第36話 悪手
1
「これで全員か」
湖也達は公園に集まっていた。
50人にも満たない戦士が集っている。
これから竜希が率いる暴狐が街中で暴れ出すという。
絶対止めなければならない。
「亮矢先輩もう怪我の方は大丈夫なんですか?」
「おうよ!もう全然問題ないぜ!」
亮矢は元気いっぱいと言うように両腕を上げる。
「あれ?大政先輩は?」
湖也は辺りを見渡すが大政が見当たらない。
「遅刻?」
「迷子じゃね?」
「サボりじゃね?」
天、陸、血斗がそれぞれ言う。
「お前ら先輩がいないからって好き勝手言うな」
湖也が呆れる。
上伊が携帯を取り出した。
「繋がった。もしもし、先輩、今どこにいますか?」
『すまん。ちょっと急用でそっちに行けなくなった。暴狐はそこから南へ3キロの所で動き始めている。後は頼んだよ』
やけに気持ちの入った声が聞こえた後、プツンと通話が切れる。
「後は頼んだよって…街の平和と急用どっちが大事なんだよ」
上伊がイライラしながら言う。
「まぁ敵の居場所教えて来たからいいじゃないか」
「でもな湖也、あの人はうち一番の戦力だぞ?」
「そういえば、葉種ちゃんもいないわね。誰か知らない?」
誰も首を横に振る。
「おかしいわね」
「おかしいと言えばこいつらじゃないのか?何で暴狐が俺たちの所にいるんだよ」
攻正は蓮真と愛羽を指差し言う。
「まだお前らそんなこと言ってんのか、仲間だからいいだろ」
湖也が攻正の肩を叩く。
攻正は歯軋りした。
「のんびりしている暇はないぞ。先輩はもう動いていると言っていた。被害が出る前に止めないとな!」
上伊は装甲を身につけると高くジャンプして家の屋根に飛び乗った。
住宅街の屋根の上を渡って目的地まで行こうと言う寸法だ。
湖也達も上伊に続く。
湖也は走りながら考える。
(竜希…一体何で…)
その時、物凄い爆発が起きた。
ちょうど大政が言っていた場所。
建物が崩れかけている。
「は⁉︎あれは流石にやりすぎだろ!」
陸は半ギレ状態で言った。
「急がないと!」
「ま、こうでもしないとあいつら気づかないだろうしな」
竜希は建物を殴る。
建物は爆発し、倒れる。
もう周りには暴狐以外居なかった。
周りには死体と瓦礫しかない。
暴狐が暴れたその周辺、直径1kの円を描くように修羅場が広がっている。
「ま、どーせこの人間も作り物なんだ。俺たちも。だったら思う存分自分の好き勝手暴れた方がいいよな?ランド」
竜希は振り向く。
そこには大羅がいた。
大羅はだるそうにボサボサと頭をかく。
「はぁ、かったりぃ。いちいち変なあだ名つけんなや。痛ーんだよ。バートだのランドだの。帰るわ」
「え?帰るのかい?」
「この件はお前の一任だろうが。今更陸高生徒相手に云々言ってる奴なんざお前らのようなチンピラかハデスのようなバカしかいねーしな。こっちはもう別の段階に進んでるんだよ」
「さすがは生徒会の役員さん」
「後お前、調子乗って建物破壊してるけど、それ自分の首を絞めてるようなもんだぞ」
「え?それってどういう…」
次の瞬間、異変があった。
足元の瓦礫が異様に震えているのが分かる。
次の瞬間、瓦礫が物凄い速さで何かに引き寄せられるように飛んで行った。
暴狐達はバランスを崩し一斉に尻餅をつく。
「何で、急に…」
瓦礫の飛んで行った方を見て竜希は絶望する。
陸高の生徒の1人が瓦礫を集めて巨大な体を生成しているからだ。
「陸!」
「任せとけって!」
陸は瓦礫を集めてドラゴンの体を作る。
手を広げると目の前の数人の暴狐目掛けて叩きつけた。
ドゴォン!と凄まじい音が鳴る。
それが戦いの合図とでも言うように湖也達は暴狐の群れに向かって駆け抜ける。
戦いが始まった。
マグマが吹き荒れ、ドラゴンが大地を震わせ、風が群衆を巻き上げる。
「竜希!お前どこにいるんだよ!」
湖也は戦場の中で叫んだ。
周りは暴狐や生徒ばかりでどこに竜希がいるか全くわからない。
「俺はもう竜希じゃない!バートって呼べ!」
「そんなもん知るか!」
「三村!」
湖也の背後に亮矢が来る。
「あっちの方から声がしたぞ!ここは俺たちに任せてお前は竜希のところに行けー」
「分かりました!」
亮矢は両腕に炎を纏うと前方目掛けて発射した。
暴狐も生徒もまとめて吹き飛ばされる。
「今のうちに!」
「ありがとうございます!」
湖也は作られた道を駆け抜ける。
その様子を見て陸は思った。
(全部あれで解決するんじゃねぇの?)
「何固まったんだ貴様ぁ!」
突然耳元で声がして振り向く。
目の前でロボットのような暴狐が自信の腕を巨大化させて殴りかかった来るところだった。
食らったらひとたまりもないだろう。
「あ、まず…」
しかし、言い終わる前に先に紗水が空から暴狐を蹴り落とす。
「ギャグ補正キーック!」
気がついたら紗水の装甲は黄色に変わっていた。
(こいつ装甲にギャグ補正の力付けやがった)
紗水が陸の頭の上に乗っかる。
「ちょっと陸!あんたドラゴンなんだからこんな奴ら一掃できるでしょ!ほらブレス吐いて!」
「いやこれガラクタで体作ってるだけだからブレスとか吐けねーよ!」
「頑張れば出せるでしょ!ほらワンツーワンツー!」
変な掛け声と共に紗水は喉辺りを叩きつける。
「ちょっと⁉︎そんなに叩きつけられたら体が崩れるホゲー!」
喉元の崩れたガラクタが口の中からボロボロと飛び出した。
そのガラクタブレスによって複数の暴狐が押し潰される。
しかし次の瞬間、陸はバランスを崩し倒れ込む。
戦車の様な暴狐が陸の足を攻撃したからだ。
「まずはこの巨大なモンスターを殲滅すべし!」
暴狐はそう言うとバランスをついた手を狙う。
「こいつ!あの時の暴狐じゃねーか!」
亮矢は炎の拳を地面に叩きつけ、炎を噴射し急接近する。
そのまま暴狐の足を掴むと、空へ勢いよく振り上げる。
「天!今だ!」
空には自分の能力で飛んでいる天がいた。
「うん!」
天は風を操りものすごい速度で暴狐に向かって足を向ける。
しかし、その足が暴狐にあたるよりも先にコウモリの姿をした暴狐が戦車の暴狐を助けた。
「ちょっと殲滅君弱い」
「わりーな手間かけさせちまって」
コウモリの暴狐が殲滅君を抱えて逃げ回る。
その様子を見た天は暴狐に問いかけた。
「ねー、コウモリの人!」
「あん?何?」
「2人って付き合ってるの?」
「なっ⁉︎」
唐突の質問にコウモリは焦って手を離す。
「ちょっとお前…」
殲滅君は落下し爆破、下にいた暴狐と生徒が巻き添えを食らう。
「殲滅君!!」
コウモリの暴狐は半泣きになりながら天を睨む。
「貴様よくも!」
飛びかかるが、次の瞬間には爆発してしまった。
「全くこんな敵に大人数で手こずってんじゃねーよ」
「ありがとう登君」
天が礼を言った。
「少しでも油断したら死ぬかもしれない。そうなりたくなかったら、死ぬ気で戦え」
「どの道死ぬしか無いじゃん」
2
ここは廃れた工場の跡地。
誰もいない建物の中を大政は歩いていた。
ハデスはここにいるはず。
本来大政は湖也達の所へ行くつもりだったがその直前にハデスの気配を察知してここまでやってきたのだ。
そして気になる点がもう一つ。
(一年の葉種の気配も感じる。ハデスと一緒にいるのか?)
「どーせ俺を誘き寄せるための罠なんだろ。ハデス」
「よく知ってるね。まだ一回ぐらいしか戦ってないのにそんなに僕のことわかってるなんて、ひょっとして惚れた?」
「お前の性格の悪さはすぐに脳内に焼き付く。そしてその憎たらしい能力もな。俺は葉種を連れ戻しにきただけだ。お前なんかには用はねぇ。俺を倒すための策を作ってきたのか知らねーが、お前には無理だ」
「そうだね。僕には君は倒せない。君のような怖いもの知らずな…いや、恐怖という感情が脳からかけ落ちてる馬鹿な君には敵わないよ」
次の瞬間、大政のいた場所の真下で爆発が起こった。
建物が崩れて、足場を失った大政はそのまま落下する。
落ちた場所はボクシングに使うリングのような所だった。
周りが檻で囲まれており、その中には今落下した大政ともう1人。
「ほら、葉種ちゃんならここにいるよ?早く連れ出さないと」
檻の外からハデスの声が聞こえる。
「…葉種」
大政は静かに名を呼んだ。
目の前には怯える少女。
自分に向かって刃を立ててくる葉種がいた。
「いやだ…来ないで」
葉種は震える声を精一杯振り絞る。
そう。葉種は大政に対して恐怖を抱いていたのだ。
大政は落ち着いて葉種に話しかける。
「俺の事分かるか?」
「近づかないで!殺さないで!」
刃物を振り回しながら叫んでいる。
大政は心底イラついた。
檻の外で楽しそうに眺めているハデスに。
「あらら〜この子怖がっちゃってるみたいだね〜。もう恐怖心が膨張しすぎて、目に映る人間全てが敵に思えるぐらいにまで壊れちゃってるようだ」
「なぁ、お前を殺したら葉種は元に戻るか?」
「無理じゃないかな?」
ハデスはキッパリ言った。
「リモコン壊したってエアコンの電源が切れるわけじゃないでしょ?僕の操作は完了しちゃった後なんだから、僕を倒したところでこの子が正気に戻るわけじゃない。むしろここで怒りをあらわにしたら余計その子が怖がっちゃうかも。その子に乱暴するのもダメだよ」
葉種を連れ出す事自体は簡単だが、そうしたところで葉種の状態は治らない。
葉種を無視してハデスを倒す事も可能だが…
(大事な仲間がこんな状態で見過ごせる訳ないだろ)
「さぁ、陸高最強の戦士さん。この状況どうやって切り抜ける?」
3
「竜希!」
「バートだ!」
湖也の声に即座に反応するように竜希は叫び返す。
ゴリラの様な姿の暴狐だった。
「お前どうしちゃったんだよ。何で俺たちは戦わなかればならないんだよ!」
湖也は竜希に駆け寄るが、その縮んだ距離を再び離そうとするかのように竜希は湖也の胸に拳を突き刺した。
湖也の体が吹き飛ばされる。
「もうこんな事はやめよう!」
湖也は叫んだ。
目の前には大切なはずだった友人。
「昔に戻ろう!俺たちは敵じゃない!」
「昔?何の事だ!俺たちずっと前から仲間でも何でもねーんだよ!」
「仲間だっただろうが!」
「それはお前の勘違いだ!」
「だーもう!」
湖也は自分のデバイスに指を乗せる。
両足の装甲を展開させ、地面に手を突き竜希に回転蹴りを喰らわす。
竜希はぶっ飛ばされはしたが、死んではいない。
「へへ…ようやく戦う気になったか」
(あ…やべ)
感情的に動いてしまった湖也はあることに気づく。
装甲は展開した後、一定時間動かない。
「やべ…体が動かない…」
「あ?湖也何固まってんだ?そんなんじゃ殴り放題だぜ…」
「湖也ぁぁぁぁ!」
竜希が殴りにかかろうとした瞬間、竜希の真上からドラゴンの形をしたガラクタが落下してくる。
「大丈夫か?湖也」
「あぁ、今動けなくなっていたところ。助かった」
その時、後ろで爆発が起こった。
「なんか凄いことになってる!」
陸の背中に乗っている天が指差しながら叫んだ。
「天、後ろ見えない。実況して」
「えぇ⁉︎湖也、僕にそんな無茶振りするのかい?」
「いいから」
「なんかロボットみたいな奴が亮矢先輩と戦ってるの!」
ロボットの暴狐は亮矢に歩み寄る。
「君の炎では私に敵うまい。とっとと散れ」
「亮矢さん!」
ロボットの暴狐の前に蓮真が立ちはだかる。
「裏切り反抗期野郎には用はない。所詮お前の能力じゃ戦闘の役に立たないだろうしな」
「確かに俺の能力だけじゃ役に立たないかもしれない。凛さん!」
「はいよ!」
凛は蓮真の体を掴む。
「ちゎっとくすぐったいぞー」
「何やってるんだ貴様らは…」
変なことをしている2人を見ながらロボットはあることに気づく。
蓮真の体が半分溶けてる。
そしてその溶けた体はこっちに向かっていて、そして今ロボットの内部に…
「ふんっ!」
「「あばばばばばばばば!」」
凛の放った電撃がハデスの体を通してロボットの内部へ放出された。
即座にロボットは爆散する。
蓮真も爆散寸前になっていた。
「大丈夫?」
「俺はなんとか…」
「ごめんね。少し休んでもいいよ」
「はいっす…」
熊の様な姿をした愛羽は自分の能力を使い暴狐達を浮かび上がらせて一点にまとめていた。
「裏切り者め!ふざけんじゃねーぞ!」
背後から声がして振り返ると氷の矢が向かってきていた。
「あっまず」
しかしその氷の矢は上伊のよって弾き返される。
「ありがとね」
「いいのか?陸と一緒にいなくて」
「うん。だって陸私の事気にしちゃって戦いどころじゃなくなると思うから、私から言ったの。離れて戦おうって」
愛羽はまとめた暴狐を引き寄せると勢いよくぶん殴る。
瞬時に爆散した。
「はわわ…ノボリ〜怖いよ〜」
上伊の所へ空がやってくる。
「いや、俺上伊なんだけど…」
「え⁉︎あ、ごめんなさい!装甲の色が一緒だからつい!」
次の瞬間、空の姿は背景に溶け込む様に消えていった。
「空ちゃんは透過能力持ちなんだね」
愛羽は感心した様に言った。
「透過能力持ちが陸じゃなくてよかったな。奴だったらお前の着替えを間近で見ててもおかしくない」
「あははは!陸がそんなことするわけないじゃ〜ん!」
愛羽は顔を真っ赤にすると能力で上伊と近くにいた暴狐を浮かせ、何度も2人を空中で叩きつけた。
「わ、悪かったから…早く降ろしてくれ…向こう行って落ち着いててくれ」
上伊ら暴狐を処理して愛羽を休憩させると周りを見渡す。
「大体片付いたな。あとは湖也だけか」
「よし、体が動く様になった」
湖也は自分の腕を振り回して装甲の硬直が溶けたことを確認する。
「重てぇ…」
竜希はなんとかガラクタの山から出ようとするが中々出られずにいた。
そこへ湖也がゆっくりと近づいてくる。
「や、殺るんか?」
「…本当はお前と仲良くしたいんだよ」
「まだそんなこと言って…!」
竜希は激怒し、力を込める。
次の瞬間、ガラクタが爆発し砕け散った。
「うわぁ!」
中にいた陸も吹き飛ばされる。
空中で天がキャッチした。
「お前もう諦めろよ!お前は俺と戦うしか無いんだ!戦え!俺と!」
湖也に向かって何度も拳を突きつける。
湖也は避けながら行った。
「諦めるよ!本当は!仲良くしたいのに!そこまで言うなら!」
湖也は竜希の腹を殴る。
竜希は5m近くふっ飛ばされるが、
「戦う気になってくれて嬉しいよ」
次の瞬間、竜希の体から湖也へつたうように連続的な爆発が起こった。
湖也の体が吹き飛ばされる。
「陸!」
「あいよ!」
陸は翼を羽ばたかせて宙に浮いた湖也を背中に乗せる。
「無駄だ!貴様のその巨大はすぐに爆破できる!」
次の瞬間、陸のガラクタで作った体が粉々になる。
落下しそうになる2人を天が捕まえた。
「天!俺を投げろ!」
湖也が叫んだ。
「え?」
「竜希のところまで投げてくれ!」
「うん!」
天は湖也の体を竜希に向かって投げた。
その勢いに任せて湖也は竜希の顔面を殴ろうとする。
しかし、竜希は素早いジャンプでその攻撃をかわす。
「どうしたそんなスピードじゃ当たらねーぞおい!」
竜希は湖也の頭目掛けて拳を振るう。
湖也は必死に避けるが、湖也がかわしたことで地面に着いた竜希の手から湯気が立っていた。
次の瞬間、辺り一面ガラクタで埋め尽くされていた地面が爆発した。
湖也の体が吹っ飛び、体が強く地面に叩きつけられる。
次の瞬間、どこかから声が聞こえた。
「ちょっと湖也に何するのー!」
竜希が振り向いた時には紗水の放った拳が顔面に直撃していた。
今度は竜希の体が吹き飛ばされるが竜希は即座に体制を整え紗水に向かって突進した。
「勝手に間に入ってんじゃねーよ!」
「うるさいわよ!」
しかし竜希の拳が当たるより前に紗水の拳が直撃する。
また竜希は吹き飛ばされた。
「あれ?なんだ?おかしい…俺より素早く動けるなんて…」
「私のギャグ補正パンチは絶対に相手の攻撃より先に当たるようになってるのよ」
「おい!そんなの聞いてねーぞ!なんだよそれ!」
竜希は地面に転がっていたガラクタを紗水に投げつける。
が、それが爆発する前に突如現れた血斗によって弾き返された。
「今度はなんだ⁉︎」
言った時には遅かった。
気付けば体が宙に浮いて、次の瞬間には地面に叩きつけられる。
「なんだこいつ。すんごいノロマじゃ無いか」
竜希の体を踏みつけながら血斗は言った。
「まさかこいつもギャグの力で…」
「何言ってんだ。俺の力は努力で出来てんだよ」
その様子を見ながら湖也は唖然としていた。
隣に上伊がやってくる。
「もう他の暴狐は片付いた。後は彼だけだ。見ろ」
上伊は目線を竜希の腕に向ける。
「ゴリラの姿してるから全身毛むくじゃらかと思ったけど、手の甲の毛は変な金属で出来ている。おそらくあれを岩や金属に付着させて爆破させてるんだ」
竜希の手の甲は汚れた銀色のような色をしていた。
「竜希の能力か」
「ここら辺は最初に彼が建物を破壊して破片やガラクタだらけだから彼の好き放題って感じだな」
「じゃあどうするんだよ」
「とりあえず奴の足元の破片をぶっ飛ばす。止めは湖也、お前が刺せ」
愛羽は戦線を離脱して歩いていると蓮真が腰掛けているのが見えた。
「あら、蓮真。あなたも休憩中?」
「え?う、うん」
愛羽は蓮真の隣に座る。
「凛さんが休ませてくれたんす。こんな僕にも気を遣ってくれて、みんな優しいっす」
「本当いい仲間が出来たよね。元の仲間がやられて行く所を見るのは心が苦しくなるけど…」
「おい」
突然、2人は声をかけられた。
振り向くと、そこには守と攻正がいた。
攻正はニヤリと笑うと、突然蓮真の胸ぐらを掴んで殴り出した。
湖也達が話している間、血斗は竜希と戦っていた。
身体能力的には血斗が優勢だが、竜希も神経を研ぎ澄まし血斗の足元を瞬時に爆破させていた。
近づいても足元を爆破させるため近付くのは困難といった状況だ。
「めんどくさい野郎だな」
血斗がつぶやいた時、上伊の
「登!後は任せろ!」
と言う叫び声が聞こえた。
上伊は竜希の注意を引きながら後ろへ撤退する。
「ははは…逃げるのか?」
竜希が笑ったその時、後ろに気配を感じた。
上伊が殴りかかっていたところだった。
「…!!」
竜希は咄嗟の判断で足元のガラクタを爆破させる。
上伊の体は吹っ飛んだ。
しかし、
「これで終わりだ!竜希!」
と湖也の声が聞こえて振り向く。
その時には湖也は空高くジャンプし、こっち目掛けて拳を握っているところだった。
足元にはもう破片もガラクタもない。
竜希は逃げようとするが、何故か体が動かなかった。
「…何故だ!体が動かない!」
「これで終わらせるの!」
背後から女の声が聞こえる。
透明化した空が竜希の体を押さえてくれているのだ。
「いっけぇぇぇぇぇ!」
右腕を展開した湖也は勢いに任せて竜希の顔面を殴った。
次の瞬間、竜希の体が爆散する。
「…終わったか」
湖也は地面を見つめる。
さっきまで竜希がいた場所を。
「…湖也」
天が声をかけようとした時、遠くから叫び声が聞こえた。
凛の叫び声だ。
「ちょっとあんた達やめなさいよ!」
「うるせぇよ!こいつらも暴狐だろうが!」
その声に湖也は振り向いた。
そこには休憩していたところを急にボコボコにされて動けなくなっている蓮真と愛羽。
そして装甲を身につけて止めを刺そうとしている守と攻正がいた。
凛が止めに入るが2対1では流石に力不足だった。
「あの野郎…」
亮矢も止めに入ろうとしたが装甲を展開した反動でまだ体が動かない。
次の瞬間には2人の強烈な蹴りが蓮真と愛羽を襲った。
「お、おい…」
湖也の顔がどんどん青ざめて行く。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
次の瞬間、ショックのあまり脳が音を処理しなくなった。
遠くで爆散する蓮真と愛羽だけが見えた。
2人が死んだ、ただその事実だけが脳内を支配する。
竜希だけでなく、仲間になった2人までも。
せっかく仲間になれたのに。
「うっうわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そう思った瞬間、湖也の左腕に付けられた黒いデバイスが反応した。
強烈な光で湖也を包んでいく。
「おい!湖也!」
「大丈夫⁉︎」
天と陸が駆け寄ろうとするが、黒いデバイスが強い衝撃を放っておりなかなか近づけない。
しばらくしてようやく光が収まった。
そこには、さっきまでとは全く様子が違う黒い装甲を着た湖也がいた。
「湖也…?」
紗水の不安そうな声だけが響いた。




