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もしもこの世界で、あなたと  作者: 白銀
第2章〜校外戦争〜
35/52

第35話 思い出の親友

1


湖也は今日も街中で暴狐と戦っていた。

「おらぁ!」

湖也は展開した腕で暴狐の顔面をぶん殴る。

暴狐は爆発した。

しばらく動けない湖也の周りに戦闘を見てた人達が集まった。

「ありがとうございます!」

「本当にいたんだ!ヒーローが!」

周りの歓声が響き渡る。

湖也は仮面の奥で少し辛い表情をした。

が、装甲をしまったときには笑顔を見せた。

「いやいや、俺はただみんなを守ってるだけなんで…」

湖也はボサボサと頭をかきながら照れ臭そうに言う。

その頬を紗水はつねった。

「なにが"ただみんなを守ってるだけ"よ。調子に乗ってるんじゃないわよ」

「いでででで、あれ?紗水もしかして嫉妬してる?確かに可愛い子もたくさんいるけど…」

湖也は周りを見渡す。

「この頬の肉引きちぎるわよ」

「それはご褒美というやついででででで!」

その様子を影から見ている者がいた。

ハデスだ。

彼は元気そうな湖也を見て首を傾げる。

「なかなかあいつ暴走しないな…こっちから仕掛けないといけないか。それに、あの野郎にもリベンジしなきゃいけないし。色々大変だなー」



2


『あなた、こんな事して何になるって言うの?』

電話越しの女性の声は少し怒っているようだった。

『そんな山奥に引きこもって、湖也君達の事はどうする気なの?』

「私も予想外だよ。まさか鷲羽君がこの世界に多大な影響を与える力を持っていたとは。彼のお陰でしばらく隠れることしかできない。下手に動いたらミラー君か大政君に気付かれるからね」

『あんたみたいな神にも近い力を持ってしても追い込まれる事があるのね』

「いいや違う。私は神そのものだよ。ただ彼らの持つ力も相当なものだ」

『やっぱり、人間の想像力って凄いわね』

「翔士君が面白がるわけだ」


3


「分かるか?」

リーダーはミラーに訊ねた。

ミラーは首を横に振る。

「夢境兄弟の位置が全く分からない。鷲羽君が死んだ時影利の方が何か凄い姿をしているのは捉えたけど、その後まるで消えたかのように分からなくなったわ」

「手分けして探すしか無いか」

「ねー、何やってるの?」

その声にリーダーは振り向いた。

そこにはハデスがいた。

「夢境兄弟を探しているんだ。お前も協力してほしい」

「えーなんで?僕たちの敵は陸高の生徒でしょ?なんであんなおっさん探す必要があるの?それより暴狐を集めてよ。あの大政とかいう野郎に復習しようと思うんだけどさ」

「いや、今は夢境を優先する」

「じゃあ僕勝手にするよ?これからみんなで押しかけるの」

「いい話聞いたぜ」

どこかから聞こえてきた声に反応して三人が振り返ると、彼らを見下すように話す少年がいた。

「だったらそいつの指揮は俺がやらせてくれよ。俺もそろそろ暴れたいと思ってた所だったんだよ」

「君は…確か、木田竜希君!」

「よせよその名前で呼ぶの、バートって呼んでくれ」

「何その名前、厨二くさい」

「いやハデスお前が言うか」

ミラーは呆れる。

「それに、湖也はまだ生き残ってるんだろ?」

バートはリーダーに訊ねた。

「そういや君は湖也君の昔の親友だったと聞いているが、まさか親友を殺すつもりなのか?」

「悪いか?奴は敵だぞ?」

「いや…別に」

「それに奴は別に親友でもなんでもねーんだわ。早く奴の絶望する顔が見てぇ」

狂ったような笑みを浮かべるバートを見て、リーダーは少し恐怖を感じた。

そんなバートにハデスはノリ気で話しかける。

「いいねー!じゃあ2日後大乱闘の幕開けとしよう!それまで暴狐を集めてね!」

「お前はどうすんだよ」

「僕は大政って奴へ復習するための準備をするよ。ミラー、ちょっと人探しを頼まれてくれないかな?」

「はぁ?ちょっと忙しすぎるんですけど!」

3人はそれぞれ消えていった。

残ったリーダーはポケットからメモを取り出す。

それは蓮真が持っていた、湖也の連絡先のメモだった。


湖也はベッドに寝転がっていた。

窓の奥に広がる夜景を見つめる。

犠牲を出しながらも、沢山の人を守れているはず。

陸、天、紗水。

今までもこれからも一緒であるであろう仲間たち。

彼らを失うのは絶対に嫌だ。

そんなことを考えていた時、携帯電話が震え出した。

「電話なんか珍しいな。誰からだ?」

画面を見ても知らない番号。

「はい。もしもし?」

『私、花蓮だけど』

その声を聞いて湖也は戦慄した。

なんで花蓮が俺の電話番号を?

そこで湖也は思い出した。

「まさか…蓮真が裏切って」

『そう。蓮真が私達を裏切った』

「え⁉︎お前らを裏切ったってことは、俺たちの仲間になったって事でいいんだよな?」

『あぁ、おそらく今頃いつものキャンピングカーにいるんじゃ無いかな。私は裏切られても別に構わないし』

「で?何のようだ?敵のお偉いさんが俺に」

『そうピリピリしないでくれ。今から会えないかな?』

「はぁ??敵に呼ばれて出てくる馬鹿がどこにいるかよ。どうせハメ殺しにするつもりだろ」

『いやそんなつもりはない。と言うのも私の狙いは夢境兄弟に変更した。今君たちと戦うつもりは無いんだ』

「信じると思うか?急に抜け出して敵対し出した奴の言葉など」

『まぁ来てくれよ。お前に有益な情報もいくつかあるんだ』

「お前気持ち悪いぞ」

『なんでだよ』


湖也は呼ばれた場所へやってきた。

雪が降っており、息を吐くたび目の前が白くなる。

呼ばれた場所は公園だった。

花蓮はベンチに座りながら噴水を眺めている。

「珍しいよな。小さい公園なのに噴水がある」

「雪に霞む噴水って少し切なくて美しいと思うんだ。そしてなんか懐かしく感じる。私のお気に入りポイント」

「寒いのだけが難点だな」

湖也はポケットから缶コーヒーを取り出し花蓮の頬に当てる。

「うあっつ!」

「面白いリアクションするじゃん。寒かったろ。飲めよ」

「ありがと」

花蓮は両手で受け取り膝の上に置く。

湖也はもう一本ポケットから取り出しながらベンチに座り蓋を開ける。

「で?有益な情報ってなんだよ」

「湖也はこの世界についてどう思う?」

「は?なんじゃそりゃ」

「いいから答えて」

「急に言われてもな…普通としか言いようが無い」

「幽霊や怪物が出ているのに?この世の常識を捻じ曲げる物騒なノートがあったのに?」

「それはまぁ、変だな」

「それだけ?」

「もう慣れすぎて、何も思わなくなったからな。ただ、お前ら暴狐からこの街を守る事だけは変わらない」

「街って規模小さいな。世界って言えばいいのに」

「世界なんて言ったら俺たちだけで守れるか不安になるだろ」

「こっちだって世界を滅ぼせる自信ないけどね」

「だいたいお前らなんでいきなり一般人襲うようになったんだよ。陸高が嫌いなら俺たちだけ狙えばいいじゃねーか」

「私がなぜ暴狐を従えてこんなことをしているのか。聞きたい?」

「当たり前だろ!校内戦闘事件までは頼もしい奴だったのに。なんで急にこんな事し出したんだよ」

その言葉を聞いて花蓮は空を見上げた。

「私ね、お父さんの事が大好きだったの。いつもかっこよくて優しくて、憧れの存在だった。お父さんの働いている高校に通うなんて、さすがに恥ずかしくてできなかったけど」

花蓮は照れ笑いをしながら言った。

「でも陸高の文化祭の日に、あの事件が起こった。お父さんが紗水ちゃんに卑猥なことをしようと暴力を振るったあの事件。もちろんお父さんは警察に捕まり、豚箱送り。私は酷く落胆したよ。今までのお父さんからは想像ができなかった。あんなに酷い人間だとは思わなかった。あんなの私のお父さんじゃ無いとまで思ったね。私が陸高にいった目的はただ一つだった。陸高にはお父さんみたいなやばい奴がいると夢境校長から聞いて、そいつらを更生させていくことだった。私が行った時にはもう上伊君が色々暴れてた時だったね。でもその状況下だからやばい奴を炙り出しやすかったってのもあったから、割と早く終わらせる事ができた。校内戦闘事件で上伊君の力を使いまとめて更生させた」

「あぁ、それらはよく覚えてるよ。本当に辛い時期だった」

「でも違った。それらは全部夢境が仕組んだ事だったんだ。校内戦闘事件の最中、私は夢境の机上に置いてあるあのノートの内容を見た。そこで知った。お父さんの起こした暴行は全部夢境によってやらされていた事だって。お父さんが本気でやってる事じゃなかったんだって。それを知った時私は夢境が許せなかった。あいつさえ居なければお父さんはあんな風にならなくて済んだのに」

「でもそれがわかっただけでもよかったじゃないか。釈放された時いっぱい遊んでやれば」

「お父さんは自殺したよ」

「え?」

湖也は固まった。

「あいつが殺したんだ。夢境影利。あいつのせいでお父さんは死んだ。それが分かった時私は決心した。あいつに復讐してやると。海高に戻ると何故か生徒たちが怪物になっていた」

「そうか、確か蓮真は二ヶ月前に暴監の儀式をやったって言ってた。二ヶ月前はお前はまだこっちに居たもんな」

「そう。そこで私は夢境影正から暴監の儀式のことや暴狐の事を聞いた。それを聞いた時私は思った。こいつらを使って学校を滅ぼしてやろうと。奴の命はもちろん。奴の大切にしている生徒も全員殺してやるって。そう言ったら影正は快く賛同してくれたよ。私は暴狐のリーダーになったんだ」

「まぁ、復讐したい気持ちは分かる。あいつさえ居なければお前らは幸せな生活が出来てたんだもんな。でもだからって関係ない生徒を巻き込むのは止めろよ!それに一般人を襲ったりとかさ、それはもう復讐でもなんでもないじゃないか!」

「いや、そうでもないんだ」

「は?」

「ここからが本題だ。さっき私は湖也に世界についてどう思うか聞いたな?」

「あぁ、変な質問で焦ったわ」


「この世界は、夢境兄弟に作られた可能性が高い」


…何だ?何で言ったんだ?

唐突な発言に、湖也の脳の処理機能が停止した。

「なんて?」

「だからこの世界は奴らに作られたかもしれないって言ってんの」

「世界って、世界って何だ?」

「それくらい分かれ」

完全に混乱する湖也の頭に花蓮は軽くチョップを喰らわす。

「いやいや、確かに夢境影利は暴狐を作ったり装甲を作ったり常識ぶっ飛んでいるけどさ、世界を作るなんて不可能だろ」

「私も信じられない。だから可能性が高いって言っているだけで、完全に言い切ってはいない」

「なんでそんな考えに至るんだよ」

「蓮真君が夢境の部屋に侵入したんだ。それで夢境の話を盗み聞きした。蓮真君は体を液体にする事ができるかるね」

「暴狐としての能力の一つか」

「そう。蓮真君が私に話してくれたのは、この戦いが仕組まれたものだって事。そして、あいつが私たちを超越した力を持っているって事」

「仕組まれた?この戦いが?」

「そう、全部仕組まれた事だったんだ。私が影利に復讐するために暴狐を利用することも、その暴狐に対抗するために湖也達の装甲があるってことも。影利と影正が裏で協力して戦わせていたに過ぎなかった」

「そんな事をして何になるってんだよ!」

「私には分からないな。多分奴らはゲームをしてるつもりなんじゃないかな?」

「ゲームで人を怪物にして戦わせて、さらには一般人まで手を出すなんて…」

「だからこの世界は奴らの作り物なんじゃないかと言う仮説を立てた。もしそうなら、奴らは何をするも自由だからね」

「だからって、やってる事が極悪非道すぎる」

「さてここで聞きたいんだけどさ」

「なんだよ」

「湖也はこの世界をどうしたい?暴狐が街で暴れて関係ない人たちが苦しめられる。でもそれらは全部作り物。私たちの命だってそうかもしれない。それでも湖也は暴狐から人々を守るために戦うかい?」

「当たり前だろ!」

湖也は即答した。

「この世があいつに作られたからあいつの好き勝手やっていい?言い訳ねーだろ!だったらあれか?親が子供に何やってもいいってのか?虐待したっていいのか?違うだろ!!たとえこの世界が!住民が!あいつに作られたからって、暴狐の被害に遭ってるなら俺はそれを止めるだけだ!」

「例え、この世界を作った『神』と敵対することになっても?」

「そうなったら、その神も粉砕してやるよ」

その答えを聞いて花蓮は思わず吹き出した。

「ぷっ、ふははははは!」

「何がおかしいんだよ」

「いやすまないね。まさかあいつも自分の作った者に殺されるとは思わないだろうな。まぁ、かく言う私もターゲットを君たちから夢境兄弟に変更した。今彼らを探しているところだ」

「そうなのか!だったら協力して戦えるんじゃないか⁉︎」

「そうしたいのは山々だが、ここでもう一つ有益な情報を与えよう」

「何だ?」

「2日後、暴狐達が大乱闘を開始する。これは君、そして大政君とやらを標的とした作戦だ」

「は?何でだよ。お前らは夢境を狙ってんじゃねーのかよ」

「それが今回の作戦は私が考案したものじゃなくてね。その主犯を止めようがなかったんだ」

「主犯って誰だ?大羅か?ミラーか?ハデスか?」

「ハデスもそうなんだが、主犯の名は木田竜希」

その名を聞いた時、湖也の心臓は破裂しそうなくらい大きく高なった。

「竜希…」

「君の思い出の親友だ。そして彼の標的が君らしい」

「そうか、あいつは俺を狙ってるのか…俺も分かっていたんだ。いつか戦うことになるって。蓮真から暴狐の正体は海高の生徒だと聞いてから。連絡しても返ってこないし、もう誰かに倒されたのかと思ってたけど、そうか、あいつは敵になってしまったんだな」

「案外すんなり受け入れるね」

「受け入れられてねぇよ!」

「…」

「夢で見たんだ。あいつと戦う夢を!あいつは夢で俺たちは親友でもなんでもねーと言っていた。でもこんなの絶対違う!俺は受け入れてねぇ。これはきっと何かの間違いだと信じているよ。奴はそんなこと言う奴じゃなかったから」

「残念だけど、さっき竜希君はその夢と同じこと言っていたよ。夢ならばどれほど良かっただろうね」

その言葉を聞いて湖也は立ち上がり花蓮の胸ぐらを掴んだ。

「他人事みたいに言ってんじゃねーよ。お前は暴狐のリーダーだろうが。なんとか辞めさせることできねーのかよ!」

「さっきも言っただろ。これは私が考案した作戦じゃないって。奴は自分の意思で動いているんだ。自分の意思で動いた暴狐は止めることはできない」

湖也は掴んでいた手を勢いよく離した。

花蓮はあまりの勢いに尻もちをつく。

「やっぱりお前と協力何て出来ねーわ。俺は俺たちだけで夢境を探し出し潰す」

湖也はその場を離れながら近くにあったゴミ箱に飲み干したコーヒーの缶を思いっきり叩きつける。

去っていく様子を花蓮は眺める。

その時、湖也の左腕についている黒いデバイスが少しばかり火花を散らしたように見えた。


(作り物とか関係無い。あいつは間違いなく俺の親友だったんだから…)


4


湖也、陸、天、紗水、愛羽、上伊はキャンピングカーまでやって来た。 

湖也はドアをノックする。

「蓮真、いるか?」

「その声、湖也っすか?どうぞ中に入ってくださいっす」

その声を聞いて湖也はドアを開け中に入る。

「久しぶりー」

「元気にしてた?」

「お邪魔するわね」

「連絡つかないから心配したぞ」

湖也に続いて陸達も中に入る。

「…結構たくさんいるっすね」

「邪魔か?」

「そんな事ないっす」

そして、上伊の後ろから愛羽が顔を出した。

「やほー。蓮真」

「あなたは、漣さん⁉︎何で彼らといるんすか?」

「私も裏切る事にしたの」

「本当に裏切ったんですか⁉︎」

「そうよ。もうあんな連中懲り懲りだもん」

彼らはキャンピングカーの中にあるテーブルを囲うように座り、蓮真から色々聞き出した。

「そうか、携帯が繋がらなかったのは大羅に壊されてたからなのか」

「前は結構相談に乗ってたりしてくれてて、大羅なら味方になってくれると思ってたんふけど、彼裏切られるのが許せないらしくて。散々ボコボコにされた後、湖也君を探し出すとか言ってたんす」

「それであの時大羅は俺を探してたのか。でも何で?」

「あいつ、湖也を見つけても速攻でボコるような事はしなかったぞ」

「大羅の考えてる事は俺も分からないっす」

「それよりも今は明日行われる大乱闘の事だ。蓮真、木田竜希という奴について教えてくれよ。奴は海高で何があったんだ?何故、湖也の親友が湖也を狙ってるんだよ」

上伊が言った。

「彼は学校では何人かを集めてグループを作り、そのリーダーをやっていたっす。気に入らない奴は片っ端からぶん殴り黙らせていき学校でも多くの生徒から恐れられていたっす」

「中学のあいつはそんなんじゃなかった!」

湖也は声を張り上げた。

「本当に?」

紗水が鋭い視線を湖也に向ける。

「あ、あぁ…多分、そんなんじゃなかった」

「何あやふやな回答してんのよ」

「で、そんな奴がどこで戦いを起こすって言ってた?湖也」

「え?あ、どこか聴いてないや」

「何してんだよ」

上伊はガクリと肩を落とす。

「まぁいいや。そこは大政先輩の力に頼ろう。湖也、お前は真っ先にその木田って奴を殺れ」

「え⁉︎俺にあいつを殺せってか⁉︎」

「殺せなくてもいい、とにかく俺たちで他の暴狐は相手をするからお前は木田を狙うんだ。敵側も主犯が消えれば少なからず統制が取れなくなり状況が有利になる。蓮真や漣さんがいるんだ。木田だってこっちに引き込めるかもしれない」

「だよな!お前ならそう言うと思ってた!」

「他の暴狐は俺たちで殲滅する。あした、生き残ってる生徒全員で立ち向かおう」

「紗水、今回はお前にも戦ってもらうぞ」

湖也は真剣な、それでいてどこか不安な瞳を紗水に向ける。

「分かったわ。総力戦って事ね」

「大羅やハデスが来る可能性はあるんだろうか?」

陸がふと疑問に思った事を口にする。

「花蓮の奴はハデスも関わっていると言ってたぞ」

「いや、大羅もハデスも来ないと思うっす。彼らは自分が指揮を取らないと気が済まない性格なんで、木田に指揮を任せるなんて考えられない。ミラーは来るかもしれないっすが」

「妙だな。何か裏がありそう」

湖也は口に手を当てる。

「珍しいわね。あんたが真剣に敵の動きを考えるなんて」

「いや、言ってみただけだが」

「何も考えてないんかい」

「でも、何か嫌な予感がする」


葉種は友人と買い物をしていた。

街外れの交差点で赤信号を待つ。

「あー、楽しかった。またねー」

「ハツネはいつも元気だねー」

「あは、それ褒め言葉として受け取っておこう」

「普通に褒めてるつもりだよ。じゃあねー」

「うん!」

別れた友人に手を振りながら青になったのを確認して歩き始める。

人気のない道を進んでいたその時、

(…?)

後ろから気配を感じ振り向いた。

しかしそこには誰もいない。

日はすっかり地平線に消え、所々にある街灯しか頼れるものがない。

その状況に気づいた時、急に爆発しそうなくらいの恐怖心が感情を支配した。

「誰かいますか⁉︎」

細い声が響き渡る。

足がガクガク震え、走ろうにも走れそうにない。

「あ、そうだ。装甲を着ればいいんだ!そうすれば安心だし誰もいないから大丈夫」

震える手を必死に動かしてデバイスに乗せるが全く反応がない。

「嘘でしょ⁉︎ちょっと何でこんなタイミングで!」

ポンポンと何度もデバイスを叩いてるうちに嫌な考えが脳裏をよぎる。

「これって、ハデスの能力」

そう呟いた瞬間、急に意識が飛んだ。

「やっぱり高校生の体は重いな。ちょっとー」

ハデスはいつも連れている少年に葉種の体を預ける。

「その子攫ってどうするつもり?」

ミラーが問いかけた。 

「大政をハメるための下準備だよ。彼にこの事バレてなきゃいいけど。もう一つ付き合って欲しいんだけどいい?」

「こんな夜遅くまで使うんだったら、残業代でも欲しいわね」

「僕の彼女になる権利をあげてもいいよ?」

「絶対いらない」


守と攻正は河川敷で座っていた。

遠くの夜景を見ながら守は手元にある石を川へ投げ込みながら話す。

「ちょっとあいつら自分勝手な事しすぎじゃね?暴狐は敵って言ってたのに身内が出てきた途端手を出すなとか、挙句には仲間に入れちゃってさ」

「そもそもあいつらがリーダー気取ってるのが気に入らねーわ。勝手に指揮取りやがって初めに装甲もらったからって調子に乗ってやがる」

「あいつらの指示なんてもう聞かなくて良くね?というかもう戦ってられねーわ」

「死にたくないしな」

「そんな事言わないでほしーな」

突然背後から声がした。

2人は焦り振り向くとそこには幼い見た目をした少年が立っている。

もう夜で真っ暗な中ポツンと立つその少年を見て2人は恐怖を感じる。

「…誰だお前」

「やほー、僕はハデス。暴狐の幹部的な存在だよ」

その言葉を聞いて2人は咄嗟にデバイスに指を付けるがデバイスは反応しない。

「くっそ何で反応しねーんだ!」

「やだなー僕は戦いに来たんじゃないんだ。君たちとお話がしたくてきたんだよ」

「俺たちに何の用だ」

「さっきなんか愚痴っぽい事言ってたよね?暴狐を仲間に入れてうんぬんとか」

「あぁ、あんたら仲間取られたんぞ。いいのかよ」

「僕は別にいいけど、君たちは納得してないようだね」

「だってあいつら自分勝手なことしすぎなんだぜ!敵は何であれ絶対倒せ的な事言ってたのにさ!」

「はっきり言ってうざいんだよあいつら」

2人の意見を聞いたところで、ハデスはクスッと笑った。

「何笑ってんだよ!」

「いや、君たちは湖也君達の事そんなふうに思ってたんだーと思って」

「なんかおかしいか?」

「全然。仲間や友達であれ嫌いな奴はいる。そんなの誰だってそうだもん。ねぇ、彼ら達にちょっと悪戯してみない?」

「悪戯?」

「そう。明日、暴狐達が街で大暴れする予定なんだけど、湖也君達は絶対暴狐を止めようとするんだ。もちろん、裏切った暴狐の漣君や蓮真君も参加してね。そして、みんなで大乱闘が始まる。その時どさくさに紛れて漣君と蓮真君を殺しちゃうの」

「え⁉︎俺たちにあいつらを殺せってのかよ!」

「そんなこと出来るんけ…」

焦り出す2人を見ながらハデスは微笑んだ。

「大丈夫だって。だって君たちは湖也君達が暴狐を仲間にしてるのが許せないんでしょ?」

「まぁ、そうだけどさ」

「だったら殺っちゃいなよ。きっとバレないから」

ハデスは徐々に2人の『憎しみ』の感情を強くしていく。

「あ、あぁ。バレないならあんな奴殺してもいいよな」

「確かに、自分勝手やりすぎたあいつらへのちょっとした罰だ」

「それじゃあ、僕の考えに賛成してくれるってことでいいんだよね?」

「「あぁ」」

帰っていく2人を眺めるハデスにミラーはドン引きする。

「あんた、本当に言ってんの?」

「うん。本当にあの2人に漣君と蓮真君を殺らせる。何?不満?2人は僕たちを裏切ったんだよ?あの時の君の言葉を漣君は無視して、蓮真君は僕の言葉を無視して向こう側についた。そんな奴死んで当然でしょ」

「だからって…!」

「じゃあ止めれば?でもそうしたら君も僕たちを裏切ったってことになるけど、大羅君がどうするか…」

ミラーは思い出した。

裏切った蓮真を見た時の大羅の表情を。

その時、心の底から溢れ出すほどの恐怖が湧き出た。

「…!あんた…」

「隙を見せたね。恐怖という感情が少しでも出て来ればば操作は可能なの忘れた?」

あまりの恐怖にミラーは倒れ込む。

ハデスはミラーを気にせず歩き始めた。

「それじゃ、明日の結果をお楽しみにー」

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