さる。

「ぐ …う…」

強烈な痛みに大政は一瞬動かなくなるが、それでも進み続けた、

段々と奥の方まで入って行く。

そんなことお構いなしに葉種に近づくと、葉種を抱きしめた。

「ほら…大丈夫だろ?」

「あ…あぁ…」

葉種は真っ青な顔で体を震わせながらポロポロと涙を流した。

「ほら、何も怖く無い。ゆっくりと息を吸ってごらん」

枯れていく声を振り絞り、必死に葉種に話しかける。

葉種は深呼吸をした。

(良かった、声が届いてる)

「大政…先輩」

「良かった。正気に戻ったね」

しかしもう大政の胸にはナイフが突き刺さっており、いつ力尽きてもおかしくない状況だ。

大政は仰向けになり寝転がった。

「ごめんなさい…私…先輩を…」

葉種は涙を流しながら言った。

「いいんだ。君は大切な仲間なんだから」

「いや…逝かないで!」

「後は任せたよ…ハデスの野郎を…叩きのめして…」

「いやだ…先輩…死んじゃいや…」

「泣くなよ…ありがと」

そう言うと大政は息を引き取った。

葉種は大政の手を握りながらひたすら泣いた。

しかし、葉種の泣き声よりもその場に響いたのはハデスの笑い声だった。

「ふははははははは!馬鹿め!これで僕の脅威は消え去った!やった!大政を倒した!陸高最強の生徒を倒したぞ!ザマーみやがれ!はははははは!」


3


「ヘイ」

トルボは大羅の城に来ていた。

「あ?トルボか珍しいな。何の用だ」

「ミー達の仲間減っちゃったけどいいの?」

「別に構わねぇよ。それよりも今は夢境を探すのが最優先らしい」

「見つかったの?」

「ダメだ。ミラーが必死に探してるらしいんだが全く気配が掴めないらしい。陸高の方にも似たような能力がいるって噂だがそいつの力も借りたいぐらいだな」

「オーウ」

「だが今の陸高は少し大変なことになっててな。どうやら三村湖也が暴走状態にあるらしい。もしかしたらこのまま彼の手によって向こうが崩壊するかもしれない」

「そうなったらミー達はどうなるの?」

「やる事は変わらないさ。夢境を探すだけ」

「探して、倒した後は?ユーノウ?」

「さぁな。リーダー曰く夢境がこの世界を作ったらしいし、もし神が死んだら世界が消えるかもしれない。そもそも神の様な存在に勝てるかどうかが疑問だが。お前はどうするんだ?お前のその力は一人で自然災害に匹敵するほどだ。凄い力なのに俺たちに全く協力してくれない。お前はその力を何に使いたい?」

「ミーはただ人生エンジョイしたいだけだよ。パワー何て関係ない」

「ハデスといいお前といい、そう言う奴が一番あぶねーんだよ」

「ミーもう行くね。あ、そう言えば」

トルボは大羅の城から出る時、ふと思い出した様に呟いた。

「あ?なんだ」

「夢境の事探したいならよくトークしてるおばさんサーチすればいいんじゃない?」

「おばさん?誰の事だ?」


4


「湖也、大丈夫かな…」

ハンバーガーを口にしながら天は呟いた。

あれからしばらく経つが、湖也から連絡は一切無い。

「なんで私があなたとご飯食べてるわけ?」

紗水は不機嫌な様子で天に聞いた。

「だって陸がいなくなっちゃったし…一緒にいれる人って河原さんぐらいしかいないもん」

「俺を忘れんな」

上伊が口を挟んだ。

「えへへ、上伊君ちょっと苦手ー」

「さらっと傷つくこと言うなよ…」

「確かにあんたは人と馴染むのが苦手だからね」

「これからどうするの?僕達」

「なんで自分の事自分で決められないのよ」

「なんか…段々自分に自信がなくなってきてるというか…」

「今の状況壊滅的だからな」

上伊がポテトを頬張りながら言った。

「湖也に続いて葉種もハデスのせいで立ち直れなくなってる。大政先輩もいなくなった。後戦えるのって本当に限られてるからな。暴狐が出てこなければいいが…」

「ハデスの奴嫌い…あんな奴にみんなやられておかしいよ!僕は絶対に許さない…」 

「天…」

天の拳が震えていた。

今まで見たことない光景だった。


湖也は布団にこもっていた。

季節はもう冬を過ぎようとしている。

温かな日差しが差し込む中、薄暗い部屋の中でひたすらに丸まっていた。

数日間ずっとこの様子。

(俺が…陸を…)

その事実だけが脳裏を永遠に巡り続ける。

あんなに仲良くしてもらってた友人。

3人でずっと一緒だと思ってた。

明るくてどこか頼り甲斐のある彼を自分の手で…

湖也は紗水に説明してもらった事を何度も脳内で再生した。

自分が黒いデバイスの力で黒い装甲になって、それで暴走した。

そうだ、悪いのはこのデバイスだ。

湖也は左腕に取り付けられた黒いデバイスを見た。

右腕に付いてるデバイスと違い、自分で取り外す事は出来なかった。

何度も取り外そうと強引に引っ張ったりするがびくともしない。

ガチャガチャとやっているうちに湖也の目から涙が溢れ出した。

鼻水を啜りながら何度も外そうとする。

「外れてくれぇ!」

湖也は泣き叫んだ。

湖也は部屋を飛び出してキッチンに向かった。

包丁を手に取り机に左腕をドン!と乗せる。

右手で包丁を力強く握りしめる。

もうこうするしか無い。

湖也は涙を滝の様に流しながら右腕を思いきり振り上げた。

しかし洗濯物を干し終わったお母さんがその光景を見つける。

「あんた!何やってんの!」

ものすごい速度で湖也の右腕を掴む。

「離せよ!このデバイスが俺の体から離れないと俺はもう戦うことすらできない!」

「離すわけないでしょ!こんな苦しい湖也なんか見たくない!頼り無いかもしれないけど、相談に乗るから!」

カランという音と共に包丁が床に落ちる。

湖也はお母さんに抱きついた。

ただ泣き叫ぶ声が鳴り響くだけだった。


湖也は散歩に出た。

お母さんの提案だ。

『外の空気を吸ってぶらぶら歩き回るのはどう?一人じゃ寂しいならお母さんもついて行くよ』

と言ってくれた。

流石に散歩ぐらい一人でしてくると言って家を出て来たのだ。

夕日がそろそろ消えようとしている時間だった。

すれ違う通行人の話し声、吹き荒れる風の音、鳥の鳴き声、全てが自分に向けられたものだと感じる。

天はどう思ってるんだろうか。

あの時の冷たい目が脳裏をよぎる。

また泣き出しそうになるが、流石に外で泣き叫ぶ訳にはいかないので必死に我慢する。

俺は戦って良いんだろうか。

また暴走しないだろうか。

今度は天や紗水まで失うかもしれない。

湖也は左を見た。

いつもなら陸がいてくれるはずなのに…

(もう俺は誰とも接することができないかもしれない)

結局元通り。

文化祭以降の出来事で俺は様々な人と関わることができた。

沢山の仲間ができた。

しかしそれらを全て失ったかもしれない。

もう誰も俺を信用してくれないかもしれない。

湖也は噴水のある小さな公園に来た。

花蓮と話をした場所だ。

(この世は夢境がつくったかもしれない…か)

何のためにこの世界を作ったのだろうか。

そんな事を考えながらベンチまで来た。

「あ、来ると思ってたよ」

突然声をかけられた。

ベンチの方を見るとそこには見覚えのある女性がいた。

「あなたは…確か、スーパーでバイトしてた時の…」

「そう、スーパーの店長の河原純恋」

「あの時は大変お世話になりました。お金のない俺たちを救ってくれて」

「いいのようちも一手が足りなかったからお互いwinwinって事で」

「でも良かったんですか?いきなり押しかけて来たのにも関わらず採用してくれたり、急にいなくなったりして」

「全然大丈夫!」

純恋は親指をグッと立てた。

「本当に大丈夫なんですか…?」

「それより調子はどう?なんか暗い雰囲気だけど」

「最悪ですよ。上手くは説明できないんですけど、もう死にたいくらいです」

「友人失ったらそうなるよね」  

その言葉を聞いて湖也は驚き純恋を見た。

「何でその事知ってるんですか⁉︎」

「全部知ってるよー。君や仲間が街を守るために怪物と戦っているって事も、君の手によって友人が亡くなってしまった事も」

「何で…」

「あれ?まだ気づかない?私の苗字」

「河原…って、あ!紗水の苗字と同じ!まさか…」

「そ、紗水ちゃんのお母さんでーす!いつも娘がお世話になってるね」

「あいつ、他人にベラベラ喋りすぎじゃないか?」

湖也は頭を抱える。

「いいじゃないの。それで、君はどうするの?」

「どうって…もう何もできないよ」

「友人を失ったのがそんなに苦しい?」

「当たり前だろ!しかもただ失ったんじゃない。俺の手で殺したんだ。また暴走するかもしれない。また大切な人を失うかもしれない。そう考えるともう戦えないんだ」

「でも、戦わなかったらこの街の人々はどんどん怪物にやられちゃうよ?」

「俺一人がやらなくたって、まだ戦える人は残ってるんだ。上伊に登までいる。別にいいんだよ」 

「まぁ仲間を頼るのはいい事だね。仲間の事を理解してる。絆がある証拠だ。しかし…」 

純恋は湖也の手を掴んだ。

「別の形で信頼する事はできないのかな?」

「どういう事だよ」

「その失った友達。陸君だっけ?彼は君のことどう思って消えてったと思う?」

「恨んでるに決まってるだろ。あの時周りもみんな冷たい目してたし、陸なんか俺を呪い殺したいぐらいに憎んでるに決まってる」

「陸君は湖也君の事を信頼してたと思うんだ」

「は?」

湖也は呆れた声が出た。

何言ってるんだこのおばさんはと。

「ずっとこの街を守るために頑張って来た湖也君の事を信頼して、湖也君なら最後まで戦い抜いてくれる。そう信じてだと思う」

「あなたに何が分かるってんだよ」

「だって、陸君が仲間の事を信頼してなかったらその場から逃げればいいんだもん」

湖也の言葉を無視して純恋は続ける。

「仲間をほったらかして逃げればやられる事はないし、仲間がどうなったっていいと思うじゃん?それをしなかったのは陸君が仲間を信用してるからだと思う」

湖也は噴水を眺めた。

「あなたを信じてくれた陸君のためにも戦ってくれたりしないの?」

「そんな屁理屈…」

「あなたが一旦学校から離れてもまた戻って来れたのも仲間のおかげでしょ?」

「…」

「今こそ仲間を信頼する時なんじゃないかな?恩返しにもなるし」

しばらく考えて湖也は突然笑い出した。

「ははは。俺って本当にダメダメなんだね。事あるごとに投げ出して、誰かに説得させてもらって」

「しょうがないよ。普通こんな事起こらないもの」

「確かに仲間がいなければもうこのデバイスは付けてないし、この街から逃げていたかもしれない。俺、陸の分も戦うよ。まだ仲間を失うことになったとしても、みんなの思いを背負って戦ってみせる」

「うんうん。いい絆だね」

湖也はベンチから立ち、純恋にペコリと一礼する。

家に帰ろうとしたその時、

「あ、いた!あそこのあのウーマン!」

もうすっかり日が暮れ暗くなった公園の中に2人の少年が入ってきた。

その二人の顔を見て湖也はすぐさま思い出す。

「あ!お前、大羅と確か…」

「なんだ湖也か、こいつの名はトルボ」

「オー、前一回いったかな?」

トルボはひょこっと大羅の影から顔を出すと湖也に手を振る。

「お前ら2人で俺を倒しにきたということか…」

その言葉を聞いて大羅は呆れる。

「はぁ?何自惚れてんだアホが。俺たちが用があるのはそっちのおばさん」

そう言いながら大羅は親指で純恋を指差した。

「え⁉︎何で⁉︎」

「お前に教えるか。トルボ」

「OK!」

そういうとトルボはとんでもない行動に出た。

次の瞬間、一瞬にして純恋の目の前までやってきたのだ。

湖也にはそれが瞬間移動にしか見えなかった。

「とー!」

トルボは力を込めると純恋の腹に拳を叩きつける。

純恋へ気を失い倒れ、その体をトルボがキャッチした。

「じゃあ、用すんだから。じゃあな、湖也」

大羅はトルボを連れて帰ろうとするが、

「待て!」

湖也は思い切り走るとトルボの体へスライディングしながら蹴りを入れ吹っ飛ばした。

トルボの担いでいた純恋の体が宙に浮き落下するが、湖也が受け止めた。

「うぐっ、重い…」

純恋が起きてたら怒られそうなことを言うが、今はそんなことどうでもいい。

湖也は純恋の体をベンチにそっと寝かせると2人の方を見た。

大羅はイライラしながら言う。

「何の真似だお前」

「そりゃヒーローの真似事だよ」

「どけや。そいつを渡せ」

「無理だね!お前らが何を企んでるか知らねーが河原さんは俺の大切な人だ。彼女から信頼されている以上、見過ごす訳にはいかない!」

湖也はデバイスに指を乗せようとしたが、途中でその指は止まった。

「躊躇しているか?また暴走するかもしれないからな!」

「お前も見てたのか」

「あぁ見てたとも。大切な親友を1人殺したもんなお前!またその力を使うのか?今度はその女を殺す事になるかもしれないぜ!ははははは!」

「いや、今の俺なら大丈夫だ」

湖也は冷静に答えた。

デバイスを起動させる。

湖也に身についた装甲はシンプルな水色の装甲だった。

「ちっ、黒い方じゃないのかよ」

湖也は左腕のデバイスを見た。

「このデバイスは俺が負の感情に囚われた時に起動するものと言っていた。ならばもう暴走する事はない。信頼出来る仲間がいるから俺はもう下を向かない!」

「随分元気になったじゃねーか!」

大羅は周囲の土をかき集めてドラゴンの体を生成した。

(陸…)

湖也はその姿と陸のガラクタを集めたドラゴンの姿を重ねた。

次の瞬間、目の前にいた筈のトルボが消えた。

背後から氷柱のようなものが湖也の体目掛けて発射された。

「ぐっ!」

湖也の体が吹き飛ばされ、大羅の足元までやって来た。

大羅が巨大な足を上げ湖也を踏み潰そうとする。

その時、

「湖也!」

突然叫び声と共に湖也の体が宙を舞った。

踏み潰される直前、天が湖也を助けたのだ。

天にお姫様抱っこしてもらっている湖也は一瞬何が起きたか理解できなかった。

装甲の色を見て天だと気づく。

「天…俺を助けてくれたのか?」

「当たり前でしょ!間に合ってよかった!」

「待たせたな!湖也」

遠くから呼ぶ声が聞こえて振り返ると、上伊達が駆けつけてきた所だった。

「…みんな、なんで」

みんなの信頼を失った。

そう思っていた。

だが今実際にみんながいる。

湖也は涙を流した。

「あれ?湖也泣いてる?」

天が明るい声で問いかける。

「だって…俺は、陸を…」

「陸がいなくなったのは辛いし悲しいよ。でも湖也も同じくらい辛い想いしてると思うし、戦いから逃げるのはダメだから!」

「この戦いに足突っ込んだ時点で覚悟は決めてる。そうだろ?」

血斗が湖也のところまで来て言った。

「あぁ、そうだな」

「わ、私も戦いますから!」

葉種は震える声を必死に出した。

「あぁ、お前も強くなったな。俺の自慢の後輩だ」

湖也は葉種の頭を撫でた。

「あれ?お母さん⁉︎」

紗水は倒れてる純恋を見て驚く。

「紗水!河原さんを頼む!」

「ちょっとなんで倒れてるわけ?」

「事情は後!」

「あーもう訳わかんない!」

空と紗水は純恋を守りながら湖也達を見守っている。

湖也は大羅に向かって叫んだ。

「来るなら来い!俺達には仲間がいる。お前らよりも強い想いを持った仲間がな!」


5


ハデスは夜の路地裏を歩いていた。

「3人の狂人が〜♪3匹の子豚を貪り食らう〜♪」

やけに上機嫌な様子で変な歌詞の頭で歌っていた。

「あ、蝶野か」

突然、前から名前を呼ばれた。

脳裏にこびりつくような気味の悪い声だった。

「久しぶりだな。それにしても、復帰して一番最初に会うのがお前だとはな…鷲羽はどうしたよ」

「影森…」

ハデスも少し引いていた。

影森は夢境がまだ装甲を作る前、無抵抗の陸高の生徒を無差別に殺した海高1の要注意人物である。

命令に逆らって行動したせいで今までずっとミラーの作った檻の中に閉じ込められていたのだ。

「鷲羽はもういない。君ずっとミラーの作った壁の中に閉じ込められていたよね。なんで出てきてるの?」

「どうやら別の作業に集中しているみたいでな。突然壁が消えたのさ。お陰で今は自由だぜ。だが鷲羽いなくなっちまったのか。少し寂しいなぁ」

「でも君みたいな要注意人物が動き出したらすぐにバレると思うけど」

「そうなんだよなぁ。まぁしばらく大人しくしてるか」

そう言うと影森は暗闇の中に消えていった。

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