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もしもこの世界で、あなたと  作者: 白銀
第2章〜校外戦争〜
34/52

第34話  思い出のライバル


「…少し動いた」


1


「もうこんな事はやめよう!」

湖也は叫んだ。

目の前には大切なはずだった友人。

「昔に戻ろう!俺たちは敵じゃない!」

「昔?何の事だ!俺たちずっと前から仲間でも何でもねーんだよ!」


ハッと目が覚めたのは朝の8時。

窓から刺す朝の日を見て湖也は今の光景が夢だったのだと気づく。

(いやな夢だな…)

そう思い時計を見て授業に遅れると焦る。

急いで扉を開けようとドアの部に手をかけたところで冷静になり、その手を引いて再びベッドに寝っ転がった。

(学校はもうないんだったな…今はニートとなってるわけだが…いや、この町を守ってるからニートではないか?)

「ニートお兄ちゃん!」

突然大声が部屋中に響いて腹部に強烈な衝撃が走る。

妹の稀里が湖也を起こそうと腹にダイブしたのだ。

「いてて…稀里!お前ニートって…」

「学校行ってない人の事ニートって言うって先生が言ってた。みんなもニートにならないようにねーって」

「先生は何を教えてるんだ…」

湖也は頭を抱える。

「お兄ちゃんは最近いつも暗い顔してるけど、ニートってそんなに辛い事なの?」

「あのな稀里、俺はニートじゃないんだ。この町の平和を守ってるんだぞ」

「でも暗い顔してるよね。ヒーローがそんな顔してちゃダメなんだよ!」

「…!」

湖也は稀里の言葉にハッとした。

稀里は部屋の隅に置いてある湖也のおもちゃ箱を漁る。

それは湖也が小さい頃集めてたおもちゃがぎっしり詰まった箱だった。

「ちょっとこら稀里!勝手に俺の部屋を散らかすなよ…」

「じゃーん!」

稀里はおもちゃ箱の底からソフビ人形を取り出す。

それは湖也が一番憧れていたヒーローのソフビだった。

ダークヒーローもので、牙を剥くように笑みを浮かべたマスクが特徴だった。

「これみたいに笑って!」

眩しい笑顔を見せながらソフビを持ってくる稀里を見て、湖也は微笑みながらため息をついた。

「そんな邪悪な笑顔してたら稀里怖がるだろ」


2



「なんか最近暴狐見ねぇな」

こちらは血斗と空の2人。

今は2人でデートをしている。

「でも見ないって事は平和でいいんじゃないのかな?もう戦わなくていいじゃん!」

「でも肝心の校長も姿を消してるし、何より学校が壊滅して俺たちの今後の人生がどうなるか心配だ…」

「確かにそうかも…」

空は店に並べられたイヤリングを手に取る。

耳元に近づけて血斗の方へ振り向いた。

「これどうかな?」

「おーいいんじゃない?お前がアクセサリー身につけるって珍しいな」

「ちょっとイメチェンしてみようかと思って」

「今の空がいいと思うけどなぁ」

「そう…?」

「まぁ色々試してみるってのは悪い事じゃないと思うよ」

「そう!じゃあ…」

その時、店の外で爆発が起こった。

多くの悲鳴が聞こえる。

「空行こう!」

「うん!」

2人は爆発のした方向へ駆けつける。

そこには翼竜の姿をした暴狐がいた。

近くには逃げ遅れた少年が1人。

その少年に気づくと、暴狐は大きな口を開けた。

「逃げ遅れるとはだっせーな!あん時は余裕ぶっこいてたのに今は泣き散らかして漏らしてやがる!ぶははは!」

そう言うと口の中から銃口を伸ばして少年に向ける。

「地獄に堕ちろ!」

「待て!」

「あん?」

突然叫び声が聞こえ、振り向くと装甲を着けた血斗が立っている。

「ちっ、陸高の生徒かよ」

そう言うと暴狐は翼を羽ばたかせ空へ飛んでった。

「お、おい待てよ!逃げるな!くそ」

血斗は装甲をしまうと逃げ遅れた少年に駆け寄る。

「おーい大丈夫か?いきなりあんなバケモンに襲われたら動けなくなるよな。立てるか?」

血斗は手を差し伸べ、その少年の顔を見る。

「え…?」

その顔には見覚えがあった。

中学生の頃何度も見た顔。

血斗をいじめてた主犯格だ。

彼の名は音坂陽平。

「音坂…」

「お前…」

その時、一瞬血斗の体が勝手に動いた。

陽平に差し伸べた手を引っ込めようとした。

血斗は無意識に彼から離れようとしていた。

しかし引っ込めるよりも先に、陽平が笑顔で血斗の手をガッシリと掴んだ。

「ありがとうな!助けてくれて!」

「え⁉︎お、おう…」

あの頃のカケラもないほど、音坂は爽やかに礼を言った。

「あ、そうだ!お前腹減ってないか?飯でも奢ってやるよ」

時計を見ると夕方の5時、夕飯にするのも悪くはない。

が、こいつに甘えるわけにはいかないと血斗の心が拒んだ。

「いいよ別に」

「ん?そうか?」

陽平は帰ろうとしたが、そこで声が聞こえた。

「ねーノボリ?誰と話してるの?」

一般人を避難させていた空が血斗に近づく。

相手の顔を見て空も顔を曇らせた。

「お!空ちゃんじゃないか!」

「あなたは…中学校の時の…」

「覚えててくれたんだな!」

陽平は空の肩を軽く叩く。

その瞬間、空の体は小さく震えた。

「ノボリ、行こ」

空は血斗の服を軽く引っ張る。

「やっぱり奢るよ。お前は命の恩人だからな。空ちゃんも来いよ!好きなもの食べていいぞ!」

「大丈夫だよ音坂。お前そんな金持ってないだろ?」

「ノリ悪いなー。金ならあるから行こうぜ!な、血斗!」

音坂は大声で言った。

血斗の名前を、大勢の前ではっきりと。

「分かったよ。悪いな。空、行こう」

「えぇ⁉︎行くの⁉︎」

「全部俺の奢りだ!好きなもの沢山食べろ!」

陽平は2人の間に入り2人の肩を掴むとずんずんと歩いていった。


3


「夢境影正の居場所までわかんなくなって、私達の指揮は誰がするのよ。てかなんであのおっさん居なくなってるの?」

ミラーはリーダーに言った。

「指揮は私が取る」

「今街に出てるの誰だっけ?」

彼女達がいるのは工場の跡地、使われなくなった機械が迷路のように配置されている。

「今はラッセルが出てる。復習したい奴がいるらしい」

「でも大丈夫?この前の街全体を使った戦いで私たちの数だいぶ減らされちゃったけど。もう残り50無いくらいだよ」

「それは向こうも同じだよ。大丈夫、最後は私達が勝つ。それに…」

「それに?」

ミラーが首を傾げていると、リーダーはポケットからあるものを取り出しミラーの元へ投げ捨てる。

それはボロボロになった蓮真のスマホだった。

そこからガサついた音声が聞こえてくる。

「もう勝ち負けとかどうでもいいのかもしれない。陸高の生徒は後回しだ。ターゲットを変更する。先に夢境兄弟を殺す」


リーダーは工場の奥にある仮眠室へ向かった。

そこには蓮真がいる。

「裏切った事、許して欲しいと言うつもりは無いっす。どんな処分も受けるつもりっす」

「いや、別に何もしないよ」

「じゃあなんでこんな事…!」

「すまないね。大羅が君に大怪我をさせてしまって。君は1週間くらい起きなかったんだよ。このまま寝たきりになるのかと心配したさ。もう御免だからねあーゆーのは」

リーダーは蓮真の頭を撫でた。

その手は柔らかく温かいが、苦しい怒りのような物を感じた。

「湖也の所へ行くんでしょ?いいよ。別に裏切る事を責めたりはしないよ。私はね」

蓮真は工場を抜け一目散に走っていった。

リーダーはその情けない姿を眺めているだけだった。


4


3人はファミレスに来ていた。

「お前ら本当にこんなところでいいのか?」

陽平は困惑気味だった。

「もっと凄いの食べさせてやってもいいんだぜ?」

「俺たちにはそんな物似合わないからな」

「本当に、ごめんね?無理だったら私たちの分はわたしたちで出すから…」

陽平の優しさと明るさに怯えながら空は言う。

「いいっていいって!ほら!好きなもの好きなだけ頼め!店員さーん!」

陽平は勝手に店員を呼び沢山注文し始める。

「かしこまりましたー」

店員が注文を受け戻っていくと陽平は2人を見てニヤついた。

「なぁ、もしかしてお前ら付き合ってるのか?」

「そうだよ。この前から付き合い始めたんだ」

「かーっ!いいなお前らは幸せそうでさぁ!うちの高校不細工で下品な女しかいねーから羨ましいぜ!」

「おいおい、そんな言い方するこたないだろ!きっといい人いるって!」

血斗は照れながら笑う。

自然と笑顔になっていた。

中学生の頃、お互い睨み合うことしかしていなかったのに。

まさかこんな時が来るとは思わなかった。

「音坂はどう?お前サッカー部だったろ。まだ続けてんの?」

「当たり前よ!今でもバリバリのエースだぜ!」

「前から思ってたけどお前体ガッシリしてるからさ、アメフト部とかの方がいいんじゃねーの?」

「そんな部活うちにはねーよ!タックルで相手を吹っ飛ばしてみてーって思ったことはあるけどな。がははは!」

意気揚々と話す2人を見て、空は1人だけ置いてかれたように感じた。

上手く話は入り込めず、トークアプリで血斗に話しかける。

『ノボリ、音坂君と仲良かったっけ?』

スマホの振動に気づいた血斗は素早く指を動かして返信する。

『いや全然。俺がいじめられてたところお前も見てたろ』

『じゃあなんでこんな事になってるの⁉︎なんか怖いんだけど…』

『大丈夫だって音坂の奴すっかりいいやつになってるじゃねーか』

「あっ悪いちょっとトイレ行ってくるわ」

突然陽平はお腹を抱えて席を立った。

「え?あ、いいよいっといで」

陽平が席を離れると血斗は空を見た。

「ほら音坂の奴お前がずっとそんな様子だから気まずくなってトイレ行ったじゃないか」

「私のせい⁉︎なんか、その…ごめんなさい」

「お待たせしましたー」

あーだこーだいってると店員が料理を持ってきた。

「ごゆっくりどうぞー」

「じゃ、先に食べてるか」

「そうだね」


陽平がトイレに行ってしばらく経つが全く戻ってくる気配がない。

「…あいつ、何やってるんだ?」

ファミレスの壁にかかっている時計を見ながら血斗は言う。

すでに30分は経っていた。

「逃げたんだよ!多分!食い逃げだよ!」

「いや、あいつはまだ何も食べてないぞ。ちょっとトイレ見に行ってくるわ」

「なんか嫌な予感がする。気をつけてね」

空の返事を聞くと血斗はトイレへ向かっていった。

空が不安になりスマホを取り出すと後ろから声が聞こえてくる。

「俺と行こうか、空ちゃん」

「…」

息を呑む間もなかった。

後ろから大きな腕が首を囲うように回ってくる。

気がついたら陽平に抱きつかれていた。

ただただ恐ろしい。

デバイスは付けていない。

もう必要ないと思ったから。

身を守るものは何も無い。

今になって蘇る記憶。

中学校に入学したての頃。

血斗がなすすべなくいじめられていた頃。

あの頃の惨劇。

空が最初から血斗に声をかけてあげなかったのは何故か。

もうどうしようも無いと悟ってから声をかけたのは何故か。

ただひたすらこの男が怖かったから。

目を付けられたくなかったから。

「さぁ、立って」

陽平は凍りついた空の心を溶かすように優しい声で言った。

「…はい」

2人はファミレスを出た。

すっかり夜になっている。

「前から思ってたけど、空ちゃんあんな男といるなんて勿体無いよ!空ちゃん可愛いしさ!俺がとことん可愛がってやるからな!」

(ノボリ、ごめん…)

「どこ行く?カラオケ?それとも俺ん家来る?」

「帰りたい…」

「あ!俺ん家に帰りたいって?仕方ないなー」

(私、ノボリの…)

その瞬間、夜空がざわめいた。

「なんだ…?」

陽平は夜空を見渡す。

「ずっと張り込みしてて良かったぜ」

さっきも聞いた声。

その声を聞いて振り向くと、翼竜の暴狐がファミレスの屋根の上に立っていた。

「あの後お前ら追ってたらここに入って行くの見えたからさ。もしかしたらチャンスが訪れるかもしれないと思ってたんだよなぁ」

「おっお前、さっきの化け物⁉︎」

陽平は驚き声を上げる。

さっきまでの余裕は無くなっていた。

「さぁ今度こそ貴様を地獄へ送り出してやる!」

暴狐は羽ばたくと一直線に陽平を狙う。

「ちょっと待って!」

陽平は情けない声を発した。

「あん?」

暴狐は目の前で止まる。

「なんでお前は俺を狙ってるんだ⁉︎さっきの奴もただ暴れてたんじゃなくて俺を狙ってたのか⁉︎」

「当たり前だろ」

「なんで俺がこんな化け物に襲われなければならないんだ!!」    

「お前、小学生の頃いじめをしていただろ」

「知らないよ小学生の頃なんか!もうおぼえて無いよ!」

その言葉に暴狐は脳の血管がはち切れそうになった。

尻尾をぶん回し陽平の顔をぶん殴る。

「俺は忘れてないぞ。お前のせいで俺の人生はめちゃくちゃになったんだからなぁ。小学生の頃、俺はお前にいじめられてたんだよ!」

「あなたも⁉︎」

空は暴狐の言葉に口を挟んだ。

「誰だお前。お前もこいつにいじめられてたのか?」

「私じゃなくて私の恋人がね。彼は中学生になってから音坂君にいじめられるようになったの。小学生の頃からいじめられてたんだけど、中学になって音坂君が加わることでより激しいいじめを受ける事になったの」

「はぁんなるほど、その新しいおもちゃのお陰で俺のことは綺麗さっぱり忘れてしまったと…」

暴狐は鋭い爪を持った足で陽平の肩をガシッとと掴んだ。

陽平の体をブンブン振り回し地面に押さえつける。

様子を見た周りの人達が騒ぎ始めた。

「すまなかった!忘れてたことは謝るから許してくれよ!この女やるからさ!空ちゃんって言うんだほらよく見ろかわいいだろ?だからさ許してくれよ!」

「あいにくだが寝取りは趣味じゃないんでね。それにいじめについての謝罪はしないとか本気で殺してほしい様だな」

「いじめについても謝るから殺さないでくれよぉ!」

その様子を見ながら空は考えた。

あの暴狐は私の事は狙ってない。

音坂君は見殺しにしても…

してもいいのだろうか?

こんな奴ほっといてもいいんじゃないかと。

その時、


「空!」


と呼ぶ声が聞こえた。

「ノボリ!」

空は笑顔で振り返る。

ファミレスから血斗が出てきたところだった。

その奥では店員さんの

「お客さま⁉︎お会計がまだですよ!」

と声が聞こえてきたが、血斗は無視した。

「音坂、これはどう言う事だ?」

「助けてくれ!この怪物にまた狙われてるんだよ!」

「そっちのことじゃねーよなんで空を勝手に連れ出してんだっつってんだよ!」

「それは…空ちゃんが勝手に連れ出してきたんだ!」

「は⁉︎」

隣にいた空が叫ぶ。

「違うから!連れ出したのは音坂君だから!」

「あぁ分かってる。こいつはすぐ嘘つくからな。お陰で中学の頃どんだけ罪をなすりつけられやってもないことで先生に怒られたか」

はぁとため息をつき今度は暴狐の方を見る。

「お前か!この女が言ってた中学で音坂がいじめてたやつは」

「だったらなんだよ」

「だったらこいつのこと恨んでるよな?殺してもいいよな?僕は小学生の頃こいつにいじめられてたんだ。お前なら僕の気持ち分かってくれるだろ?それにほら、今だってお前の彼女さん取ろうとしたんだぜこいつは」

「…」

「お前の代わりに僕が殺してやる。この力を使って。感謝するんだな」

「血斗助けてよ!」

陽平が叫んだ。

「確かに俺はこいつにいじめられてた。苦しい思いを何度もして逃げ出したくなった。俺を騙して空を取ろうとしたことも許せねぇ」

「交渉成立か」

暴狐は口の中から銃口を伸ばす。

陽平のこめかみに当てる。

「だがな」

血斗は暴狐の行動を遮るようにいった。

「そんなドロドロのうんこみたいなやつよりも無抵抗な一般人を痛めつけて殺そうとしてイキってやがるお前の方が許せねぇんだわ」

「ふざけんなよ!」

暴狐は照準を血斗に合わせた。

弾丸が発射される。

しかしその弾丸から守るように血斗の体に装甲が着いた。

「音坂の事は、後で5発ぐらい殴ってしっかり反省してもらってチャラにしてやる。だがお前の命はねぇぞ。というかこの装甲もお前ら暴狐を狩るために作られたわけだしな」

「こんな奴がそんな態度で反省するとでも⁉︎」

「夕方に助けた時に見せた笑顔、それは偽物じゃなかった筈だ」

血斗は陽平を見る。

「そうだろ?」

「あぁ、嬉しかったさ!感謝してるさ!」

「だったらまだ改心する余地はある」

「どいつもこいつも狂ってやがる…」

暴狐は羽ばたくと血斗目掛けて突っ込んだ。血斗はそれを体で受け止める。

暴狐は血斗に馬乗りになるように押し倒す。

次の瞬間、爆発が起こった。

暴狐の口から伸びた銃口からのゼロ距離射撃。

「血斗⁉︎大丈夫か⁉︎」

陽平は叫んだ。

今までの陽平からは想像できないほどの心からの叫び。

暴狐は笑った。

「ふっへっへっへ、これ喰らったらもうおしまいでしょう」


しかし次第に暴狐の体がゆっくりと動いていく。


馬乗りになってた暴狐の体を押しのけるように血斗は起き上がった。

「お前に心配されちゃ、黙ってやられるわけにはいかないわな」

血斗は暴狐の首をガシッと掴んだ。

今度は血斗が暴狐の体を地面に叩きつける。

「がっはぁ!」

クレーターでも出来るのではないかと思うくらいの勢いで叩きつけられた。

「いってぇよ!お前なら分かるだろ!僕の気持ちが!なんでお前と戦わなければならないんだよ!」

「お前が暴狐だからだ」

今度は血斗が暴狐に馬乗りになった。

「ミラー!ミラー助けて!この声聞こえてるだろ?お前の仲間が敵にやられてるんだぞ!助け…」

渾身の力を込めた重たい一撃を暴狐の顔面にぶつかる。

「ば…か…やろ…」

次の瞬間、暴狐の体は爆発した。


5


ミラーは目を細めた。

横にいる大羅が嬉しそうに言う。

「お、なんか悔しそうな顔してんじゃねーか」

「別に、私ラッセルのこと好きじゃ無いから。ただ、あんな悲痛な声で呼ばれると胸が苦しくなって」

「お前って本当優しいな。俺は嫌いな奴がいたら真っ先に殺すのみだ」

「それで裏切った蓮真をあんなボロボロにしたのね」


戦闘を終えた血斗は装甲をしまうと空と陽平のところへ向かう。

「ノボリ!ノボリ!」

空は一目散に駆け出し血斗に抱きついた。

「そんなに強く抱きつくなよ」

血斗が照れながら言う。

「血斗!ありがとう!ほんっとにお前は命の恩人だよ!」

陽平はイチャつく2人の所へ向かう。

血斗は明るい雰囲気を一瞬で切り替えて陽平を睨みつける。

「さぁーて、飯を奢る気無かった事と俺の空を取ろうとした事。あと中学生の頃の恨み等をこれからお前にぶつけるわけだが、分かってるよな?」

指をポキポキ鳴らしながら血斗は陽平に近づいた。

その言葉に陽平は肩をビクっと震え上がらせ、数秒考えた後ものすごい勢いで土下座した。

「すまなかったぁ!」

額から血を出しそうなくらい頭をコンクリートの地面に打ち付ける。

「許してくれとは言わない。思う存分殴ってくれ!もうお前に悪い事はしない。俺も改心した!どうか今の俺の感謝の気持ちだけは受け取ってほしい!」

「ふぅーん。じゃあ、立って」

陽平が立ち上がると、目に見えぬスピードで顔面に拳が飛んできた。

「ごふっ」

「どうだ?この無抵抗なまま拳を喰らう感触」

「めちゃくちゃいてぇ」

「だよな」

血斗はさらにお腹を目掛けて拳を突き刺す。

「ぐっぼぉ!」

陽平は苦しそうな声を出した。

ファミレスで何か食べていたら吐き出していたのかもしれない。

「苦しいか?」

「苦しい」

今度は陽平の股間目掛けて力強く蹴り上げる。

「ぐっうぉぉぉぉぉ…」

陽平は股間を押さえて蹲る。

「辛いか?」

「辛い…」

「昔の俺はこんなのばっか喰らってたんだぜ?」

「すまなかった…」

「後2発は空を取ろうとした罰だ」

血斗は陽平を立たせると胸板目掛けてぶん殴った。

陽平の体が5m近く飛ぶ。

「これで最後だ」

ぐったりと転がった陽平の顔を踏みつけた。


ボロボロになった陽平の元へ空は行く。

「私、許さないから!そんな体の痛みよりも、ノボリの心の傷の方がもっともっと深いんだから!」

「まぁまぁ、そのくらいにしてやれ」

血斗は陽平に肩をかした。

「こんだけ殴ってなんだが、俺はお前に感謝してるところもあるんだぜ?お前らに散々いじめられてきたが、あの中で俺は抵抗することを覚えた。あのいじめの中で俺は喧嘩の仕方を学び、戦えるようになった。尤も、空がさっき言った通り喧嘩が多少強くなっても心の傷は癒えないんだけどな」

「血斗、もうお前に変な事はしないさ…」

掠れた声で陽平は言った。

「後俺のことを名前で呼ぶのやめてくれ。登にしろ」

「あぁ、分かったよ登」

「じゃあな。今日は帰ってゆっくり休め」

「もう怪獣はいなくなったのかな?あ、いたいた!お客さん飯代は払ってもらわないと困るよー。警察呼ぶよ」

外が静まったのを見てファミレスの店員が出てきた。

「あ…俺払います」

陽平はゆっくりとポケットから財布を出す。

その陽平の容姿を見て店員は叫び声を上げる。

「お、お客さん⁉︎そんなにボロボロで大丈夫ですか⁉︎」

「心配しないでください…」

会計を済ませてトボトボと歩いて行く陽平を2人は眺めた。

「これで良かったんだよな。湖也」

「なんで今湖也君の名前?」

「いや、あいつだったらどうするか考えてたんだが、やっぱり暴狐の殲滅を優先するかなって」

「ふーん」

2人は歩き始めた。

「今日のノボリ、かっこよかったよ!ありがとう!助けに来てくれたの、すごく嬉しかった」

「当たり前だろ。空が取られたらなんて、考えたく無い」

「あ、顔真っ赤!」

「うるさいなぁ」

2人は笑い合った。

ようやく前へ進める。

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